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Qualcomm、レイテンシ削減でゲームにも対応できる無線オーディオコーデック「aptX Adaptive」

aptX Adaptiveの特徴

 Qualcomm Technologies Internationalは3日(日本時間)、東京・都内でオーディオコーデック「aptX Adaptive」に関する記者向け説明会を開催した。説明会では、同社 Director, Product MarketingのJonny McClintock氏が解説にあたった。

 僚誌のAV Watchですでにお伝えしているとおり(記事:新Bluetooth音声コーデック「aptX Adaptive」。動的レート制御で音質と接続性向上)、aptX Adaptiveは8月末に発表された新しいオーディオコーデック。既存のaptXとaptX HDの後方互換性を維持しつつ、aptX Low Latencyを置き換えるものとなる。

 McClintock氏はQualcommに買収される前の英CSR時代からaptXの開発に携わっており、すでに25年経つ。aptXというとコンシューマBluetoothヘッドセット向けのオーディオコーデックというイメージがあるが、じつは古くから存在するコーデックで、放送業界などにも用いられてきた。実際、日本のNHKもaptXを採用した実績があるほか、長野オリンピックのさいも活用されたという。今回のaptX Adaptiveは10年に渡る研究成果である。

Jonny McClintock氏

 これまでaptXは3つのポートフォリオがあった。1つ目は最もスタンダードな「aptX」。16bit/44.1kHzのオーディオを転送できる、もっともスタンダードなコーデックである。2つ目は「aptX HD」で、CD以上の品質を実現するハイレゾオーディオ向けに開発された。そして3つ目がaptX Low Latencyで、遅延を抑えることでゲーミングやビデオ視聴にも向くものだ。

 aptX Adaptiveは、このうちのaptXとaptX HDの後方互換、aptX Low Latencyの置き換えという位置づけで開発された。よって開発目標はシンプルにすべてを包括するものとなっており、1つ目が有線と同様に使える手軽さと切断しにくい信頼性、2つ目がCDおよびハイレゾをサポートする高音質、3つ目がゲームやビデオ視聴を可能にする低遅延である。

aptXの動向
aptXのポートフォリオ
aptiX HD対応端末
aptXの開発目標は3つ

 aptX Adaptiveが開発された背景の1つには、スマートフォンが3.5mmミニジャックを省略しているトレンドがあるとしている。昨今、スマートフォンに求められるのは薄型/狭額縁/軽量/大容量バッテリであり、3.5mmステレオミニジャックの削除はこれらに大きく寄与できる。とは言え、音声出力も必要であるため、Bluetoothによる接続がメインとなりつつある。よって、有線に比肩する手軽さと信頼性が求められている。

 2つ目にはスマートフォンにおけるコンテンツのハイレゾ化、およびビデオなどのマルチメディア視聴の普及による。ハイレゾ音楽配信サービスはもちろんのこと、スマートフォンで映画・動画を観たりするのは当たり前なので、ハイレゾ対応や低遅延化への対応は必然的だ。

 3つ目はスマートフォン向けゲームの普及であり、米国国内の調査によれば、2020年にはスマートフォンのカジュアルゲーマーが77%に及ぶという。ここにも低遅延化のニーズがあるといえる。

 市場にはさまざまなオーディオコーデックが存在するが、基本的に音楽を前提としたものがほとんどで、こと低遅延も含めるとなると、ニーズを満たせるものはほとんど存在しない。aptX Adaptiveはこれらのニーズを満たせるのが特徴だ。

ユーザーが求ている市場環境
現在の市場環境

 とくに音質について、同氏は高い自信を持っており、サルフォード大学で行なわれた実験では、30人の被験者が200以上のサンプルを視聴した結果、aptX Adaptiveの420kbpsと24bit/96kHzのリニアオーディオの差異を認識できないとした。

 ちなみにaptX Adaptiveのビットレートは279kbps~420kbpsのあいだで可変であり、コーデックとしての遅延は48kHz時で2ms以内。システムに組み込んだ場合、全体で50~80ms程度の遅延になるといい、ビデオや映画の場合、遅延は2フレーム程度に抑えられるとしている。音声ファイルのヘッダーを解析し、最適な転送モードを自動で選択する。

 現時点では、Android端末に組み込んだ場合、Snapdragonを採用したプラットフォームであれば遅延は70ms以下、Android PのAOSPの場合80~100ms程度になる。対応チップセットとしてはQCC5100シリーズが挙げられ、ADKバージョン6.3でサポート済み。対応のヘッドセットなどは2019年中にリリースされる予定としている。

aptX Adaptiveはブラインドテストを含む大学の実験で、24bit/96kHzのリニアオーディオと差がなかったのだという
ビットレートは279~420kbps、レイテンシは60~80msをターゲットとしている
ゲームやビデオ視聴には低遅延が求められている
aptX Adaptiveの遅延