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iPad版「Illustrator」正式リリース

~年齢や髪量なども調整可能なAI機能がPhotoshopに追加

iPad版Illustrator

 Adobeは、Creative Cloud各種製品の新機能およびアップデートについて発表した。21日から23日の期間で開催されるクリエイター向けイベント「Adobe MAX 2020」にて発表されるもので、本記事では開催に先立って行なわれた報道関係者向け説明会の内容をお届けする。

 Adobe MAX 2020は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて完全オンラインイベントとして開催される。例年では米国にてAdobe MAXを開催したのちに、日本国内でAdobe MAX Japanを開催するといったかたちが採られていたが、今回は56時間のライブ配信を通じて米国のキーノートを皮切りに、タイムゾーンにあわせてメインの地域を日本、欧州と移しながら行なわれる。

 世界同時開催イベントとなったことで、海外で行なわれるセッションの多くに日本語字幕を用意。言語を要因に視聴が難しいといったセッションが少なくなり、より多くの日本人クリエイターにも届けられるようになった。また、参加費が無料となったことで、新規にAdobe IDを取得して参加するクリエイターも多く見られるという。

iPad版Illustratorの正式版が公開。iPhone版Frescoも

iPad版Illustratorのリピート機能

 今回新製品として投入されるのはiPad版IllustratorおよびiPhone版Fresco。ともに21日よりリリースされる予定。前者は昨年のAdobe MAXで発表されていたものの正式版にあたり、タッチとペン操作を最大限活かした設計となった。後者はすでにリリース済みのiPad版と同等の機能を手のひらサイズで実現できるとする。

 iPad版Illustratorでは、デスクトップ版のコア機能はそのままに、Apple Pencilでの入力に最適化。ベジェ曲線の描画が可能なほかAdobe Fontsもサポートし、タイポグラフィの作成なども行なえる。iPad版Photoshopや、クラウドドキュメントを通じたデスクトップ版Illustratorとのシームレスな連携も可能。

 また、iPad版の独自機能として「リピート」機能を追加。ラジアル(円形)、グリッド(格子)、ミラー(鏡あわせ)の3種類のモードを使ってパターン作成を容易に可能とする。パターンの変化はリアルタイムで画面上に反映される。

iPhone版Fresco
クリッピングマスク

 iPhone版Frescoは、iPad版とともにバージョン2としてリリース。iPhoneの小さな画面にあわせてUIの調整などは行なわれているものの、機能や使い心地はほぼ同等となっており、どこでもスケッチが可能となった。

 バージョン2では、指先でこすったような表現が可能な「指先ブラシ」の追加や、図形をスポイトツールで取り込んでパターンとして使える「カスタムブラシ」、下のレイヤーオブジェクトの形状にあわせてマスクできる「クリッピングマスク」、Adobe Fontsを利用したテキスト挿入機能などが実装される。

 ペンの柔らかさを調整できるカスタム筆圧機能も追加。筆圧グラフと試し書きで確認しながら、好みの筆圧に調整できるようになった。

PhotoshopではAIの力で年齢や髪の量まで調整可能に

ニューラルフィルター

 Photoshopには新たに「ニューラルフィルター」機能が追加される。マシンラーニングを活用し、フィルターごとに用意されたスライダーを調整するだけで、写真の編集や補正、調整などが非破壊的に簡単に行なえるもの。リリース時点ではおすすめフィルターとして「肌をスムーズに」と、さまざまなアートスタイルを適用できる「スタイルの適用」の2つが用意されるほか、ベータ版のフィルターも実装される。

 人物を捉えたポートレート写真に対して行なわれたデモでは、ベータ版フィルターの「スマートポートレート」についても触れられ、年齢や髪の量などのスライダーを動かすだけで写真が変化していく様子が実演された。フィルターには、ローカルで処理が完結するものと、クラウド上で処理するものが存在し、フィルターの概要欄にもその旨がアイコンとともに表示される。

 そのほか、「空を置き換え」機能や、テキスタイルパターン作成時に色相や変形などの調整をリアルタイムで確認できる「パターンプレビュー」機能なども追加される。

 Lightroomには、階調によって輝度や色相を調整できる「カラーグレーディング」機能が追加。モバイル版/デスクトップ版(Classic含む)ともに利用できるほか、Camera RAWでもサポートされ、より作品性の高い写真が作れるようになるという。

スマートポートレート適用前
年齢を調整
年齢と髪の量を調整
空の置き換え(左がオリジナル、右が置き換え後)
パターンプレビュー
カラーグレーディング

Premiereではシーン検出機能が追加。After Effectsは3D関連機能を強化

シーン編集の検出

 Premiere Proには、複数のシーンがまとまった1つのクリップからシーンを検出する「シーン編集の検出」機能が追加。AIが映像を分析し、シーンの変わり目(カットポイント)部分でカット/クリップマーカーの作成/サブクリップのピンの作成を自動で行なう。

 HDRへの対応強化も図られており、シーケンス設定内からRec.2100 HLGが選択可能となった。Lumetriスコープも最大輝度10,000cd/平方mまで表示できるようになり、PQ方式もサポートする。加えて、動画からテキストの文字起こしを行なえる「テキストの書き起し」機能についても、Premiere Proのベータ版に実装される。

 また、モバイル向けのPremiere Rushでは、トランジションやサウンドトラックのライブラリを拡張。サウンドエフェクトも追加され、より幅広い映像制作が可能となった。

 After Effectsでは、Illustratorで作成したレイヤーなどを3D空間で動かしたいといった要望に応える機能を追加。各3Dレイヤーに対して拡大や縮小、回転などが行なえる「3Dトランスフォームギズモ」や、3Dビューからカメラを作成できる機能などが用意された。ロトブラシについても「ロトブラシ2」に強化され、AI支援による正確なトラッキングが可能となった。

HDRへの対応強化
3D機能強化
ロトブラシ2

 そのほか、XDにはUXに奥行きをもたらす3D変形機能、Character Animatorには正確なリップシンクを実現する機能などが追加。デスクトップ版Aeroのパブリックベータについても発表された。

クラウド機能強化でバージョン履歴機能が追加。Photoshop/LightroomのArm対応版も予告

バージョン履歴機能

 クラウドを通じたアプリ/ユーザー間のデータ共有・連携機能を強化。素材ポケットのような役割を果たすCreative Cloudライブラリでは、ブランドロゴなどのアセットを登録しておくと、各アプリケーションで適用した変更が即座に適用。大規模なチームでも一貫性を保ち、事故のリスクや管理コストを軽減する。

 創作物自体の共同編集や共有などを可能にするクラウドドキュメントにはバージョン履歴機能が追加。保存したドキュメントの編集履歴を確認できるだけでなく、過去のバージョンに戻すことも可能となった。ともに、Webブラウザ経由での閲覧や共有、コメントによるフィードバックもできる。

 また、ArmベースのWindows/Macデバイス向けに、Arm対応版のCreative Cloudアプリケーションも開発中。Adobe MAX後にPhotoshopおよびLightroomのArm対応版に関する最新情報を発表する予定だという。