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出荷台数4割減となった2021年度の国内PC市場。平均使用年数は過去最長の7.4年に
2022年4月19日 10:31
一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)が発表した2021年度(2021年4月~2022年3月)の国内PC出荷統計によると、出荷台数は前年比40.7%減の716万3,000台、出荷金額は前年比21.3%減の6,976億円と、台数、金額ともに大幅な前年割れとなった。
前年度には、GIGAスクール構想による小中学校へのPC整備が進み、現行体系で統計を開始した2007年度以来、歴代2位となる年間出荷台数を達成。その反動が見られた2021年度は、12カ月間に渡って、毎月のように前年実績を下回る結果となり、年間出荷台数は過去4番目に少ない実績に留まった。
だが、Windows 7のサポート終了に伴い需要が集中した2019年度と比べると24.4%減となり、特需がなかった2018年度に比べると3.2%減の実績。Windows 7のサポート終了や消費税率の引き上げ、GIGAスクール構想といった2年間に渡る特需を除けば、一定の水準に戻りつつあるともいえる。
また、2020年度には、統計開始以来、過去最高の出荷台数を記録したノートPCは、前年比54.8%減の594万8,000台と半減したが、2019年度と比較すると13.8%減の水準に留まっており、2018年度と比べると6.2%増となっている。
ノートPCの内訳を見ると、モバイルノートは前年比54.8%減の257万2,000台となり、GIGAスクール構想の反動を大きく受けている。ノート型・その他は、33.6%減の337万6,000台となっている。また、デスクトップPCは前年比7.1%減の121万5,000台。そのうちオールインワンが34.7%減の25万2,000台となったのに対して、単体は4.6%増の96万3,000台と、すべての集計カテゴリのなかで唯一前年実績を上回っている。
2020年度はテレワークの浸透によって、ノートPCの需要が先行したが、2021年度にはハイブリッドワークに対するニーズが高まり、オフィスにおいてデスクトップ単体を導入する動きが回復したり、家庭内でもデスクトップを導入するケースが増加したことなどが背景にありそうだ。
なお、2022年3月単月の実績は、出荷台数が前年同期比25.7%減の82万9000台、出荷金額が11.3%減の801億円となっている。ノートPCの出荷台数は26.1%減の72万台。そのうち、モバイルノートが4.4%減の40万3,000台、ノート型・その他が42.7%減の31万7,000台となった。デスクトップPCは22.4%減の10万9,000台。そのうち、オールインワンが53.1%減の1万6,000台、単体が12.3%減の9万3,000台となっている。
月別での推移をみると、個人向けPC、法人向けPCともに、1年間に渡って、前年の需要増の反動の影響を受けて、台数、金額のいずれも12カ月連続での前年割れとなった。前年3月の集計では、5カ月連続で2桁成長を達成していたのとは大きな差がある。
だが、2022年4月以降は、比較対象となる前年実績には特需の影響がなくなるため、これまでのような大幅な落ち込みは見られなくなりそうだ。
PC市場では、部品不足や価格高騰などの影響があるものの、性能が低いCPUを搭載したPCが過剰在庫になっているとの指摘もあり、場合によっては、出荷水準は低いままとはいえ、前年実績を上回る形で推移する可能性もありそうだ。
世帯普及率は上昇も平均使用年数は7.4年に
一方、内閣府の経済社会総合研究所景気統計部が発表した消費動向調査によると、2022年3月末時点のPCの世帯普及率は、2人以上の世帯において78.9%となり、前年調査に比べて0.4ポイント上昇した。2020年3月の77%と比べると、この2年間で1.9ポイント上昇。コロナ禍においては、2年連続で、家庭へのPC導入が増えていることが明らかになった。普及率では、2016年3月の79.1%に続き、過去2番目の水準となっている。
また、100世帯あたりのPC保有台数は128.4台となり、2021年3月に比べて0.1台上昇した。前年調査では100世帯あたりで4.7台もの増加が見られたことに比べると増加水準は低くなったが、携帯電話全体では横ばい、薄型テレビが減少していることに比べると、家庭でのPCの保有台数の増加基調が浮き彫りになる。
気になるのは、平均使用年数が7.4年となり、2021年3月調査の6.8年に比べて、長期化している点だ。しかも、2002年の調査開始以来、過去最長となっているのだ。
業界内では、テレワークの進展に伴って、PCの買い替えが進んでいることなどを背景に、平均使用年数は、より短くなっていくとの見方も多かった。実際、2021年3月調査では、6.8年へと0.3年短縮しており、これが継続するとの期待があった。だが、今回の調査では、この期待とは逆の結果が出ている。
買い替えの理由としては、故障が54.2%、上位品目へ移行が29.1%となっている。上位品目への乗り換えが3割近くまで上昇したのは、2013年に35.1%を記録して以来のことだ。テレワークにも対応できる上位機種への買い替えが進展したともいえそうだ。上位品目への移行は、Windows 11への乗り換えや、高性能CPUを搭載したPCへの移行促進がどれだけ進むかが鍵になる。
平均使用年数の短縮化に向けたPC業界の取り組みが、年間出荷台数の増加にもつながるといえる。PC業界にとっては、Windows 10のサポートが終了する2025年10月までの期間、需要が低迷すると見られる国内PC市場において、買い替えを促進する施策や提案により、平均使用年数の短縮化につなげることができるかどうかが当面の課題になる。