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関西学院大ら、リチウムイオン電池を高性能化する有機電極材料を開発

単一の有機分子(左上)と2種類の有機分子(右上)を組みあわせたときの模式図。それぞれの分子の電荷分布(下)

 関西学院大学理工学部および大阪大学らによる研究グループは、有機物を電極材料として使用した高性能なリチウムイオン電池の開発に成功した。

 近年、スマートフォンなど多くの電子デバイスでバッテリとして用いられるリチウムイオン電池だが、正極材料にコバルトなどといった希少金属が欠かせず、より安価な材料が求められてきた。

 そのなかでも、さまざまな有機物が材料の候補として検討されてきたが、単一の有機分子では、分子同士の電荷が反発して密な構造を形成し、リチウムイオンを通しづらい。そのため、電極としての性能が上がらず、加えて結晶が電解液に溶解しやすい特性も相まって、実用化が難しかった。

 今回研究グループでは、単一ではなく、2種類の有機分子で構成された「電荷移動錯体」と呼ばれる材料を開発し、電極の材料に用いた。電荷移動錯体は、中心部に正電荷・負電荷をそれぞれもつ2種類の円盤状の有機分子を1:1の比率で混ぜあわせたもので、2種類の分子が交互に積み上がった筒状の構造を形成する。

 この筒同士の間には隙間が存在し、この部分にさまざまな分子を取り込めることを発見。リチウムイオンをこの隙間に高速で出入りさせ、高容量な電極材料の開発に成功した。加えて、正負の電荷で有機分子間が強く結びつくため、電解液への溶解を抑制にもつながった。

 同グループでは、2種類の有機分子を混ぜあわせた高性能な電極材料は、新たな二次電池の開発による電子デバイスの性能向上につながるとしている。