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「誰だ、こんな設計にしたのは!」とFCCLの齋藤会長も音を上げるほど難しい世界最軽量PCを親子20組が組み立て

組み立て教室が行なわれた島根県出雲市の島根富士通

 富士通クライアントコンピューティング(FCCL)および島根富士通は、8月19日、島根県出雲市の島根富士通で、小学生および中学生を対象にした「富士通FMVPC組み立て教室」を開催した。

 16回目となる今回の組み立て教室では、世界最軽量の14.0型ワイド液晶搭載ノートPCである「LIFEBOOK WU-X/H1」と、軽量モデルの「LIFEBOOK WU2/H1」の2機種から選ぶことができ、それぞれ15人、5人が選択して組み立て作業を体験した。また、「LIFEBOOK WU-X/H1」の天板カラーはブラックだけだが、「LIFEBOOK WU2/H1」は3色から選択が可能となっており、グレーが1台、ホワイトが1台、ブラックが3台の構成比になった。

 参加費用は、「LIFEBOOK WU-X/H1」は11万3,800円、「LIFEBOOK WU2/H1」は9万9,800円。同社直販サイトのWEBMARTで販売しているモデルだが、組み立て教室向けの特別価格となっている。組み立てたPCは、検査後に配送される。

 組み立て教室には、親子20組が参加。参加者の構成は、小学生が10人、中学生が10人。男子が16人、女子が4人。島根県内から7人が参加したほか、東京、愛知、大阪、兵庫、京都、広島、福岡からも参加した。

 島根富士通では、「次世代を担う小中学生に、社会学習の機会を提供し、PCの組み立てや工場見学などを通じて、ICT技術への興味や関心の育成および地域への社会貢献を目的に開催している」と狙いを述べている。

齋藤邦彰会長も組み立てに挑戦

 午後1時から行なわれた開会式では、組み立て教室に初参加となった富士通クライアントコンピューティングの齋藤邦彰会長が挨拶。自らもPCの組み立てに挑戦した。

 2022年の組み立て教室では、大隈健史社長がPCの組み立てに挑戦しており、同社経営トップが、2年連続でPCの組み立てを行なった格好だ。

 挨拶した齋藤会長は、「組み立ててもらうPCは、世界最軽量という、ただものではないPCである。持ったときに驚きがあり、持ち歩きたくなるPCである。持ち歩くことできるようになると使えることが広がる。それが最軽量の意味である。

 軽量だけでなく、頑丈であり、美しく、精緻な感覚を大切にしているPCである。開発は新川崎で行ない、組み立ては島根富士通で行なっており、日本の文化を踏襲した製品だ。今回の組み立て教室では、島根富士通のマイスターたちが、それを伝授する。そのすごさを体感してほしい」と述べ、「私も組み立てに参加するが、私一人だけ、作ったPCが起動しないということがないようにがんばりたい」と決意を語った。

 生産ラインでは258点の部品を使用し、13分で組み立てているが、組み立て教室では41点の部品を90分で組み立てることになる。作業量は全体の約6割とし、小学生でも組み立てられるように、匠の技術が必要な難しい部品は事前に組み込んでいる。

開催前日に準備を進める島根富士通の社員たち。すべてが手作りのイベントだ
開催直前に社員たちが入念に打ち合わせを行なった
島根富士通を訪れ、受付をする参加者
今年は地元キャラクターのしまねっこもお出迎え
安来市のあらエッサくんと、湯の川温泉のやがみちゃんもお出迎え
開始時間までの間、ショールームでPCの中身などについて社員が説明
組み立て教室の様子。20組が参加した
参加者をサポートする社員が入場。毎日、現場で組み立てを行なっているプロたちだ
開会式で挨拶する富士通クライアントコンピューティングの齋藤邦彰会長

 今回は、齋藤会長に密着取材する形で、組み立ての様子をレポートする。

 もともとノートPCの開発者であった齋藤会長は、かつては組み立てや分解を日常的に行なっていたが、最近ではそうした機会もなくなり、経営トップになってからは、初めてのPC組み立てになるという。

 「以前とは使っている部品がまったく違う。最軽量のために小さな部品が数多く使われている」というのが第一印象。細かい部品の装着や、軽量化のために工夫された難しい接続に苦戦し、途中で「誰だ、こんな設計にしたのは!」と、普段とは真逆のやや怒り気味の評価をするひと幕も。その一方で、「匠」と呼ばれ、難しい組み立てを高い品質で作り上げる島根富士通の社員たちの組み立て技術に驚いていた。

今回、組み立てを行なうLIFEBOOK WU-X/H1
マザーボード
14型の液晶ディスプレイ
キーボード。ここの裏面にさまざまなパーツを取り付けていく
バッテリ
ボトムケース
組み立てに利用するパーツ。一番下がSSD
ネジは工程ごとに分類して準備している。手前は練習用のネジ
3種類のドライバを用意。そのうち1本は大人用ドライバで基本的には使用しない
作業する人は手袋とエプロン、静電防止バンドを装着する
作業内容はタブレットに表示される
大きな部品はAGV(自動搬送車)で供給。今回は石見神楽バージョンで登場
部品ケースを参加者が受け取る
齋藤会長も部品ケースを受け取り、作業机に運ぶ
エプロンをつけて、作業準備は万端に
まずはネジ締めの練習からスタート
作業開始。キーボードを取り出して、背面のネジ締めから行った。生産工程ではキーボード部だけで70本のネジが使われており、専用のネジ締めロボットが導入されている
実はこの部分には、かなり小さいネジが使用されており、これが今回用意された難関作業の1つだった
ネジの小ささに、齋藤会長もいきなり厳しい表情に。小さいネジは世界軽量化を目指すための工夫だという
続いてマザーボードを取り出す
ケーブル類を挟み込まないように、位置を決めていく作業が難しい
キーボードのフレキケーブルをメインボードに接続
コネクターまわりを固定する金具を取り付ける
マサーボードを8本のネジで本体に固定する
フレキケーブルを次々と接続。斜めに入り込まないようにするのが難しい
接続が完了した状態。ここで前半が終了
休憩タイムにはしまねっこが登場してダンスを披露
しまねっこと記念撮影する齋藤会長と、島根富士通の神門明社長(左)
途中経過について、MCを務めたフリーアナウンサーの山岡ゆり子さんから直撃インタビューを受ける齋藤会長。「思ったより難しい。匠の技術をヒシヒシと実感した」とコメント
後半戦の最初はディスプレイを取り出す
ディスプレイ部に前半で作業したキーボード部を取り付ける。
液晶パネルケーブルを接続する
続いてカメラケーブルを接続する
ヒンジ部をネジ固定する
MLD FOOTと呼ばれる部品を取り付ける
SSDの取り付け作業
バッテリの取り付ける位置を確認する齋藤会長
バッテリを取り付ける
部品がすべて取り付けられた状態
最後にボトムケースを取り付ける
ネジを10本使って取り付ける
最後のネジ締めは家族が手伝うシーンもみられた
最後の2本のネジは、筐体が反らないように工夫した特別なネジだ
左右の前方2カ所にこのネジを使用している
組み立てが完成したLIFEBOOK WU-X/H1
全員で電源を入れてみた。齋藤会長もどきどきの瞬間
無事に起動して、ひと安心
完成したLIFEBOOK WU-X/H1を手にする齋藤会長
ところが齋藤会長が組み立てたLIFEBOOK WU-X/H1の重量を計ると690g。スペックの689gよりも1g多いという事態に関係者は大慌てとなった
齋藤会長は、組み立てをサポートしてくれた島根富士通の社員と記念撮影

 組み立て教室は、全員のPCが無事に起動して終了した。

 参加した子供たちからは、「パーツを取り付けるのが難しかったが、組み立ては楽しかった」、「自分で作ったPCには愛着が湧きそう」、「PCを使って、映像を作ってみたり、ゲームをしてみたい」などの声があがっていた。

 その後は、生産工程の見学や、体験型のゲームなどが行なわれた。

 また、見学会場では、「未来のPCを考えてみよう!」というテーマでアイデアを募集し、その内容も発表。「海外の人としゃべるとき、PCが同時通訳して欲しい」、「何メートルもの高さから落としても壊れない」、「持ち運びの時はスマホくらい小さく、使う時は大きくなる」、「触らなくても声で動かせる、話しかけたら起動する」といったアイデアがあがっており、そのアイデアの狙いなどが紹介された。

参加者全員で基板の生産ラインの見学を行なった
世界最軽量の689gと同じ重量で、飲み物とお菓子を組み合わせるゲーム
「匠と勝負! 競争ネジ締め競争」は、10本のネジを電動ドライバで締める時間を競う
匠はハンディをつけて20本のネジを締めた
「PCの試験をやってみよう!」は、試験プログラムを応用してさまざまな機能をテスト。点数を競い合った
「未来のPCを考えてみよう!」というテーマでアイデアを募集
「島根富士通シャレンジ」クイズは齋藤会長も挑戦。この答えは2番。齋藤会長はもちろん正解
クイズの上位5人には島根富士通の神門社長から賞品がプレゼントされた
参加者を見送る島根富士通の神門社長(手前)をはじめとした同社経営幹部
島根富士通の社員も全員で参加者を見送った
安来市のあらエッサくんと、湯の川温泉のやがみちゃんもお見送り

 組み立て教室終了後に、齋藤会長にインタビューしてみた。

 齋藤会長は、「自分でPCを開発していたときよりも格段に難しい設計となっており、そこに、生産を担当する島根富士通の組み立て技術の進化が組み合わさるからこそ、世界最軽量が実現できることを改めて感じた。フレキケーブルの接続もしっかりと接続する方法を採用し、それをきちっと作り込んでいる。また、日々、カイゼンの努力を行ない、スキルも磨いている。設計の力だけでなく、島根富士通の匠の技術があって実現するものである」とコメント。

 「参加者に、組み立てのポイントをしっかりと伝授し、分かりやすく教えてくれた。島根富士通の社員のやる気がヒシヒシと伝わってくるイベントだった」と語った。

 富士通クライアントコンピューティングでは、14型ディスプレイを搭載した世界最軽量モデルを、さらに軽量化する姿勢を示している。これは、組み立て教室で組み立てるPCの難易度が年々増すことにもつながるといえそうだ。