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Intel、液浸冷却の標準デザインを第4世代Xeon SP向けに提供。KDDIとも協力拡大
2022年9月30日 10:12
Intelは9月27日~9月28日(現地時間、日本時間9月28日~9月29日)の2日間にわたり、米国カリフォルニア州サンノゼ市にあるサンノゼ・コンベンション・センターで同社年次イベント「Intel Innovation」を開催した。
その中でIntelは、正式発表が遅れている開発コードネーム「Sapphire Rapids」こと第4世代Xeon Scalable Processor(第4世代Xeon SP)に関して何もアナウンスをしなかったが、気になる情報を公開している。その1つが第4世代Xeon SP向けの液浸冷却のリファレンスデザインを開発して、それを顧客に対して提供することを検討していることだ。
そうしたサーバー機器を液浸冷却してサステナブルなデータセンター構築を目指している、日本のKDDIとの協力も拡大していく計画だとIntelは説明したほか、KDDI株式会社DX推進本部プラットフォーム技術部 北山真太郎氏が、KDDIの液浸冷却を活用したコンテナ型データセンター開発の取り組みを説明した。
サステナブルなIT環境の実現を目指して、データセンターでも液浸冷却や水冷などが注目を集める
Intelは、開発コードネーム「Sapphire Rapid」で知られる第4世代Xeon SPの開発を続けており、5月のVisionでは特定の顧客に対して出荷を開始したことは明らかにされていたが、未だに、より広範囲の一般顧客への出荷や正式発表は行なわれていない。今回のIntel Innovationでもそれは同様で、Sapphire Rapidsに関しては何もアナウンスはなかった。しかし、展示会場では多くのOEMメーカーがSapphire Rapidsを搭載したシステムを展示したりしており、そんなに遠くない時期に正式発表がありそうな雰囲気は醸し出していた。
そうした状況にあるSapphire Rapidsだが、今回のInnovationでは非常に興味深い発表が行なわれた。それはIntelがSapphire Rapids向けに、液浸冷却のリファレンスデザインの提供予定であるという発表だ。
ウクライナ紛争が起きたことにより、特に欧州では深刻なエネルギー不足が発生しており、電気料金などのエネルギーコストは増大している。そうしたこともあり、サステナビリティ(持続成長可能性、環境などに配慮して事業を継続すること)の観点からも、データセンターの全体の電力を削減する取り組みが注目されている。しかし、データセンターに求められる処理能力の要求は増え続けるばかり、処理能力を落として電力を削減するというのは難しいのが現状だ。そこで、大量の電力を消費する要因となっている、冷却用のファンをなくすことに注目が集まっている。
一般的なサーバーの冷却方法である空冷ではかなりの数のファンを回すため、電力がどうしても増えてしまうからだ。このため、ヒートパイプに液体を入れて循環させることで冷却する水冷、システムを特殊な油の中に浸すことでシステム全体を冷やす液浸などの手法がデータセンターでも導入され始めている。
Sapphire Rapids向けに液浸冷却の標準デザインを提供、KDDIとも協力拡大
今回Intelは「Architecting the Sustainable Data Center with Intel's Open IP Immersion Cooling Modular Reference Solutions」という名前の技術セッションを行ない、この中でSapphire Rapids向けに液浸冷却のリファレンスデザインを作成し、顧客に提供する計画を明らかにした。
台湾Intelで計画されているこのリファレンスデザインは、Intelがタンク、CDU(Coolant Distribution Unit、冷却液配分装置)、モジュラー化されたマザーボードなどのサーバー装置、タンクに入れるシャシーなどがセットになって提供され、比較的短期間で液浸冷却のシステムを開発できるようにするという。現在でも開発が行なわれており、Sapphire Rapidsが第4世代Xeon SPとして正式に提供されるようになった後で顧客に提供される計画だと説明された。
このリファレンスキットの検証に関して、IntelがKDDIと協力している旨が紹介され、今後そうした液浸冷却のエコシステムの拡大で協力していくとIntelから説明があった。
KDDIが2021年から行なっている液浸冷却装置の実証実験が紹介される
この技術セッションには、KDDI 株式会社DX推進本部プラットフォーム技術部 北山真太郎氏がゲストとして呼ばれており、KDDIが開発している液浸冷却装置を利用したコンテナ型のデータセンターの開発に関する説明が行なわれた。2021年6月に報道発表が行なわれたKDDIの液浸冷却の開発は、KDDI、三菱重工業、NECネッツエスアイなどが協力して行なわれている実証実験で、今回の技術セッションでは動画の形で紹介された。
北山氏は「KDDIは2030年に2019年比でCO2自社排出量を50%削減する目標を掲げている。その目標を実現する手段の1つとして液浸冷却装置の開発を行なっており、12フィートと小型のコンテナの中に装置を格納し、PUEは1.07と高効率なシステムを実現できた」と述べ、実証実験で高効率なシステムを実現できたと説明した。
PUEとはデータセンター全体の消費電力量 (kWh) ÷IT機器の消費電力量 (kWh)ではじき出される数値で、1に近づけば近づくほど高効率なシステムであることを示している。KDDIが実証実験で実現した1.07という数字は、かなり1に近づいている数字で、液浸冷却の効果が大きいことを示している。
北山氏によればKDDIとその検証パートナーは、実証実験で得たデータなどを元にビジネス化を目指しており、将来的にはコンテナという移動できるという特性を生かして、スタジアム近くにMEC(Multi-access edge computing、基地局などの近くに置かれるエッジサーバーのこと)として設置するなどさまざまな用途を検討していき、Intelとも協力を拡大しながら引き続き開発を続けていくと説明した。