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理研・東大などが、熟練研究者の「勘と経験」をコンピュータで再現。単結晶構造解析を高速化
2019年8月23日 13:03
科学技術振興機構(JST)、理化学研究所および東京大学は22日、単結晶構造解析において、コンピュータで熟練研究者の「勘と経験」を再現する技術を発表した。
単結晶構造解析は、分子や物質の性質を評価して理解するうえで有用であり、オングストローム(100億分の1m)の細かさで分子や物質を知ることができる。しかし、この構造解析には数千から数万個のデータを計測するため、研究目的によっては数時間から数日かけて計測する必要がある。
この解析の効率化のため、通常は数分で予備的にデータ計測を行ない、研究目的にふさわしい単結晶構造解析結果が見込まれる試料の選別や計測条件の設定を行なうが、従来は研究者の勘と経験をもとに選別や設定を行なっていた。
今回、統計解析技術の1つである「ベイズ推論」を用いることで、コンピュータで解析結果やデータの質を事前評価できるようになり、人為的な試料選別や計測条件設定を、将来的にコンピュータに置き換えることが可能になった。
ベイズ推論とは、ある事柄の原因を観察された結果(データ)から推定する統計解析法で、ベイズの定理とよばれる数学(確率論)の定理に基づいている。原因が結果を生み出す順過程に対し、ベイズ推論は逆過程のアプローチとなっている。
今回の研究グループではこのベイズ推論を応用し、数分の予備計測で得られる数百程度のデータ(結果)から、被験試料固有の結晶構造パラメータ値(原因)を推定した。具体的には、この技術を異なる溶媒分子を含んだ2種類の多孔性物質結晶に適用し、予備計測データから結晶構造パラメータ値を推定したところ、単結晶構造解析前に判別できた。
また、推定した結晶構造パラメータ値を、結晶学の理論式に代入することで、予備計測には含まれないデータ分布を調べることもできる。試料固有のデータ分布から、長時間かけたデータ計測における誤差の影響を最小化する計測条件を設定し、化学結合の形成による原子周辺の電子密度分布の変形を、理論的な予想と一致する精度で観察することにも成功した。