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Windows 7サポート終了で買い換え需要は前年越えとPCメーカー9社が共通の想定

一般社団法人日本コンピュータシステム販売店協会(JCSSA)の「2019年度新春セミナー」の様子

 一般社団法人日本コンピュータシステム販売店協会(JCSSA)は、2019年1月28日、毎年恒例の「2019年度新春セミナー」を、東京・内幸町の帝国ホテルで開催し、メーカー9社による「2019年 わが社の製品・販売戦略」と題したプレゼンテーションを行なった。

 登壇したのは、日本マイクロソフト、日本ヒューレット・パッカード、日本HP、Dynabook、富士通、日立製作所、VAIO、レノボ・ジャパン、NECの9社。1社あたり9分の持ち時間で、各社の戦略について説明。その後、同協会セミナー委員会の木村和広委員長(=リコージャパン取締役執行役員)による公開質問が行なわれた。

Windows Serverサポート終了に合わせてクラウド移行を推進する日本マイクロソフト

 日本マイクロソフト 執行役員 パートナー事業本部パートナービジネス統括本部の金古毅本部長は、「2019年は、政府が推進するSociety5.0への取り組み、ラグビー世界大会による国際イベント、新元号といった3つの大きな出来事がある。それに対して、インダストリーイノベーション、ワークスタイルイノベーション、ライフスタイルイノベーションの3つのイノベーションを推進し、日本の社会変革に貢献していくことになる」と語る。

 一方、「ITモダナイゼーションにおいて、大きな契機となるのが、EOSになる。この2年間の間に、Windows Server 2008、SQL Server 2008、Windows 7、Office 2010がサポート終了を迎える。Windows Server 2008は、48万台が稼働しており、Windows 7は、法人市場で1,600万台、個人市場では1,100万台が稼働している。

 PCに関しては、新たな製品への買い換えとともに、よりセキュアで、最新の機能を使ってもらうために、Microsoft 365を提案していく。Server分野では、より安価な価格でクラウドに移行してもらうためのAzure Hybrid Benefitというプログラムを用意し、最大で5分の1の価格でシフトできる。

 日本マイクロソフトでは、ServerのEOSについては、Azureへの移行促進や、ハイブリッドクラウドの提案を行ない、PCにおいてはモダンデバイスの訴求とともに、AIテクノロジーを駆使しながら、働き方改革を支援したい」とした。

日本マイクロソフト 執行役員 パートナー事業本部パートナービジネス統括本部の金古毅本部長
日本マイクロソフトのプレゼン資料

インテリジェントエッジに投資するHPE

 日本ヒューレット・パッカード 取締役 常務執行役員 パートナー営業統括本部の西村淳統括本部長は、「いまは、IoTの実用化、5Gによる通信の高度により、データセンターが分散する時代に入ってきた。2025年にはデータ総量が163ZBに達することになる。

 こうしたなかで、当社は、インテリジェントエッジ市場に対して、今後4年間で、全世界で40億ドル(約4,400億円)を投資し、データの活用に力を注いでいく」と説明。

 「当社が提供しているHPE InfoSightは、AIを活用して自律型データセンターを実現することができるものであり、Nimbleの場合、1台のアレイから1日あたり、3,000万~7,000万のセンサーデータを収集し、これをもとに、93%の障害受付が自動的にオープンされ、86%の問題が自動的に解決される。3PARやProLiantにはすでに対応しているが、この機能を当社のすべての製品に順次展開していくことになる」と述べた。

日本ヒューレット・パッカード 取締役 常務執行役員 パートナー営業統括本部の西村淳統括本部長
日本ヒューレット・パッカードのプレゼン資料

セキュリティにフォーカスする日本HP

 日本HP パーソナルシステムズ事業統括 九嶋俊一専務執行役員は、「2018年は、市場の成長よりも速い速度で成長し、シェアが上昇している。日本HPはパートナーへの依存度が高く、この成果の120%はパートナーの努力によるものである。

 2019年は、消費増税やWindows 10への移行、政府調達ガイドラインの変更など、新たな社会システムの移行に向けた取り組みなどの動きがあり、それに向けて、日本HPは、セキュリティとサービスの2つの観点から市場を盛り上げたい」とアピール。

 「政府の調達基準の変更は、民間企業にも広がってくるものになる。セキュリティは、もはや経営課題であり、データ保護という捉え方ではなく、事業継続という観点で捉えなくてはならない。どんなPCを選定するかが、セキュリティの基準になってくる。

 日本HPは、自己回復力を備えた世界で最も安心なPCを提供でき、さらに、HP TechPulseプロアクティブなサービスを通じて、止めないセキュリティを実現する」と述べた。

日本HP パーソナルシステムズ事業統括 九嶋俊一専務執行役員
日本HPのプレゼン資料

働き方改革を推進するDynabook

 Dynabookの覚道清文代表取締役社長兼CEOは、「2018年10月にシャープの傘下に入り、2019年1月から、Dynabook株式会社へと変更し、『コンピューティングとサービスを通じて世界を変える』ことをミッションに掲げた。今年はdynabookの第1号機の発売以来、30周年を迎える。30周年記念モデルとなるdynabook Gシリーズは、ノートPCのあるべき姿を追求した『The Note PC』といえるものになっている」とアピール。

 「働き方改革推進モデルとして、Gシリーズをはじめ、U63、D83、VC72の4機種を用意している。広島県の芸陽バスでは、2in1パソコンのVC72を導入し、PCスタイルで検索し、タブレットスタイルでプレゼテーションを行うことで効率性を高め、今後は、テレワークの導入にも活用することになる。また、dynaEdge DE100では、働き方改革を進化させるモバイルエッジコンピューティングを実現。すでに約200社で利用を開始している」などとした。

Dynabook 代表取締役社長兼CEOの覚道清文氏
Dynabookのプレゼン資料

カスタマイズで顧客が求める価値を実現する富士通

 富士通 執行役員常務 サービスプラットフォームビジネスグループの櫛田龍治グループ長は、「富士通は、国内法人市場において、サーバーおよびPCでトップシェアを獲得した。パートナー各社に感謝したい」と述べた。

 その上で、「富士通は、デジタル革新、デジタルマーケティング、サイバーセキュリティ、ハイブリッドIT、ワークスタイル革新の切り口から取り組む一方、市場ニーズを捉え、社内で自ら実践したリファレンスモデルを提供することが大切だと考えている。現在、ワークスタイル革新を加速するサービスやプロダクトを、16万人の社員によって社内実践をしている。ユーザー視点でのサービス検証を行ない、高品質なサポートを提供できるのが特徴だ」とした。

 また、「富士通は、プラットフォームビジネスにおいては、柔(Responsive)、越(Ambitious)、誠(Genuine)というコンセプトのもと、長い歴史のなかで培った匠の技術を駆使して、顧客に寄り添ったプラットフォーム製品を提供する。

 そのなかで、PC事業に関しては、モビリティとセキュリティ、それにカスタマイズを加えたコンセプトをもとに、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方を安心して行える環境を提供する。ビジネスパーソンがモバイルPCを利用する環境を想定し、顧客が求める価値を実現する。

 超軽量化を実現しながらも、充実のインタフェースやこだわりのキーポードを搭載するなど、利便性を損なわないのはもとより、手のひら静脈認証や安全なデータの持ち出しなどにも対応している。さらに利用者の要望にあわせて、縦横比4:3のディスプレイを搭載するなど、文教市場や流通市場でも業務環境に適用した製品へのカスタマイズすることができる」などとした。

富士通 執行役員常務 サービスプラットフォームビジネスグループ長の櫛田龍治氏
富士通のプレゼン資料

行動データで業務効率化を実現した日立製作所

 日立製作所 サービスプラットフォーム事業本部 IoT・クラウドサービス事業部の石井武夫事業部長は、「働き方改革は、投資やイノベーションによる生産性向上、意欲や能力を発揮できる環境を作ることが重要である。日立では、社員7,700人を対象にした個人の意識や、行動データを掛け合わせて分析することで、それをもとに、生産性を高めるための取り組みを行なっている。

 週末に残業時間が少ない人ほど生産性が高い、出張が多い人がチャレンジ意欲があるという気づきがあり、金曜日はノー会議ディにしたり、PCを貸し出して、テレワークを推進したりといったことを行なっている。

 また、JP1を活用して、メールを見ている時間が多い社員を分析したところ、見積もり対応のメールに時間がかかっていることがわかったため、見積もりフォーマットの改善を行ない、生産性向上につなげた。さらに、事務処理の自動化においては、2019年3月から提供するJP1/Client Process Automationを活用すれば、Excelで送られてくる注文書を、社内システムに登録する作業を自動化する際に、注文書の到着確認を自動化することで、より高い効率化が図れる。

 日立での実践を、PCを提案する際の付加価値の事例として活用してもらいたい」とした。

日立製作所 サービスプラットフォーム事業本部 IoT・クラウドサービス事業部の石井武夫事業部長
日立製作所のプレゼン資料

パートナービジネス拡大を目指すVAIO

 VAIO 取締役執行役員常務 国内営業マーケティング本部の松山敏夫本部長は、「2018年11月、大塚会長をはじめとするJCSSA一行に、安曇野の本社工場を見学してもらった。期待の声に応えられるように努力をしている。毎月1、2社の見学を受け入れて、日本のモノづくりを見てもらっている。

 現在、VAIOは、PCビジネスが柱となっているが、受託型生産のEMS事業のさらなる拡大、周辺機器や新たなソリューション事業への展開を考えている。もし、EMS事業でお手伝いできることがあれば声をかけてほしい」とした。

 「2018年末に発売したVAIO PA(法人向けモデル)は、2in1パソコンで約1kgを実現することを目指して製品化したものだ。独自のスタビライザーフラップ構造で、安定性と軽量化を両立させることにこだわった。また、1月17日発表したVAIO Pro PK(法人向けモデル)は、14.0型ワイド型液晶を搭載しながら、13.3型とほぼ同じサイズになっており、重量も999gを達成している。モビリティの世界で利用してもらえる製品に仕上がっている」と説明した。

 「VAIOは、5年目を迎えた。製品にはこだわりがある分、値段が高いと言われるのも確かだ。今年は、パートナーとのビジネスを拡大していきたい」と締めくくった。

VAIO 取締役執行役員常務 国内営業マーケティング本部の松山敏夫本部長
VAIOのプレゼン資料

サブスクリプションモデルに進出するレノボ

 レノボ・ジャパンの安田稔執行役員副社長は、「IDCによる最新四半期の速報では、グローバルでのトップシェアを獲得できた」と前置きし、「レノボの2019年のビジョンは、ITである。ここいでいうITとは、Information Technologyではなく、INTELLIGENT TRANSFORMATIONである」した。

 また、「ThinkPadは27年間に渡って進化を続けてきている。さらに進化した機能を搭載した製品を、今年春にローンチする。オールウェイズコネクテッドにより、どこでも、いつでも仕事ができる製品を提供でき、働き方改革のベストパートナーになる製品だ。

 また、昨年(2018年)から発売しているThinkSmartにおいても、今年初めに新たな製品を投入する。そして、レノボでは、ポケットに入るようなエッジのデバイスから、ハイパースケールの製品までサポートする。

 さらに、今年の一番大きなテーマとして、PC、ソフトウェア、サービスをサブスクリプションモデルで提供するDaaSや、クラウドのリソースを必要なだけ提供するHaaSがある。新たなビジネスでもパートナーとの協業を進化させたい」とした。

レノボ・ジャパン 執行役員副社長の安田稔氏
レノボ・ジャパンのプレゼン資料

共創で顔認証の普及を目指すNEC

 NECの橋谷直樹執行役員は、「昨年は、PCの品不足ではご迷惑をおかけした」と陳謝。「今年もこうした状態が続くが、協力をお願いしたい」と切り出した。

 続けて、「パートナーの製品と、NECが持つ世界ナンバーワンのスピードを持つ認証技術やAIとの組み合わせで、共創をしてきた経緯がある。新技術の取り込み、顧客ニーズの深堀、販売機会の拡大という3つの価値を提供し、出退勤管理、セキュリティゲート、イベント入場管理、24時間宅配ロッカーなどが、パートナーとの共創ソリューションとして生まれている。共創によって、顔認証をもっと身近にしたい。顔で予約ができたり、決済もできたりするようになる。割引サービスもきめ細かくできるようになる」などとした。

NEC 執行役員の橋谷直樹氏
NECのプレゼン資料

2019年の企業向けPC販売は2018年比150%以上になる?

 公開質問では、4つの質問が用意された。これに対して、9社のPCメーカーの代表は、○と×の札で回答するというものだ。

 最初の質問は、練習の意味も込めて、「今日のプレゼンはうまくいったか」という質問。これには6人が○と回答。3人が×とした。

 2つめの質問は、PCメーカーを対象にしたもので、「2019年の企業向けPC販売は、前年比150%以上の伸びを見込んでいる」との質問。これに対しては5社のPCメーカーが○と回答。2社が×と回答した。

 ○をあげた日本マイクロソフトの金古執行役員は、「ちょうど150%ぐらいを見込んでいた」とコメント。それにあわせるように、日本HPの九嶋専務執行役員は、「私たちも同じぐらいを見込んでいる」、Dynabookの覚道社長兼CEOも「同様の数字」とそれぞれ回答。

 富士通の櫛田執行役員常務は、「具体的な数字はないが、もっと強い需要があるのではないか」と予測。VAIOの松山取締役執行役員常務は、「150%はやらなくてはならない数字である」と述べた。

 これに対して、×をあげたレノボ・ジャパンの安田副社長は、「2018年度が非常に高い成長を遂げている。伸びるとは期待しているが、そこからさらに150%となると厳しい」とコメント。同じく×をあげたNECの橋谷執行役員は、「消費増税もあり、この年度末の駆け込み需要が見込まれる。来年度になるとその伸びは厳しいのではないか」と述べた。

 3問目の質問は、「2019年10~12月には、Windows 10搭載PCへの買い換えは前年比でどれぐらいになるか」という質問。

 「前年比80%以下」、「前年比80~100%」、「前年比100%以上」という3つから選ぶというものだったが、全員が「前年比100%以上」と回答した。

 日本マイクロソフトの金古執行役員は、「Windows 7のサポート終了に関する認知度が、中小企業で遅れており、まだ63%しか認知されていない。また、今日の各社のプレゼンを聞いて、各社から素晴らしいデバイスが登場することもわかった。100%はいくだろう」とした。

 最後の質問は、恒例となっている「JCSSA会員会社への支援策を昨年よりも増やすという人は○」というもの。これもお約束通り、全員が○の札をあげた。

公開質問を行なったJCSSAセミナー委員会の木村和広委員長
公開質問に答えるハードメーカー9社の幹部。○と×の札をあげて回答した。最後の質問は全員が○をあげた

 なお、新春セミナーでは、富士通 理事 首席エバンジェリスト兼エバンジェリスト推進室長の中山五輪男氏による「AI時代に考えなければならない企業経営とは~AI、IoT、ロボット時代のビジネス展望~」と題した講演が行なわれた。新春セミナー終了後には、新年賀詞交歓会が行なわれ、197社約660人の業界関係者が参加した。

 新年賀詞交歓会で挨拶に立ったJCSSAの大塚裕司会長(大塚商会社長)は、2019年6月に、任期半ばではあるが、同協会の会長を辞任することを発表。

 新会長に、現在副会長を務めている林宗治氏(=ソフトクリエイトホールディングス代表取締役社長)が就くことを明らかにした。2019年6月に開催される総会で正式決定する。

JCSSAの大塚裕司会長(右)は、会長を辞任することを発表。新会長に就任予定の林宗治副会長(左)を紹介した