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Smartisan、Snapdragon 710搭載で2万円台のスマホ「堅果 Pro 2S」

~2018年末には独自OSの開発へ

堅果 Pro 2S

 中国Smartisanは20日(中国時間)、Snapdragon 710を搭載したミドルレンジ向けスマートフォン「堅果 Pro 2S」を発表した。中国での価格は、メモリ4GB+ストレージ64GBモデルが1,798人民元(約29,000円)、6GB+64GBモデルが1,998人民元(約32,500円)、6GB+128GBモデルが2,298人民元(約37,000円)。

 同社は2017年11月に「堅果 Pro 2」を投入。マイナーチェンジを施す“0.5世代”は作らないスタンスであったが、堅果 Pro 2が好評だったため投入を踏み切った。

 堅果 Pro 2は製品発表時、メモリ4GB+ストレージ32GBモデルで1,799人民元だったが、今回はSoC強化/ストレージ倍増に加え、さまざまなアップデートや改善を施しながら1元安いという“友達づくりの価格”になっている。

 ハードウェア的には、Snapdragon 660から710への変更がもっとも大きなトピックで、CPU、GPU、AI性能の向上が謳われている。また、ディスプレイは5.99型液晶パネルから6.01型OLEDとなり、省電力化を図るとともに、コントラスト比は10万:1、P3色域カバー率は100%となった。

 USB Type-Cからディスプレイが可能な「Qualcomm TV-OUT」もサポートし、遅延を14msに抑えることで、TVなどに繋いで大画面でゲームプレイできるのもウリ。将来的なアップデートにより、外部ディスプレイと接続してデスクトップ環境で利用できる「TNT」も対応する。

 カメラはソニーIMX386からIMX363となり、1.4μmの画素サイズやDual PDへの対応を謳う。AIによるシーン識別で写真を最適化する機能も備える。第三者機関のDxOMARK MOBILEでの評価は95点で、同価格帯ではトップクラスの画質となっている。

SoCの性能は660から向上
TVに接続してゲームをプレイできる
OLEDディスプレイに変更

効率的なメッセンジャーソフト「子弾短信」を統合

 Smartisanのスマートフォンは従来よりソフトウェアに注力しているが、堅果 Pro 2Sでは「Smartisan OS 6.6.5」の搭載により、いくつかの新機能の搭載および改善が図られた。

 1つ目は、TNT Station発表時にデモした「子弾短信」のスマートフォン版のプリインストール。マイクのアイコンを長押ししながら送信したい内容を喋れば、自動的に文字認識入力され、音声ファイルとともに送信する。

 一般的なメッセンジャーアプリは、チャットする人を選んでその人とのチャット画面に遷移するが、子弾短信ではリスト画面でもマイクによる文字認識入力ボタンが用意されており、リストからすぐに返信できるのが特徴。

 また、ハンドルネームと実名を結びつけ、かならず実名で表示する機能や、相手のプロフィール画像を履歴として残して自由に選択することで紛らわしさを解消する機能、3カ月以上連絡してない人を自動的に隠す機能、久しぶりの連絡で名前や顔を覚えていない場合でも、最初のやり取りをすぐに振り返る機能も搭載する。

 なお、子弾短信は一般的なAndroidスマートフォンやiOS端末でも利用可能。連絡先から電話帳をインポートするさいに、SMSしか送れない相手にに対しては、子弾短信のサービスに保存されたメッセージへのURLが送られる仕組みとなっている。

 音声によるアイディアをテキスト化してまとめておく「Idea Pills」との統合も図られており、堅果 Pro 2Sの左側面にあるIdea Pillsボタンを長押しして音声入力し、ボタンを離した瞬間に連絡先一覧を提示、ワンタップで入力したメッセージを送信する機能も搭載する。

リストからマイクのアイコンですぐに音声入力してメッセージ送信できる
相手がアイコンを変更しても履歴を保存するため、わかりやすいアイコンを維持できる

ジャイロなどを駆使した革新的なタスク切り替え

 2つ目は、ジャイロや顔認識などを利用した革新的なタスク切り換え。同社CEOの羅永浩は過去のスマートフォンを振り返り、3.5型のiPhoneから始まったスマートフォンは、大型化の一途をたどって7型まで進化したこともあったが、6型前後に落ち着いており、「これが現実的なサイズ」としながらも、画面の大きさと操作のしやすさはトレードオフの関係にあると述べた。

スマートフォンの画面サイズの遷移

 その一方で、スマートフォン業界全体としては、ベゼルを極力狭め、大画面と持ちやすさの両立を図ろうとしているものの、「これは無意味な競争だ」と一蹴。「ソフトウェアから小型画面の使いにくさを解消しなければ意味はない」とし、「まさか今日まで誰も作らず、われわれが作ることになるとは思いもしなかった」と述べ、「無限屏(Infinity Screen)」の機能を紹介した。

 あり体に言えば、無限屏は仮想デスクトップとジャイロを組み合わせたもので、VR空間で使うデスクトップのような機能だ。画面底面から指をスワイプインしてホールドすると、アプリ一覧が表示され、ジャイロによって上下左右に動くようになる。画面の方向を切り替えたいアプリまで移動し、指を離せば切り替えが完了する。

無限屏のイメージ。広大な仮想デスクトップのなかを、スマートフォン本体を移動させてコンテンツを探すイメージだ

 この仮想デスクトップではアプリの切り替えに加え、上段にはアプリのアイコンがあり、アイコンを画面の真ん中に持ってくるようにして指を離せばアプリが起動。一番上はセルフィーカメラの起動で、これは斜め上から自分を撮影することの多い女性向けの機能。一番下は地球となっているのだが、こちらは中国でもっともシェアが高いマップアプリ「高徳地図」の起動となっている。

 高徳地図でも無限屏をサポートしており、下部の無限屏アイコンを押しながらジャイロで地図をスクロールできるため、ズームイン/ズームアウト操作が大幅に減る。付属のWebブラウザでは、タブの切り替えが行なえるため、複数サイトでの価格比較も容易。子弾短信では、チャットするユーザーをすぐに切り替えられる。ファイルマネージャーでは、ファイルをドラッグしたまま無限屏ボタンを押せば、本体の移動でほかのフォルダに移動でき、コピー&ペーストを大幅に省力化できる。

 また、写真ギャラリーも無限屏をサポートしているため、横に長いパノラマ写真や設計図など容易に閲覧可能。発表会のデモでは、中国の有名な超横長の画巻「清明上河図」を利用し、世界で初めて最新のテクノロジーで“正しく”表示できるデバイスとしてアピールされた。

 同機能は本日よりベータ版が堅果 Pro 2S向けに提供され、フラグシップの「堅果 R1」では27日よりベータ版が利用可能になる予定。

 なお、同社は5月に発表した堅果 R1で、27型4Kタッチ液晶搭載ドッキングステーション「TNT Station」で、タッチと音声入力を併用した画期的なデスクトップ環境を発表していたが、開発は遅れており、当初予定していた8月の投入は延期された。ただ、デスクトップの機能は9月のベータ版にて実装する予定で、安価なサードパーティー製ディスプレイと接続しても利用できるという。

 本格的なタッチ&音声入力機能は、現在バグが多いため、クローズドベータに留まっているというが、「タッチつきディスプレイであれば利用できるため、高価なTNT Stationを利用しなくても使える。われわれのTNT Stationが高いのは、数量を限定しているためで、部品単価が高いため」と明らかにした。

 2018年末には、同社の独自機能をよりスムーズかつシームレスに動作/実装させるために、「Androidを切り捨て、まったく新しい独自開発のコアを採用したOSの製品の投入を予定している」のだとした。

 ちなみに同社の発表会は有料チケット制で、一般ユーザーも参加できる。過去に開催した発表会では、100万人民元以上の収入があり、チケットで得られた収入のすべてをOpenSSLおよびOpenBSDコミュニティに寄付していたのだが、今回の発表会はわずか半数の493,300人民元(約8,000万円)しか集まらなかった。羅CEOは「この数カ月間、自ら投資で高い利益を得られたので、それらのお金を含めて100万人民元を、これらのコミュニティに寄付する」と述べた。

羅永浩CEO自らの資金をOpenSSL/OpenBSDコミュニティに寄付