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AMD、前世代比2.7倍の性能となった「Radeon RX 7000」

GPUとしては初めてチップレットを採用したRadeon RX 7000シリーズを発表するAMD 会長 兼 CEO リサ・スー氏

 米AMDは3日(現地時間)に米国ネバダ州ラスベガス市の会場において記者会見を開催。同社会長兼CEOのリサ・スー氏など同社幹部が登壇し、新しいゲーミング向けGPU「Radeon RX 7000シリーズ」を発表した。

 上位モデルのRadeon RX 7900 XTXは96CU、シェーダのクロック2.3GHz、24GBメモリ、355WのTBP(Total Board Power)というスペックで999ドル(税別市場想定価格、1ドル=150円換算で、約15万円)、Radeon RX 7900 XTは84CU、シェーダのクロック2GHz、20GBメモリ、300WのTDPで899ドル(同、134,850円)となり、12月13日から販売が開始される予定だ。

NVIDIA新製品へのカウンターとなるRadeon RX 7000

ラスベガスの会場で会見を行なうAMD会長兼CEOのリサ・スー氏

 AMDが発表したRadeon RX 7000シリーズは、2020年10月に発表された「Radeon RX 6000シリーズ」の後継となる製品だ。AMDによれば、Radeon RX 6900 XTは当時のNVIDIAのハイエンド製品だったGeForce RTX 3090に匹敵する性能を備えており、従来世代に比較して大きく性能が引き上げられたことが特徴となっていた。

 今回AMDが発表したRadeon RX 7000シリーズは、AMDの内部コードネームで「Navi 3x」と呼ばれる製品。RDNA 1(発表当時はRDNA)となるRadeon RX 5000シリーズ、そして第2世代RDNAアーキテクチャに進化し、Big Navi(ないしはNavi 2)の開発コードネームで呼ばれてきたRadeon RX 6000シリーズという、ここ数年のAMD GPUの進化の積み重ねの延長線上にある製品となる。

 9月に競合となるNVIDIAがAda Lovelaceアーキテクチャを採用したGeForce RTX 40シリーズを発表しており、最上位製品のGeForce RTX 4090は既に発売されている。そうした競争環境の変化の中で、AMDがどうしたカウンターを仕掛けてくるのか注目が集まっていたが、今回のRadeon RX 7000シリーズはその答えになる。

GPUとして初めてチップレットを採用しているRDNA 3

Radeon RX 7000シリーズのパッケージ、1つのGCDと6つのMCDから構成されている

 Radeon RX 7000シリーズは、RDNA 3という新GPUアーキテクチャに基づいている。大きな特徴として、Radeon RX 7000シリーズは、AMDがこれまでCPUで利用してきた「チップレット」(複数のダイを1つのパッケージ上に統合する方式)をGPUにも応用した製品となる。

GPUとして初めてチップレットを採用
ハイレベルの特徴
RDNA 2に比べて54%性能向上

 ただし、複数のGPUが統合されるわけではなく、GCD(Graphics Core Die)と呼ばれるGPUダイは1つで、それ以外にMCD(Memory Cache Die)と呼ばれるキャッシュメモリ(第2世代インフィニティキャッシュ)を6つ搭載する形になっている。MCDとGCDは64bitバスで接続されている。従来のRDNA 2世代まではインフィニティキャッシュはGPUダイ上に統合されており、それが外部チップとして外に出されていた。GCD(300平方mm)は5nmで製造され、MCD(それぞれが37平方mm)は6nmで製造される。

GCDと6つのMCDから構成されている
MCD

 こうした仕組みにすることで、キャッシュヒットした場合、最大で5.3TB/sの帯域幅が実現可能になっており、RDNA 2に比べて2.7倍の帯域幅を実現している。

GCDの特徴
ゲームに最適化された内部エンジンを採用
デュアルイシューのSP
AIアクセラレータ
RTエンジン

 RDNA 3アーキテクチャは内部構造が見直されている。1つのCU(Compute Unit)にはデュアルイシューのSP(Streaming Processor)が内蔵されており、従来世代に比べて2倍のIPC(Instruction Per Clock-cycle)が実現されているとAMDは説明している。

 そのほかにも、2つのAIアクセラレータ(従来世代に比較して2.7倍のスループット)、1つのRTエンジン(レイトレーシングアクセラレータ、第2世代)が内蔵されており、RTエンジンは新しい命令セットなどのサポートにより50%性能が向上しているという。

ディスプレイエンジン
デュアルメディアエンジン

 また、ディスプレイパイプラインの強化も大きなポイントで、DisplayPort 2.1に対応していて、RDNA 2世代に比べて2倍となる54Gbpsのスループットに対応し、4K 480Hzないしは8K 166Hzまで対応可能になっている。

 メディアエンジンも改良されており、AV1のエンコーダ、デコーダにハードウェアで対応しており、8K60fpsのAV1動画をエンコード、デコードすることが可能だ。なお、PCI Expressに関しては従来の製品と同じGen 4までの対応になる。

クロック周波数は分離している
チップとしては61TFLOPSの性能を実現
アーキテクチャの特徴のまとめ

 RDNA 3ではフロントエンド(命令のデコーダなど)とシェーダエンジンのクロック周波数は分離動作する。フロントエンドは最大2.5GHzで、シェーダエンジンは最大2.3GHzで動作する。こうした仕組みを採用することでより省電力が実現できるとAMDは説明する。

上位モデルのRadeon RX 7900 XTXは61TFLOPSの性能を発揮

Radeon RX 7900 XTX

 Radeon RX 7000シリーズには2つのSKUが用意されている。

【表1】Radeon RX 7000シリーズの主な仕様
モデルGPUアーキテクチャCU数ビデオメモリシェーダークロックMCD数TBP'トータルボードパワー)
Radeon RX 7900 XTXRDNA 39624GB2.3GHz6355W
Radeon RX 7900 XTRDNA 38420GB2GHz5300W
Radeon RX 7900 XTX

 最上位モデルとなるのはRadeon RX 7900 XTXで、久々に「XTX」の製品名が復活した。Radeon RX 7900 XTXの処理能力は61TFLOPS(単精度)になっており、RDNA 2ベースのRadeon RX 6950 XTの23TLOPSと比較して2.7倍になるという。

 GeForce RTX 4090は82.6TFLOPSで、それには及ばないが、GeForce RTX 4080 16GBは48.7TFLOPSはとなっており、そちらは上回っている。

Radeon RX 7900 XT

 Radeon RX 7900 XTは84CU、2GHz、MCDは5つ(物理的には6つ搭載されているが1つは無効にされている)となっており、おそらくCUなども同じようにフル構成からいくつか無効された形のダイだと考えられる。

ボードサイズはわずかに伸びているが電源コネクタなどは変更はない

 ボードサイズは従来製品とほぼ同じ(全長は276mmから287mmと11mm伸びている)で、電源コネクタも従来製品と同じPCI Express用の8ピン×2となっている。これにより、筐体や電源などは基本的にはそのままRadeon RX 6000シリーズからアップグレード可能であるとAMDでは説明している。

性能

 ゲームなどの性能に関しては4K解像度でRadeon RX 6950 XTと比較して1.7倍となっているデータが公開されたほか、DisplayPort 2.1に対応し高いリフレッシュレートでプレイできることなどがアピールされた。なお、NVIDIA製品との比較データに関しては、今回は触れられることはなかった。

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