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シャープ、東芝のPC事業は独立を維持。将来的には上場目指す

戴会長兼社長

 シャープは、東芝のPC事業買収について説明し、「東芝クライアントソリューションは、独立性を維持し、将来的にはIPO(上場)の可能性がある」などとした。

 2018年6月20日に、大阪府堺市の同社本社で株主総会を開催。その後、株主を対象に行った経営説明会、記者を対象にした共同インタビューなどで、戴正呉会長兼社長をはじめとする同社経営幹部が、東芝クライアントソリューションの買収の狙いなどについて説明した。

 戴会長兼社長は、「AIoTなどに関する新たな人材を獲得したい。急いで募集しないといけないと考えている。東芝クライアントソリューションを買収したのも、ITやAIoTへの取り組みの観点からである」としたほか、「東芝クライアントソリューションは、独立性を維持し、将来的にはIPO(上場)の可能性がある」とし、組織体としては独立した体制とする考えを示した。

 また、経営説明会では、橋本仁宏常務執行役員が、東芝クライアントソリューションの買収の狙いを説明。「シャープは、AIoTを通じて、スマートホームの実現を目指しており、AIoT機器の拡充、AIoTサービスの拡充、AIoTプラットフォームの提供に取り組み、ハードからより広い領域に向かって事業を進めていくことになる。東芝クライアントソリューションの買収も、その流れのなかにあるものだ」と位置づけ、「買収の最大の狙いはビジネスモデルの変革を加速したいということである。400人強の技術者の確保、新たなビジネスの創出につなげたい。さらに、グローバルでの事業の拡大、利益の創出にもつなげたいと考えている」と述べた。

 株主に対する説明のなかで、東芝クライアントソリューションの買収の狙いとして、「ビジネスモデルの変革を加速」、「グローバル事業拡大」、「利益の創出」という3点をあげ、今回の買収が、2019年度最終年度とする中期経営計画の完遂に向けて重要な役割を果たすとの考えを示した。

 「ビジネスモデルの変革を加速」では、8Kエコシステムと人に寄り添うIoTの実現に向けたIT人材の確保のほか、8Kや5G、AIoTなどの最先端技術と、東芝クライアントソリューションのIT技術との融合を図り、新たなビジネスを創出するという。

 「グローバル事業拡大」では、東芝クライアントソリューションの商材および営業ノウハウを生かし、シャープのBtoB事業におけるソリューション営業力の強化や、東芝クライアントソリューションの商材とシャープの独自デバイスとの融合による特徴のある商材の創出によるカテゴリーやラインアップの拡大、東芝クライアントソリューションが持つ国内外の販路や顧客を通じたシャープのBtoB商材の拡販を目指す。

 また、「利益の創出」では、間接業務や拠点の統合、営業やアフターサービスなどの統合、効率化といったリソースの統合を図る一方、シャープの経営管理や構造改革ノウハウを活用して、東芝クライアントソリューションの経営体質を改善。さらに、生産、調達、ITコストをはじめとした費用の見直しも図る。

 シャープの石田佳久取締役は、「シャープは、一度、PC事業から撤退している。再参入のためにゼロからはじめると大変だが、東芝は、PC事業をグローバルで展開しており、かつてに比べると規模は相当小さくなっているが、堅実にビジネスをしている。また、シャープでは、AIoTを推進しており、ソフトウェアプラットフォームやサービス、白物からスマートフォン、テレビといったハードウェアを資産として持っている。これにPCを加えることで、もっと広がりを持たせたいと考えている」と述べた。

 加えて、「東芝クライアントソリューションには、約400人のエンジニアがいる。ここには、シャープにはなかったオープンプラットフォームのノウハウが蓄積されている。これを足すことでさらにシナジー効果をあげたい。また、シャープが持つセンシング、カメラモジュール、液晶をうまく活用すれば、もっとユニークな商品を展開できると考えている。リスクはゼロではないが、一緒になることでさらに発展していける」と語った。

シャープ本社があるグリーンフロント堺

 「東芝クライアントソリューションは、2017年度実績で1,600億円強の売上げがある。買収することで、経済的な効果がある。また、ノートPCで多くの実績があり、それを製造する拠点も持っている。コストダウンや物流、サービスを含めて効果が出てくるだろう。また、BtoB向けには、保守を含めたアフターサービスを提供しており、中古PCの買い取りも行っている。これも収益源になる。これらのサービスは、今後も継続していきたいと考えている」と述べた。

 「IoTのプラットフォームは誰でもつくることができる。だが、これがデファクトスタンダードになるか、広く使われるかどうかは別である。AmazonやGoogleのように、すべての顧客データを自分のサーバーに持ってきて、それを分析することで顧客の行動を理解し、それを利用してビジネスにつなげるといったことを行なっている。総務省や経済産業省では懇談会を開催し、日本のIoTをどうするかといった議論を行なっており、そこでは、日本の企業がプラットフォーマーになれるのかという話が出ている」。

 「シャープは、AIoTのプラットフォームを構築し、シャープのクラウドサービスを持ち、それを利用してさまざまなサービスを展開している。だが、それだけでは顧客は満足しないし、マネタイズもできない。しかし、ここにさまざまな商品を組み合わせることや、自分たちだけでなく他社との協業によって、プラットフォームの可能性を広げることが大切である。私もPC事業を経験していたのでよくわかっているが、PC事業は他社との協業が多い分野である。他社とつきあいながら、ときには買収やジョイントベンチャーをつくりながら、自分たちの輪を広げていかないと、デファクトスタンダードができあがってこない。シャープの弱みの1つは、ビジネスデベロップである。東芝のPC事業は、これを行えるものがある。うまく利用しなから、輪を広げていきたい」とも述べた。

 東芝クライアントソリューションの買収は、シャープがグローバルで推進するブランド戦略においても重要に役割を果たすことになりそうだ。

 戴会長兼社長は、「シャープは液晶の会社といわれるが、私はそうは思わない。私のビジョンは、シャープは、ブランドの会社になるということ。液晶の会社ではない。8KエコシステムとAIoTが、ブランドを支えることになる。そして、液晶とIoTエレクトロデバイスは、ブランドを支える武器になる」と語った。

 グローバルで高いブランド力を持つdynabookを活用することで、シャープのブランド力を高めることができる。

 また、シャープでは、海外売上げ比率を8割以上に高める計画を打ち出しており、グローバルでの事業拡大を目指しており、それを推進する役割を担うことになる。

 「OEMやODMのビジネスでは、顧客の戦略から受ける影響が大きい。安定成長をするには、ブランド力が大切である。シャープのブランドは、50年以上やってきたものである。私が、2年間、シャープの経営をやってわかったのは、シャープには、ブランド力があるということだ。いまの商品だけでなく、新規事業や新製品は、シャープブランドでやっていく。そして、サービスやプラットフォームなどもシャープブランドで考えていきたい」と述べた。

 なお、戴会長兼社長は、過去2年にわたるシャープの経営再建について、自己採点で60点と評価。「まだ、新規事業が少なく、スピードが足りない。製造メーカーの考え方から、サービスやプラットフォームの考え方へとチェンジすることが大切であり、その転換にがんばりたい」と語った。

株主総会会場にシャープ本社に入る株主たち