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NEC、通話だけアクティブに伝えるデバイスをMakuakeで発売
2020年10月16日 10:00
NECは、通話アクティブノイズキャンセリング機能を持ったワイヤレスヒアラブルデバイスを、株式会社マクアケが提供するクラウドファンディングサービス「Makuake」を通じ、15日より先行予約販売する。販売個数は500台で、価格は29,800円。
製品はNECとフォスター電機が共同開発した。ベースとなっているのはNECが開発した音響処理技術と、生体認証技術の1つである耳音響認証。
音響処理技術は、ペットの鳴き声など周囲の音を遮断し、自分の声だけを相手に届けるもの。一般的なノイズキャンセリングとは異なり、音声取得時にノイズキャンセルを行なうため、再生側にノイズキャンセリングがないクラウド上での再生にも効果を発揮する。これまでNECでは工事現場など業務用途での利用にこの技術を提供してきたが、今回、Web会議などのさいに利用できるワイヤレスヒアラブルデバイスにこの技術を搭載した。
耳音響認証は、耳穴からの反響音特徴量の個人差を用いて個人を特定することで、認証時に外部環境の影響を受けにくく、生体認証の弱点となりがちな眼鏡、防止、マスク、手袋をしている場合でも認証可能。さらに、耳の中の構造を利用しているため詐称が難しいという特徴がある。
独自の通話アクティブノイズキャンセリング機能を搭載
今回提供するのは、ビジネスパーソンがさまざまな場面で利用することを想定したトゥルーワイヤレス型ヒアラブルデバイス。内側と外側に2つの集音マイクを装備し、NECの独自通話アクティブノイズキャンセリング機能を搭載したことで、本ヒアラブルデバイス装着者の発話音声を、外部の騒音に影響を受けにくく内側マイクで取得。発話音声に混入する騒音は外側マイクで取得し、議事騒音成分を用いて打ち消すことで、聞き手に届く発話音声をクリアにする。
オンラインコミュニケーションを行なうさいに利用すれば、本ヒアラブルデバイス装着者の周辺で発生する雑音を気にすることなく、コミュニケーションを行なうことができる。
通信方式としてBluetooth 5.1を採用。サイズは本体が25.0×21.7×27.2mm(幅×奥行き×高さ/イヤーチップ含む)。充電ケースは41.0×67.0×47.0mm(充電ケーブルを含まず)。重量は本体が約8g×2個、充電ケースは約60g。
カラーはコンシューマユーザー向けということで白を採用。病院などでの利用も想定されることから、幅広い場所で利用できる白となった。
バッテリ駆動時間は、連続再生時間が6時間(最大)、連続通話時間が6時間(最大)。充電には1.5時間から2時間かかる。このバッテリの時間について、「今回、連続して使い続けるのではなく、昼休みは充電にあてるといった使い方が多いことを想定し、この連続再生、通話可能時間としました」という。
NECが個人向けに販売する理由
現在はコンシューマ事業を行なっていないNECが、コンシューマユーザーが利用するヒアラブルデバイスを発売する理由をNEC デジタルプラットフォーム事業部エキスパートの青木規至氏は次のように説明する。
「じつは音響処理技術を使ったデバイスは、工事現場向けに開発し、提供しています。工事現場は70dBから騒音が多いところでは90dBと、耳を守る必要がある上、その中でも会話をすることができるデバイスが必要になるからです。同じようにコロナ禍でオンライン会議が定着したことで、通話アクティブノイズキャンセリングのニーズが高まってきたことが理由となっています」
オンライン会議は、在宅で行なう場合に子どもやペットの声、近隣の工事音、救急車の音など様々な音がある。これを防いで会話したいというのがニーズの1つ。しかし、それ以上にかなり深刻なのはシェアオフィスや自社オフィス内でオンライン会議を行なうケースだという。
「営業を相手先ではなく、オンラインで行なうことなどが増えてきました。そのさい、全員が会議室や音が遮断された環境を整えることは現実的に難しい。自席からオンライン会議を行なうと、本来は聞こえてはいけない隣の席の話し声が相手に聞こえてしまうといったトラブルが起こりがちです。そこで通話アクティブノイズキャンセリング機能を持ったヒアラブルデバイスの必要性が出てくると考えています」(青木氏)。
また、NECの生体認証事業「Bio-IDiom」の1つとして研究開発を進めてきた耳音響認証を採用していることから、認証された相手にだけ話をするといった用途でも利用することができる。
さまざまな業界や業務での利用に期待
今回、Makuakeで先行販売するのは、「われわれには想像が付かないような業界や業務での利用場面があるのではないか? と考え、先行予約販売をさせて頂くこととしました。単品での利用だけでなく、アプリケーションやサービスとの連動による、新しい使い方提案なども積極的にも訊いてみたい」(同氏)と製品の技術を含めて、世の中の反応を見ることが狙いだという。
Makuakeでの販売実績をベースに、コンテンツ提供者、サービス事業者などのパートナーを募り、ヒアラブルデバイスを活用した新しいソリューション、コンテンツを共同で開発していくことを想定している。たとえば、耳音響認証を利用すれば個人が特定できるため、購入者のみに音楽を提供するといった新しいビジネスが誕生する可能性に期待する。
また、500台の限定販売が好評に終了した場合には、製品を追加発売する可能性もあるという。ただし、NEC自身はコンシューマ向け製品販売を行なっていないことから、「パートナー企業と協業し、販売をお願いする可能性が高いのではないかと考えます。現在でも取引があるキャリア様などとの協業などを模索していきたいと思っています」と青木氏は話している。