ニュース

理研、ウェアラブルデバイス向け超薄型有機太陽電池の寿命15倍向上に成功

高いエネルギー変換効率と長期保管安定性を両立した超薄型有機太陽電池

 理化学研究所(理研)の開拓研究本部染谷薄膜素子研究室および、創発物性科学研究センター創発機能高分子研究チームらの研究グループは3月10日、変換効率が高く長期保管でも安定する“超薄型有機太陽電池”の開発に成功したと発表した。

 有機太陽電池は有機半導体を光電変換層として用いた太陽電池で、塗布プロセスでの量産ができるほか、従来のシリコン型太陽電池に比べて安価であるとともに、極めて薄い有機半導体薄膜で形成されるため、柔軟性や軽量性に優れ、ウェアラブルセンサーを長時間安定に駆動する電源など、次世代の太陽電池として期待されている。

 このなかでも、基板を含めた全体の厚さを数μmまで薄型化した超薄型有機太陽電池は、衣服や皮膚に直接貼りつけても違和感なく使用できるのが特徴。しかし、超薄型有機太陽電池は基板や封止膜に薄い高分子フィルムを使用するため、十分なガスバリア性の確保が難しく、安定駆動するための発電層や電荷注入層の界面を制御する手法がなかったため、エネルギー変換効率と長期保管安定性の両立が不十分だった。

 今回、同研究グループは、発電層を改良するために高エネルギー交換効率と熱安定性を併せ持つバルクヘテロ接合構造の素子を新たに作製。さらに、発電層と正孔輸送層の界面における電荷輸送効率向上のため、この素子に対してポストアニール処理(150℃の加熱処理)を施すことで、13%の高変換効率と、大気中保管3,000時間で劣化5%以下という長期保管安定性を両立する厚さ3μmの超薄型有機太陽電池を実現した。

 この超薄型有機太陽電池は、過去のものよりもエネルギー変換効率が約1.2倍高く、長期保管安定性は15倍改善されている。この成果により、超薄型有機太陽電池を長期間安定して大電力を供給できることが示され、今後の衣服貼りつけ型センサーなど、ウェアラブルエレクトロニクスへの長期安定電源応用に貢献することが期待できるとしている。

今回開発した超薄型有機太陽電池の長期保管安定性の改善
高いエネルギー交換効率と長期保管安定性を両立するための設計指針