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KDDI、Starlinkを活用した「山小屋Wi-Fi」

山小屋Wi-Fi

 KDDI株式会社は18日、衛星通信「Starlink」の利活用拡大について記者会見を行ない、この中で日本全国の山小屋においてStarlinkを用いたWi-Fiサービス「山小屋Wi-Fi」を開始すると発表した。また、5G基地局におけるバックホールとしての利用や海上サービスについて解説を行なった。

 「山小屋Wi-Fi」は光ファイバーの設置が難しい山小屋にStarlinkを設け、インターネットサービスの提供を行なう。auユーザーは利用料無料。そのほかのユーザーは最大2時間/300円、最大24時間/600円というプランになっており、海外からの来訪者も利用しやすい価格となっている。

 これにより、山小屋利用者は、撮影した写真のSNS共有が気軽に行なえるようになるだけでなく、キャッシュレス決済の促進や、空き状況の確認や予約システムの簡略化など利便性向上、天気を即座に確認できることによる安全性の向上にもつながると言い、「山岳DXを推進していきたい」とする。

 長野県白馬村八方池山荘で率先して導入したのだが、既に50~100Mbpsでの通信が確認でき、スマートフォンが問題なく利用できる速度を実現したという。8月2日には11カ所で本格提供開始するが、今後100カ所以上の展開を目指したいとした。

 利用可能なエリアは以下の通り。

長野県

 白馬村八方池山荘、白馬岳頂上宿舎、天狗山荘、冷泉小屋、塩見小屋、仙丈小屋、北沢峠こもれび山荘、西駒山荘、蓼科山荘

富山県

 真砂沢ロッジ、剱澤小屋


 このほか、以下の発表も行なわれた。

5G基地局におけるStarlinkのバックホールの活用。イベントでも活用

 5G基地局におけるStarlinkの導入についてだが、KDDIはこれまでも4G基地局のバックホールにStarlinkを活用し、光ファイバーの敷設が難しい山間部や離島で通信カバー率の向上に役立ててきたが、これを5G基地局にも適用していくというもの。ただ、現時点での5GはNSA方式のため、あくまでもSAやVoice over NRといった将来を見据えた導入としている。

 また、利用者が局所的に集まる音楽フェスでは、通信回線混雑緩和およびキャッシュレス決済の通信手段として、迅速に展開できるStarlinkは有用だとし、「FUJI ROCK FESTIVAL '23」および「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2023」で提供開始予定だという。さらに、災害といった非常時の通信手段としての利用、ドローンと組み合わせた効率かつ有効な利用事例などが紹介された。

5G基地局のバックホールにおけるStarlinkの活用
音楽フェスでのWi-Fiサービスの提供
ドローンでの利用
建設現場での利用

 なお、KDDIはSpaceXとともに衛星間通信(Inter Satellite Link)の技術も確立し、地上局から遠い場所でも、衛星間メッシュを利用すれば、通信を可能にする技術を開発中だが、既存の静止衛星と比較すると「驚くべき試験結果」が得られているという。実際にこの衛星間通信を駆使することで、沖縄県でもStarlink Businessの提供を実現したという。

衛星間通信の実現
沖縄県でもStarlinkの法人向け提供を始めた

海上サービスにおいて東海大学の「望星丸」で搭載

 KDDIは7月初旬より海上利用サービスを提供開始した。海上の通信サービスは漁業の現場でも強いニーズがあり、リアルタイムの漁場予測などによる高度化、省エネ/省人化の実現でもStarlinkが期待されている。今は陸地から20海里という範囲でのみ通信しているのだが、衛星間通信によりさらにエリアが拡大すれば、漁業のDXや海上通信における変革をもたらせるという。

海上利用

 その第1号として学校法人東海大学 海洋調査研修船「望星丸」に搭載された。望星丸は2,170tの船で、船海洋学を学ぶ学生を載せるだけでなく、小中学生や地域の人々など研修公開も行なっているため、実は多くの人が利用しているという。その中でStarlinkを搭載すればさらなる可能性が広がるという。

 また小笠原諸島の一部では空港がなく、船に頼っている。このためコロナ禍の時はワクチン接種で望星丸が医療でも活用した。こうした知見は大学内にとどまらず社会に広く公開していきたいというが、その際にもStarlinkを活用できるとした。

望星丸