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「VAIO SX12」はビジネスノートの新スタンダードを目指した最後のピース

 VAIO株式会社は7月9日、都内にて12.5型モバイルノート「VAIO SX12」の発表を行なうとともに、同社創業5周年を記念する発表会を開催した。

 既報のとおり、VAIOはメインPCとしての性能や機能性を備えた12.5型の「VAIO SX12」を投入。同社14型モバイルノートのVAIO SX14に並ぶメインストリーム向けのビジネス向け高性能ノートとなっている。VAIO SX12の使い勝手などについては、別掲のレビュー記事(性能と操作性に妥協なし。900g切りの12.5型メインマシン「VAIO SX12」)を参照されたい。

 ここでは発表会の内容について紹介する。

法人向け需要拡大で好調なVAIOのPC事業

VAIO株式会社 代表取締役社長の吉田秀俊氏

 冒頭ではVAIO株式会社 代表取締役社長の吉田秀俊氏が、今年(2019年)の7月1日をもって設立5年を迎えたことを報告。ソニーのPC事業分離からはじまった5年の間に、不安や葛藤、期待といった悲喜こもごもを抱えていたという心境を吐露。

 設立当初は、PC事業に加えてもう1つの大きな取り組みに挑戦しようということで「自由だ。変えよう。」のスローガンのもと邁進した。吉田氏は、VAIOファン、取引先、株主、そして社員に支えられつつ、今のPC以外のEMS事業も手がけられる会社になれたことに感謝を述べ、5年目のスローガンには「信じてくれる人と、VAIO」を掲げてさらなる成長を目指すと宣言した。

過去のスローガン(左)と、新しいスローガン

 実際、5年目を迎えたVAIOの事業は順調である。2018年度は過去最高益を迎えられそうとのことで、売上高が約6%増、営業利益は昨年比で約40%増の大幅増益につながった。

2018年度の業績見込み
VAIOのPCは法人向けが非常に好調
海外では18地域でVAIO製品を販売しており、今後も拡大予定

 吉田氏はその理由として、働き方改革を追い風として法人向けの販売が伸びていること、新製品投入による単価上昇、海外での販売地域拡大やライセンス収入の伸長、生産効率化や調達コストダウンによる原価改善を挙げる。「VAIOのスタート地点はこれからであり、これからの5年に向けた成長も進めていく。次のVAIOにも期待してほしい」との意気込みを見せた。

モバイルPCの新しいスタンダードを目指した「VAIO SX12」

 次に登壇した同社取締役執行役員の林薫氏は、ソニー時代からVAIOが業界の先端を走り、市場に新しいスタンダードを根付かせてきた歴史を説明した。

 1997年登場の「VAIO 505」をモバイルPCの原型とし、続く2003年登場の「バイオノート505エクストリーム」で薄型モバイルノートを先取り。2004年には「VAIO type S」にて13.3型ワイド液晶を採用することで、現在の13.3型モバイルノートを生み出したと力説した。

モバイルノートを先取りした「VAIO 505」と「バイオノート505エクストリーム」
13.3型ワイド液晶を業界のスタンダードにした「VAIO type S」

 林氏は現在の社会では多様な働き方が生まれてきており、とくに場所を選ばずにどこでも仕事ができ、すべての作業が1台で完結するような“本気のモバイルノート”が必要とされているという世のなかのニーズを語り、その回答として“メインマシンの最小形”とする「VAIO SX12」が開発されたと述べた。

VAIO SX12を手に持つVAIO株式会社 取締役執行役員の林薫氏
同社PC事業部 PC事業企画課 課長の黒崎大輔氏

 続いて、同社PC事業部 PC事業企画課 課長の黒崎大輔氏が「VAIO SX12」の見どころを説明。詳細については別掲のニュース記事『13.3型偏重なモバイル界に一石を投じる12.5型の「VAIO SX12」』および、本誌ライター笠原一輝氏のコラム記事『VAIO、工業製品では禁じ手の“揺れる仕様”に挑戦。創立5周年のVAIO SX12/14の勝色モデルを限定販売』を参照されたい。ここでは簡単にSX12の説明を紹介する。

 黒崎氏は、VAIO SX12の前身であるVAIO S11について、サブノートとして人気はあったものの、VAIO S13のようにメインノートに定着しなかった理由として、11.6型の小型サイズによってキーボードのピッチが狭くなっていることや、画面サイズが小さく閲覧性が下がってしまう点を指摘。

VAIO S11はサブノートとして人気があったが、販売台数ではVAIO S13に大きく水をあけられていた
VAIO S11ではキーボードのピッチの狭さと画面の小ささが懸念されていた

 黒崎氏はこれらの弱点を克服することで、12.5型の小型モバイルノートを新しいスタンダードとして根付かせることができ、VAIO SX14と合わせて、VAIOのラインナップをさらに強化できるようになるとアピールした。

VAIO SX12ではキーボード面を筐体の両端ギリギリまで広げて、19mmのフルキーピッチを確保
ベゼル幅約4.97mmにまでせばめた狭額縁を採用し、VAIO S11とほぼ同じ横幅ながら約16%画面を大型化している
重量は約897g、バッテリも最長で約14.5時間と長い
独自の性能アップ機能「VAIO TruePerformance」をサポート
インターフェイスを豊富に装備
そのほかの特徴
限定品の勝色特別仕様モデル

 また、VAIO SX12の投入により、VAIOノートシリーズは多くの需要に答えられる機種を用意し、ひとまずラインナップが完成に至ったという。現状はこのラインナップをもとに、ビジネスを進めていく構えであることを示した。

VAIOの現在の布陣。ラインナップはVAIO SX12をもって完成したとする

 発表会にはワーキングママのためのファッション向けWebサイトである「Domani」で、モデルと編集者を兼任する望月芹名さんが登場し、6カ月の娘の子育てをする傍らで効率よく仕事を進めるデバイスとしてVAIO SX12の魅力を語った。

 望月さんは子供がまだ小さいことから、あまり会社に長くおられず、さまざまな場所で隙間時間を見つけては仕事をする日常を送っており、そのさいにVAIO SX12の可搬性の高さや、LTE対応によるどこでもすぐにインターネットに接続できる利便性が非常に気に入ったとのこと。夫婦と子供で公園などに遊びに行ったさいも、軽量なVAIO SX12を持参し、ちょっと子供が疲れて休んでいる隙などにさっと編集部にデータを送ったりできるなど、子育てと仕事を両立できる頼もしい存在であり、そのデザイン性も女性にとっては外で使うモチベーションにつながると満足の様子だった。

ワーキングママ向けのWebサイト「Domani」でモデルと編集者を兼任する望月芹名さん

EMS事業も順調さをアピール。ロボット汎用プラットフォームを展開

VAIO株式会社 NB事業部 NB設計部 部長の児嶋信二氏。写真のぬいぐるみはコミュニケーションロボットとして開発中の「おはなしコウペンちゃん(仮称)」

 発表会ではVAIOのもう1つの事業であるEMS事業についての説明も行なわれた。EMS事業ではIoT機器、ロボット製品などを開発しているが、VAIO株式会社 NB事業部 NB設計部 部長の児嶋信二氏は、誰でもロボットビジネスを開始できる「ロボット汎用プラットフォーム」についての説明を行なった。

VAIOがEMS事業で手がけてきた製品

 児嶋氏は、ロボットビジネスについて多くの技術が必要とされており、自社だけで開発を行なうのは非常に困難であることから、他社と技術協業しつつ、行なうことが重要と語る。

ロボット開発に必要とされる技術
VAIOのパートナー
ロボット汎用プラットフォーム
ロボットのための音声ソリューション
ロボットのためのOSフレームワーク

 そのロボット汎用プラットフォームのための新ハードウェアとして、人とコミュニケーションを行なうための会話装置を開発。ぬいぐるみのなかなどにいれることで、あたかもそのぬいぐるみとかいわできるようになっており、コミュニケーション向けと簡単な対話向けの2種類を紹介。将来的に「おはなしコウペンちゃん(仮称)」のペンギンのコミュニケーションロボとを自社製品として展開することを発表した。

コミュニケーションロボットとして機能させる応答デバイスを2種類用意
ロボット汎用プラットフォームのラインナップ
ロボット汎用プラットフォームのカバー範囲
おはなしコウペンちゃん

VAIO SX12実機写真

VAIO SX12
VAIO SX12 ALL BLACK EDITION
VAIO SX12 勝色特別仕様