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米パデュー大、光子でトランジスタを実現する「量子ゲート」
2019年7月17日 17:09
米パデュー大学は16日(米国時間)、光子のなかに量子ゲートを埋め込んだ新たな量子コンピューティング技術を発表した。
同大学の研究チームが開発したのは、従来コンピュータで使われているトランジスタの量子版と表現している「量子ゲート(Quditゲート)」。通常、量子ビット(Qubit)は「0かつ1」の状態の重ね合わせを表すことができるが、Quditでは「0かつ1かつ2」のような複数の状態の重ね合わせを表現できるという。これにより、従来の量子コンピューティング技術よりも多くのデータを符号化して処理することが可能となる。
Quditゲートは本質的にQubitゲートよりも効率的であるのみならず、環境ノイズによる影響を受けにくい光の粒子(光子=フォトン)に量子ドットを埋め込んでいるため、安定性も高いとしている。
Quditゲートでは、ある量子の観測によって別の量子に影響を与え、通信を解読不能にしたり量子テレポーテーションといった事象をもたらす「量子もつれ」状態を最大化することを目指している。
量子コンピューティングにおいては、量子情報処理を行なうことができる「ヒルベルト空間」領域での絡み合いが大きいほど、より高密度な演算が可能となるという。
通常、個別の光子にエンコードされた量子情報を操作するためのゲートはごくわずかな時間しか機能しないため、ある光子の状態に基づいて別の光子の状態を操作することは非常に難しい。
そのため、研究チームは光子の時間領域と周波数領域で量子情報を符号化することによって、量子ゲートを確率論とは対照的な決定論的に操作することを可能にした。同大学のAndrew Weiner教授は、「このゲートにより、予測可能かつ決定論的な方法で情報を操作できる」としている。
前述の周波数領域で絡み合っている2つの光子から、各光子の時間領域と周波数領域を絡み合わせるようにゲートを操作すると、4つの完全にもつれ状態にある量子ドットが生成され、すなわち1,048,576次元(32の4乗)のヒルベルト空間を持つことになる。
以前のフォトニックアプローチでは、ヒルベルト空間の6つのもつれた光子によって、18qubitをエンコードすることが可能となっていたが、今回の研究成果では、2つの光子で4quditを構築し、20qubit相当のエンコードを実現した。
同大学では、今後は高次元量子テレポーテーションなどの量子通信タスク、量子機械学習や分子シミュレーションなどの用途で、量子アルゴリズムを実行するためのゲートの開発を進めるとしている。