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東芝、有機半導体を利用した高感度のフィルム型光センサーを開発
2019年9月2日 19:09
東芝は2日、有機半導体を用いた高感度のフィルム型光センサーを発表した。
光センサーは、光を電気信号に変換し、その電流を測ることで、光の有無や強さを判別するものだが、蛍光を示す物質のシンチレータをセンサーと組み合わせることで、放射線も計測できる。
近年、loT/ウェアラブル端末への光センサーの搭載の拡大が見込まれるなか、従来のシリコンなどの無機半導体を利用した光センサーと比較して薄型・小型・大面積化が期待できる有機半導体薄膜を用いた光センサー(有機光センサー)の開発が注目されている。
しかし、有機光センサーは、無機半導体を用いた光センサーと比べて、光の検知特性が十分ではなく、パルス検出が難しいなどの応用範囲に制限があることが課題であった。
今回東芝が開発した微弱な光も検出できる高感度なフィルム型有機光センサーは、1個の放射線の入射に伴うシンチレータからの微弱な光も検知することができ、かつ有機半導体を用いたフィルム型の光センサーとしては世界初の放射線のパルス検出に成功した。
開発したフィルム型光センサーは、透明電極、バッファ層、有機半導体層、金属電極の積層構造で、有機物を主成分としたフィルム状の材料で封止をしている。
放射線の検出にはこの素子にシンチレータを取りつけ測定する。そして、シンチレータから放出された光が透明電極とバッファ層を透過し、その光が有機半導体層で吸収され、電荷を生成する。その電荷を両電極から電流としてパルス検出する。
微弱な光を検出するためには、有機半導体層で生成した電荷をロスなく取り出し、電流信号の強度を高めることに加え、測定時の電流のノイズを低減することが必要という。今回東芝は、電荷の取り出し効率の向上のため有機半導体層の材料構成の最適化および成膜プロセスの改善を行ない、光検出効率80%以上を達成した。また、ノイズ低減のため、有機半導体層の膜厚などの素子構造の改良も行なった。
同社は、今回開発したフィルム型有機光センサーを用いて、放射線の一種であるベータ線を放出する放射性物質のストロンチウム90の検出試験を行ない、ベータ線のパルス検出を確認した。有機半導体層の材料や構造を調整し、最適な種類のシンチレータと組み合わせることで、ガンマ線、エックス線等、ベータ線以外の放射線検出も可能とする。
素子部のフィルム化により、装置を小型・軽量化・曲面状化することができ、さまざまな形状の機器へ搭載することが可能となり、体に貼り付けて用いる医療用の放射線検出器等の応用も考えられる。さらに、大面積構造を作りやすい特徴を活かし、一度に広い面積の光や放射線の分布を測定するといった応用も期待できる。