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東芝クライアントソリューションが「Dynabook株式会社」に社名変更
2018年12月3日 15:30
東芝クライアントソリューション株式会社が、2019年1月1日付けで、「Dynabook株式会社」に社名を変更するとともに、3年後に上場する方針を発表した。2019年度には黒字転換し、2020年度には、売上高3,400億円、営業利益70億円を目指す。
シャープ 取締役副社長執行役員兼東芝クライアントソリューション代表取締役会長の石田佳久氏は、「dynabook as a Computingとdynabook as a Serviceにより、人に寄り添う、社会を支える真のコンピューティングと、新しい付加価値・サービスを創出する」と発言。
また、東芝クライアントソリューション 代表取締役社長兼CEOの覚道清文氏は、「絞り込んできた製品ラインナップを拡充する。海外事業にも再び力を注ぎ、2020年度には海外売上高比率を42%にまで引き上げる」と述べ、「事業体質の強靭化をはたし、国内、海外で高い成長を利益持続事業への転身を図る」とした。
2018年10月1日付けで、シャープが同社の80.1%の株式を取得し、子会社化しており、シャープ傘下入りしてから、初の方針説明となった。
dynabookのブランド価値をグローバルで高める
2018年度見通しは、売上高が1,600億円、営業利益は上期のマイナスが残り、通期では46億円の赤字となるが、「2018年10月からの下期は、黒字になる計画」(覚道社長兼CEO)という。また、2019年度には売上高2,400億円、営業利益20億円と黒字展開を計画。ROSでは1%を計画。2020年度には売上高3,400億円、営業利益70億円、ROS2%を目指す。また、現在、2,400人の従業員数については、拡大する考えも示した。
石田会長は、「シャープは、『8KとAIoTで、世界を変える』ことを事業ビジョンに掲げている。Dynabook株式会社は、『コンピューティングとサービスを通じて、世界を変える』というビジョンのもとで事業活動を進めていくことになる」と前置きし、「これまでは事業の縮小均衡というなかで、国内を対象にしたハードウェアを中心としたBtoB事業を展開している。しかし、シャープの8KとAIoTの技術を融合させて、さらにコンピューティングとサービスを掛け合わせることで、より快適な社会と生活を実現することで事業を成長させ、ブランド価値を極大化させる」と抱負を述べた。
また、東芝クライアントソリューション 代表取締役社長兼CEOの覚道清文氏は、「2018年10月以降、シャープの関係部門とも議論し、会社の方針、ターゲットがこのほどまとまった」と、今回の中期経営計画発表にいたる経緯を説明し、「シャープのグループ会社として、シャープの経営インフラを使いながら、グループ全体の業績に貢献すること、ブランド価値を追求することに取り組む」と発言。
「バリューチェーンによる一貫提供ができる強み、自社開発の技術の強み、高品質を実現するという強みがある一方で、構造改革の影響もあり、ラインナップの弱さ、販売基盤や規模の弱さがあり、これにも伴うコスト力の低下のほか、しばらくリソースを投入してこなかったことによる経営インフラや人員体制の弱みがある。
ハードウェアとサービスを融合し、新たな価値を提供することを目指し、商品力の強化、事業領域の拡大、ソフトウェアの強化、解析技術を中心としたAIの活用や、シャープのAIoTとの連携を進めたい。そして、現在は日本への依存度が高いが、シャープの拠点やインフラの有効活用により、再び、グローバル展開を進める。さらには、フロントでの人的リソースの充実や経営効率の強化を進める」とした。
東芝は、1985年に世界初のラップトップPCを欧州で発売。1989年には、米国のコンピュータ科学者であるアラン・ケイ氏が提唱した「パーソナルコンピュータは人に寄り添い、人を支える真のパーソナルコンピュータであるべき」というダイナブックビジョンにちなんで、世界初のノートPCブランドとして、dynabookを採用した経緯がある。「それ以来、数多くの世界初や世界一を投入し、さまざまな技術資産が蓄積されている。シャープのAIoTとの組み合わせで、PCの枠を超えたコンピューティングを提供したい」とも語った。
「新たな会社で、dynabookのブランド価値を高めていきたい。東芝のノートPCの歴史を辿り、議論をした結果、dynabookという言葉をもう一度前面に出したいと考えた。dynabookは、ハードウェアに対する期待を込められた言葉であったが、時代とともに、環境、技術が進化し、そうした流れにあわせて、dynabookという言葉も進化させたいと考えている。dynabookの単語に込められた意味や、言葉自体の進化を、アラン・ケイ氏も望んでいるのではないか」(石田会長)。
今後の製品展開については、ノートPCが中心となっている現在の状況から、デスクトップPC、ワークステーション、サーバー、エッジデバイスに領域を拡大。「多様化するIT環境にプラットフォームとして展開していく」とした。
また、サービスについても、積極的に拡大させる姿勢を示し、これまでの東芝PC事業で展開してきたソフトウェアをベースに強化。業態、場所、シーンに応じたサービスメニューを用意するという。
シャープとはスマートフォンやスマート家電との連携を図るほか、オフィスソリューションとの連携、AIoTプラットフォームであるCOCORO+との連携、データセンターサービスの利活用を考えているという。
「当社には、長年にわたり、BIOSを関わってきた実績がある。これを活かし、業態に応じたセキュリティを提供したり、音声認識や画像認識、物体認識技術を持つ強みを活かして、ここに、シャープの8K、5G、センサー・光学技術を組み合わせて、新たなサービスを提供することになる」(覚道社長兼CEO)とした。
石田会長は、「PC以外の戦略において、まだ具体的な商品がまだ見えているわけではない。だが、PCは大きなプラットフォームであり、オープンなサービスを取り込むことで、新たなAIoTに関連したものがあるサービスをつくることもできる。PCがあれば、その上で新たなビジネスを展開できるサービスの可能性が広がってくる。そうしたものをいち早く取り込んでいく。商品全体の付加価値を高めていく」と述べた。
生産については、dynabook株式会社が持つ中国・杭州の生産拠点を使用するが、「今後は、ビジネスを拡大させていくことを目指している。鴻海グループの力を活用することを含めて、幅広く検討をしている」としたほか、調達については、「鴻海は世界最大級のEMSであり、部材の調達などでは、すでに協力を得ている」と語った。
時系列での製品展開についても説明。2019年から2020年にかけては、ハードウェアの強化とラインナップの拡大のほか、欧米、アジアへの再展開を見越した「プレミアム機」や「アジア攻略機」をノートPCカテゴリに用意。ソフトウェアサービスでは、COCORO+との連携や、PC暗号化ツールであるSmart DEおよびdynaCloudの充実、運用一括請負をするライフサイクルマネジメントサービスの強化と推進。さらに海外展開を進めるという。
2021年からは、次世代技術の取り込みとして、イマーシブコンピューティングやオールウェイズコネクトなどの技術を活用するほか、センシングと解析を活用した故障予兆サービス、8Kの高精細画像解析技術をベースとした警備監視システムを強化する。
今後5年~10年後に向けては、ハードウェアをベースとするコンピューティングとサービスを融合。5Gによって実現するクラウドとエッジによる分散処理や、シームスなデータ連携により、時間と場所の制約から解放するゼロクライアントや、遠隔医療、遠隔操作といった領域でのサービスを強化するという。ここでは、ホームやオフィスにとらわれず、工場、流通、小売りといった現場で利用される製品、サービスを提供する考えを示した。
「商品企画、開発・設計、調達、生産・製造、販売サービスの事業バリューチェーン全体で、シャープのインフラを活用した協業を進め、事業成長と効率化、構造改革を進める。シャープ流の管理手法の導入による経営管理体質の強化、人事制度の改変、IT統合による運営コストの大幅な削減を進める」と述べた。
海外展開については、「ここ数年間は、構造改革の影響もあって、海外ビジネスのダウンサイジングが続いてきたが、商品の充実、シャープグループとの連携、リソースの再投入によって、欧米市場での再強化、アジア市場での展開を進める。とくにアジアでは、主要国におけるシャープの基盤を活かして伸ばしていく」とした。
北米では、2020年までの年平均成長率を131%増の目標を掲げ、欧州では同93%増、日本では同27%増を目指す。これにより、現在、22%の海外売上げ比率を42%にまで高める。
「北米、欧州では、複合機やPOSビジネスを行なうシャープのビジネスソリューションビジネスとも融合して、PCの販売を伸ばすことができる」(石田会長)とする一方、「海外PCビジネスは、BtoBを中心にやっていく。海外のPCビジネスは厳しいビジネスである。売上げが増えても利益が増えないというものであり、勝算がなく突っ込んでいくことは考えていない。レノボと真っ向から戦うつもりはない」とも述べた。
社名をDynabook株式会社(英文名はDynabook Inc.)にしたことについては、「シャープが80.1%の株式を取得し、事業を継続する上で、東芝という名前を残すことには違和感がある。また、シャープというブランドを使うよりは、独立性を高めていくことを優先している」と石田会長はコメント。
「日本ではdynabookブランドが浸透しているが、海外では、これまでdynabookブランドで提供してこなかったために、ブランドが浸透していないのは確かである。今後は、グローバルブランドとしての価値を高めたい。そのためには、投資も必要になるだろうし、マーケティングも強化する必要がある。一部の国では権利処理がされていないが、ビジネスを展開するなかで、大きく問題になることはない。新たなブランドで、やりきる覚悟でいる」と語った。
Mebiusの復活を期待する質問も出たが、「商品のニックネームとしてはあるかもしれないが、会社名も、商品名もdynabookであり、それを前面に押していきたい」と述べた。
また、上場する狙いについては、「上場が目的ではなく、上場に耐えられるだけの企業価値を創出したいということである」(石田会長)と回答した。