イベントレポート

Micron、「GDDR7」をサンプル出荷。HBM3e/4への積極的な取り組みも

Micronが発表したGDDR7。1βプロセスで製造され、ピンあたりのデータレートが32Gbps、384bitのメモリバス幅で1.5TB/sの帯域幅を実現

 Micron Technology(以下Micron)は、6月4日から台湾/台北市で開催されているCOMPUTEX TAIPEI 2024のメイン会場近くで記者会見を6月5日に開催し、「GDDR7」のサンプル出荷を開始したことを明らかにした。

 現行製品に採用されているGDDR6およびその改良版となるGDDR6Xに比べてピンあたりのデータレートが引き上げられ、32Gbpsになり、384bitのメモリバス幅で1.5TB/sの帯域幅を実現する。

次世代GPUに採用が想定されるGDDR7

GDDR7を説明するスライド

 Micronは、グローバルに製造拠点を持っているが、かつて日本のエルピーダ・メモリが破綻した時にそのビジネスを引き継いだ関係で、日本の広島に製造拠点を持っており、日本にも関係が深い半導体メーカーでもある。

 今回、GDDR7のサンプル出荷を開始したとして、そのサンプルを展示した。CPU用DRAMがレイテンシを最小化する設計がされているのに対して、GDDRはメモリ帯域幅が重要視されるGPUがメインのアプリケーションになるため、ピンあたりのデータ転送速度を引き上げて、広帯域重視の設計が行なわれており、RadeonやGeForceのような一般消費者向けのGPUに採用されている。

 今回Micronが発表したGDDR7は、これまで採用実績のあるGDDR6をベースに、ピンあたりのデータレートを高めた製品で、製造はDRAM用最新プロセスノードになる、1β(1beta)のプロセスノードで行なわれる。

帯域幅が向上するため、3Dゲームなどの性能が向上する
最近のGPUはAI処理にも利用されるが、帯域幅が上がるとAI処理の性能も上がる
1β(1beta)ノードのウェハ

 MicronのGDDR6はピン当たりのデータレートが14~16Gbps、GDDR6Xは19~24Gbpsになっているのに対して、今回発表されたGDDR7は発表時で32Gbpsを実現しており、大きくデータ転送速度が高まる。

 32Gbpsというデータ転送速度は、NVIDIAのGeForce RTX 4090のような384bit幅のメモリバス幅を実現しているGPUに使ったと仮定すると1.5TB/sの帯域幅を実現することになる。現在のGDDR6Xを利用しているGeForce RTX 4090の帯域幅は1TB/sなので、1.5倍の帯域幅という計算だ。

 今回、このGDDR7はグラフィックス用に使われるとだけ説明しただけで、具体的なアプリケーションを発表していないが、MicronのGDDR6XがNVIDIAのGeForce RTX 3000/4000シリーズで採用実績がある。その意味で、今後どこかのタイミングで登場するNVIDIAの次世代GPUにこのGDDR7が採用されると、帯域幅が現行製品の1.5倍になり、GPUの性能向上に大きく貢献すると予想できる。

 Micronによれば、こうしたGDDR7は本年後半にMicronの流通経路を経由して入手可能になる計画だという。つまり、本年後半に仮に新しいGPUが登場しても対応できるということになる。

2025年にはHBMの市場シェアをDRAM全体の20~25%を目指す

Micron Technology 副社長 兼 ストレージ事業部 事業部長 プラサド・アッルーリ氏(左)、Micron Technology 副社長 兼 コンピュート製品事業本部 コンピュート・ネットワーク事業部 事業部長 パラヴィーン・ヴァイディアナタン氏(右)

 Micronの記者会見にはMicron Technology 副社長 兼 コンピュート製品事業本部 コンピュート・ネットワーク事業部 事業部長 パラヴィーン・ヴァイディアナタン氏、Micron Technology 副社長 兼 ストレージ事業部 事業部長 プラサド・アッルーリ氏が同席し、記者からの質問に答えた。

 DRAMを担当するヴァイディアナタン氏は、MicronのHBM3eの現状について説明し、「2月の終わりから3月に報道発表したように、既に44GBのHBM3eを量産出荷しており、随時出荷を開始している」と述べ、NVIDIAのH200用、そしてBlackwell(B200/B100用)、およびAMDがこのCOMPUTEX 2024で発表したInstinct MI325Xに使われているHBM3eを出荷開始していると強調した。

MicronのHBM3e

 HBMは、HynixとSamsung Electronicsなどの韓国のDRAMベンダーが非常に強い市場になっており、AIアクセラレータの市場が爆発的な拡大を見せる中で、Micronがどのような動きをするのかに注目が集まっている。ヴァイディアナタン氏は「2025年中には、DRAM全体の市場シェアである20~25%程度の市場シェアを目指したい」と述べ、MicronがこれまでよりもHBMの市場に力を入れていく計画だと表明した。

 そして、NVIDIAが次世代GPUとして「Rubin」(ルービン)の計画を明らかにしたが、そのメモリとして次世代のHBMとなる「HBM4」に対応することを明らかにしたため、MicronがHBM4にどう取り組んでいるのかに対して質問がなされた。

 同氏はこれに対し、「まずHBM3eで強みである高度なパッケージング技術、製造能力を生かせるようにして市場を獲得していきたいと考えている。それに向けてHBMメモリの開発に投資を行なっていくことを既に発表しており、長期的な計画でやっていきたい」と述べ、HBM3eでの市場シェアを拡大し、それを維持しながらHBM4に取り組んでいきたいと答えた。