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JAL、旅行を事前に"試着"できるバーチャルツアー体験「JAL xR Traveler」
2019年3月29日 13:21
JAL(日本航空)は、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)、MR(複合現実)を活用したバーチャルツアー体験「JAL xR Traveler」や、IoTを活用した最適なツアーの購入支援サービス「JAL 体験自販機」の試行を開始する。試行期間は、2019年3月末から12月末を予定している。
JALでは、旅との新しい出会い方や選び方の提案を目指した「Try on trips」というコンセプトを打ち出しており、「最新テクノロジーを活用し、旅を試着する機会を創出。お客様にかけがえのない旅と出会っていただきたいとの思いを込めている」という。
今回の試行サービスは、そのコンセプトの実現に向けた第1弾と取り組みとなる。
「JAL xR Traveler」は、SOOTH(スース)が開発したxR技術を活用し、旅を気軽に「試着」できることを目指したもので、バーチャル空間における視覚や聴覚での体験に加えて、現地の匂いを再現したり、送風装置や歩行器を活用することで、嗅覚や触覚なども刺激することで、より没入感のある体験を実現できるという。
体験者はナビゲーターの女性に誘われ、とっておきの場所を訪れたり、過ごし方を体験。さらに、体験者の脳波を分析することで、相性の良い旅行先や旅行スタイルの提案を行なうという。
まずは、JALが提唱する新しいハワイ旅のスタイル「Style yourself」に合わせた4種類のコンテンツを用意する。
体験者は、おでこと耳部分に脳波計を装着。その上で、ヘッドマウントデバイスを装着する。ハンドデバイスと手をつなぎながら、まるで女性に手を引いてもらっているような感覚で、ハワイを体験できる。選択したコンテンツが始まると、足下のコンベアが動き、コンテンツにあわせて歩くことができる。前面に配置された送風機によって風を吹かせたり、香りが広がったり、水しぶきが飛んでくることで、より豊かな疑似体験ができる。
これらのコンテンツを体験している間に、「JAL Neuro Chart」により、脳波を可視化し、このデータを活用した提案も行なうことになるという。
開発を担当したSOOTHは、映像制作会社 であるAOI TYO Holdingsのグループ会社で、AOI Pro.体験設計事業部をスピンオフして、2018年2月に設立。体験設計コンサルティングや生体反応データ収集、活用を伴うコンテンツの企画や制作、サービスおよびソリューション開発を行なう。これまでに、健康食品企業の広告コンテンツにおいて、脳波や視線などを活用した機能を提供したり、製薬メーカーの室内用消臭芳香剤をVRによって環境を再現し、脳波とニオイを組み合わせた分析および解析、日系大手自動車メーカー向けに、脳波を活用した販促ツールの効果測定などの導入で実績を持つ。
SOOTHの額田康利社長は、「より一層、リアルタイムで、親しみやすく、わかりやすく視覚化する技術の高度化のほか、取得した生体反応データを、 AIを活用して解析技術を向上させていく。社名のSOOTHには、真実という意味があり、それに向けた意志と覚悟を込めている」としている。
JAL 体験自販機も開発
一方、JALでは、IoTを活用して、旅の体験を買うことができる自動販売機「JAL 体験自販機」の開発についても発表した。
利用者は、自販機のパネルに表示される「現地体験」を選び、体験内容や映像を見て、気に入れば、スマートフォンで商品のQRコードを読み取り、その場でスマホを通じて、体験を購入することができる。
将来的には、空港などに設置し、現地に行く直前まで、最適な旅のオプションを購入できるようにするという。
日本経済新聞社の研究開発組織である日経イノベーション・ラボの協力を得て開発したもので、現地ツアーなどの旅の体験を購入以外にも、デジタルサイネージとして活用でき、広告や動画を配信できる。今後は、AIによる分析機能やレコメンド機能などを追加して、最適な現地体験を提案するという。
第1弾として、JALPAKハワイが扱う現地オプショナルツアーを販売する。「JALPAKには、600以上のオプショナルツアーが用意されており、メニューが豊富である反面、どれが最適なものなのかを選びにくいという課題がある。映像を見たり、比較したりできるほか、分析機能やレコメンド機能によって、こうした課題が解決できると期待している」と述べた。
JAL 体験自販機は、今後、国内で開催されるハワイ関連のイベントなどに展示するという。
JAL 常務執行役員 国際路線事業本部長の大貫哲也氏は、「JAL xR Travelerでは、現地の女性に手を引かれながら、それぞれの旅のスタイルにあわせてハワイの過ごし方を疑似体験できる。JAL 体験自販機では、JALPAKハワイが提供するハワイ現地体験やアクティビティを気軽に検索したり、スマホを通じて購入できる。最先端のテクノロジーを活用して、新たな旅を楽しんでほしい」とした。
新たなチャレンジを継続
JALは、オープンイノベーション拠点であるJAL Innovation Labを拠点に、最新のテクノロジーを活用した顧客との新たな接点やコミュニケーションの創出に向けて、積極的なチャレンジを続けていくという。
JALでは、2018年9月に、「Style yourself ~JAL HAWAII~」のコンセプトを打ち出し、「従来の観光やショッピング中心の旅から、心身を豊かにし、満たすための旅へと進化を遂げようとしている。旅のニーズが広がり、多様化するなかで、多種多様な要望に対応したいと考えている。自然、暮らし、健康、働き方に焦点を当てた新たな旅のスタイルを提案する」(JAL 大貫常務執行役員)と語る。
火山活動でできたハワイにしかないワイルドな大自然のパワーや生命力を感じ、心と体をリセットする「Nature Retreat」、家族や仲間と一緒に、ハワイでゆったりと暮らすように時間を過ごす「Living Traveler」、ハワイでジョギングしたり、浜辺でヨガをするなど美しく健康な旅のスタイルを提案する「Travel Wellness」、働き方を自由にすることで、豊かな人生の実現と、家族を大切にした新たな旅を提案する「Flexible Worker」の4つの新たな旅を提案。それに基づいた製品やサービスを用意した。「JAL xR Traveler」や「JAL 体験自販機」で提供されるコンテンツも、これらの4つの新たな旅の提案に準拠したものになる。
こうした新たな旅の提案に伴い、JALでは、パートナーとの協業を進める。
これらのなかでは、コンドミニアムやタイムシェアといったサービスの活用のほか、ビジネスとレジャーの造語である「ブリージャー」、ワークとバケーションの造語である「ワーケーション」に対応した旅の提案を行ない、コワーキングスペースの提供や、北米での出張帰りにハワイに滞在するさいに最適な運賃も用意するという。
JALの大貫常務執行役員は、「日本人のハワイへの渡航者数は年間150万人規模で安定しているが、米国本土発のハワイへの渡航者数は増加傾向にあり、JALでは、日本からの渡航を含めたハワイマーケットの拡大に期待している。JALは、ハワイに就航して以来、65年間に渡り、培ってきた旅の知恵とつながりを活かし、便利で快適なハワイ路線の充実を図る」としている。
今回の新たな旅の提案のなかでは、ヒルトン・グランド・バケーションズとの提携を発表。ヒルトン・グランド・バケーションズのジェフ・バーニアー社長は、「両社のパートナーシップにより、より多くの人にハワイを訪れてもらえると期待している。旅に様々な選択肢を提供し、ワランランク上のバケーションの提案とともに、一生に思い出となる旅の提案ができる」とした。
また会見には、JAL ハワイ イメージキャラクターの長谷川潤さんも登場。「ハワイの空気感と、ハワイの人とのふれ合いを楽しんでほしい」と呼びかけた。