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3D処理からAIまで、プレミアムな体験をメインストリームでも実現するArm
2019年12月6日 17:19
アーム株式会社は、6日開催の「Arm Tech Symposia Japan」に合わせ、同社のメインストリーム向けプロセッサIPについての記者説明会を開催した。
説明会にはアーム株式会社 代表取締役社長の内海弦氏、英Arm マーケティングプログラム担当副社長のイアン・スマイス氏が登壇。
内海氏は、Armは創業から30年目を迎え、CPUから始まってGPU、機械学習処理に特化したNPU(Neural Processing Unit)まで製品分野を拡大してきたが、変わらず高い電力効率を追求してきたと述べ、日本の次期スーパーコンピュータシステム「富嶽」でもArmが採用されるに至ったとした。
同氏は、エッジデバイスだけでなく機械学習処理やHPCの分野においても、性能だけでなく電力効率も重要視されていることを示しており、サーバー向けの「Neoverse」など幅広い市場に向けたプロセッサIPを展開していくと語った。
ついで登壇したスマイス氏は、10月末に英Armが発表したAI向けのNPUとなる「Ethos-N57」および「Ethos-N37」、GPUの「Mali-G57」、「Mali-D37」について説明。性能の詳細については既報(性能1.3倍向上のGPU「Mali-G57」などメインストリーム向けチップIP)を参照されたい。
同氏はメインストリーム向けのIPについて、プレミアムセグメントのIPで実現したユーザー体験をメインストリームデバイスでも実現することを目標に設計していると説明。
ArmではNPUを市場セグメントに応じて投入しており、監視カメラやエントリースマートフォンなど、比較的単純なワークロードを単一処理する用途ではローエンドの「Ethos-N37」、メインストリームスマートフォンやスマートホームHubなど、画像認識と音声認識の同時実行といった、複数ワークロードが実行される用途では「Ethos-N57」、AR/VRやプレミアムスマートフォンなどでは「Ethos-N77」が最適であるとした。
性能別にIPは別れているが、共通のアーキテクチャで設計されているのも特徴。NPU設計のおもな課題となるメモリ帯域については、データは最初から圧縮処理され、すべてのデータは圧縮状態でSRAMに格納されるため、使用帯域を最小限に抑えているとする。
また、スライドで示された各IPの性能は動作クロック1GHzという条件での性能であるため、製品実装ではさらに高い性能を発揮できるとアピールした。
「Mali-G57」GPUについては、メインストリーム向けとして初めて、第2世代スカラーGPUアーキテクチャである「Valhall」を採用し、Vulkan APIをターゲットとした新命令セット対応などで性能を向上していると説明。
具体的には性能密度と電力効率が30%向上し、行列演算処理の高速化によって機械学習処理も60%高速化されていることもアピールされた。
「Mali-D37」については、DPU(Display Processing Unit)として、組み込みのディスプレイなど消費電力やコスト要件が厳しい用途向けのIPであるとし、できるだけ小さく、HD対応で高効率なものを目指したと説明。16nmプロセスで1平方mm未満のMali-D71比で3分の1という実装面積の小ささで、高い性能効率を実現する。
ソフトウェアの面では、業界標準に準拠した同社のオープンソースソフトウェア「Arm NN」を紹介。同ソフトでモデルと推論エンジンの接続や、他社IPにも対応した処理の配分などを行なうことで、開発者に性能とセキュリティ、高度なアクセス性を提供するとした。
またゲーミング分野ではUnityのパートナーシップを挙げ、Unity開発環境からArmのシリコン性能をネイティブに発揮できるようになり、コンパイラの最適化など、UnityエンジンがArmのCPU/GPU/NPUへ最適化されることでより高い性能を実現するとした。