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レノボ傘下になった富士通PC部門、量にこだわらず人に寄り添うモノづくりを宣言
2018年5月16日 13:17
富士通クライアントコンピューティング株式会社(以下:FCCL)は16日、都内で記者会見を開催。このなかで齋藤邦彰社長は、本日を「DAY 1」とし、「人に寄り添う製品」の開発に注力する姿勢を宣言した。
冒頭で齋藤社長は、「富士通は1981年にFM-8を投入して以来、製品の企画、開発、設計、製造、そして販売とサポートまで、一貫した体制を敷いており、高いレベルでお客様に対応してきた。他社が開発や製造を中国や台湾といった海外に拠点を移しているなか、われわれはお客様に満足できるモノを提供し、川崎開発、出雲/福島製造という“日本のモノづくり”を世界に発信している。これはレノボとの合弁のあとも変わることはない」と約束した。
その一方で、世界トップレベルのPC出荷数を誇るレノボとの提携により、最大のバックエンドを得ることができたとし、“ボリュームを追求しなくても良くなった”とする。これにより、富士通が持つ、お客様に寄り添った製品開発という強みを最大限に発揮できるようになったという。
これが冒頭で述べた「人に寄り添う製品」の実現に向けた第一歩であるとし、「もっとお客様に寄り添うために変わっていく。お客様のためになにができるか、全従業員が一丸となって考え突き進む。数年後に、本日を境目にFCCLは変わっていったなぁと実感していただける体制にしていきたい」と語った。
「人に寄り添う製品」の具体例として、齋藤社長はまず保険セールス向けのタブレット端末と、小学生で使われるタブレット端末を紹介。保険セールス向けのタブレットは、機動性の高い筐体、素早い起動、バッテリの交換が可能といった特徴を持つ。一方でおもに小学生用の教育タブレットでは、とにかく堅牢性を最優先させなければならない。
「これは富士通が実際に現場に趣、コンピュータの使い方を観察したり、現場の声を吸い上げ製品に反映させたりした結果」であるとし、「こうした愚直な製品づくりの結果、セールスタブレットや教育タブレットでシェアNo.1を維持できた」とアピール。そしてこの愚直さこそが、人に寄り添う製品を生み出せる原動力であるとした。
コンシューマ向けでも、同社のPCにプリインストールされている「ふくまろ」のような、AIアシスタントの進化が欠かせないとした。現時点ではユーザーのお手伝いをするだけだが、AIエンジンを強化させ、将来的には人の感情や表情を読み取り、それにあった情報を提供したり、ユーザーが知らない情報、意識していない情報を提示し、“家族の一員”として人に寄り添えるように進化させていくとした。
もっとも、こうしたAI処理は必要とする演算能力が高いため、いま現在ではおもにクラウド側で処理されている。しかし、セキュリティの問題などから、そうした処理をクラウドで行なわないことを望むシーンもある。このニーズに応えていくのが、現在開発中のAI処理端末「Infini-Brain」であるとし、そのプロトタイプを初披露した。
Infini-Brainの詳細については明らかにされていなかったが、ステージ上で展示されたものは50cm四方程度のものであった。齋藤社長は「このなかに現在の高性能ワークステーション10台分ぐらいの処理能力が入っており、人間の動きや表情などを画像から判断してリアルタイムに処理できる。ただ、性能も重要だが、異なるAI処理を低消費電力で実行することも大切だ」と説明し、性能と処理の並列性、そして低消費電力性を重視したコンピュータであることがわかる。
Infini-Brainは、現時点ではプロトタイプだが、“DAY 1,000”、つまりいまから3年目に入るまでには販売していきたいとした。用途としては、たとえば1人の先生が複数の生徒の表情や感情を読み取るのに役に立てたり、介護が必要な人が家族内にいる場合、感情といった情報を読み取り、家族にアドバイスするといった用途に使えるだろうとした。
齋藤社長は「日本政府はいま“Society 5.0”を推進している。これは製造業が中心ではなく、地域や年齢、人種を乗り越え、人を中心とした社会づくりである。われわれは個人にもっとも近いフロントエンドを手がけており、人に寄り添う製品の開発は、Society 5.0の推進に大きく貢献できるものと確信している」と語った。