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没入できるのはHMDだけではない。デルの液タブ「Canvas」がもたらす集中力の途切れない作業環境

~Microsoftちょまど氏、アドビ担当者らが実演

デル「Canvas」

 米Dellが同社初のワークステーション「Precision」シリーズを投入して今年(2017年)で20年になるのを記念したプレス向けイベントが開催された。同イベントでは、これまでの歴史を振り返ったほか、ワークステーション向け周辺機器として位置づけられる27型液晶タブレット「Canvas」について、Microsoftテクニカルエバンジェリストの"ちょまど"こと千代田まどか氏と、アドビの古田正剛氏が、同製品がもたらす新しい作業環境について実演と説明を行なった。

 Dell初のワークステーションは、1997年発売のPrecision 400。Intel 440FXチップセットを採用し、カートリッジ型のPentium IIをデュアルプロセッサで搭載していた。以降、モバイルワークステーションや、デュアルコアワークステーション、VR Readyワークステーションなどを業界に先駆けて投入してきた。

Precisionシリーズ20年の軌跡

 現在では、デスクトップ、モバイル、そして液晶一体型など、幅広いラインナップをそろえる。なかでも同社が一押しするのが、ノートPCのPrecision 7720。同製品は、デュアルファンにより4コアXeonの搭載を可能とし、メモリについても2,667MHzへのオーバークロックを実現するなど、デスクトップ並みの性能を持ち、VRにも対応可能とする。

 こういった最新製品を20年前の製品と比べると、メモリ容量は240倍に、GPU性能は2,800倍になり、CPU性能にいたっては3万2千倍にまで向上している。1997年のTOP 500の1位となったスパコンは1TFLOPS程度だったが、Precisionシリーズでは1TFLOPSの性能を実現しているものもある。つまり、20年前のスパコンの性能が、卓上で実現されている。

 今後もPCの性能は5年おきに10倍になると想定されており、単純計算で20年後には1万倍になるわけだが、これは、PCの性能が現在の京(10PFLOPS)と同程度の性能を持つことを意味する。

 こういったなか、デル執行役員でクライアント・ソリューションズ統括本部クライアント製品本部長の田中源太郎氏は、今後、性能向上に合わせて膨大な量に膨れ上がって出力されるデータを、どう有用な情報に昇華させ、知見を得るかが問われるようになると指摘する。

デル執行役員クライアント・ソリューションズ統括本部クライアント製品本部長の田中源太郎氏

 1990年代は仕事場に働きに行っていた。これが2000年代にはモバイルになり、仕事場でなくとも、いつでもどこでもワークスペースにできるようになった。そして、今後、膨大な量のデータを適切にさばくには、データを俯瞰し、そのディテールに入り込みながらも感性を生かしてデータを分析するための"Immersive"(没入型)のワークスペースが求められると、デルでは考えている。

 その1つの回答が27型液晶タブレットのCanvasだ。同製品は1月にCESで発表。日本では9月より発売され、PC Watchでもすでにレビューを掲載しているので、詳細はそちらを参照されたいが(デルの液タブ「Canvas」を漫画家が使ってみた。ワコムの液タブと遜色なく使える27型サイズ)、20点マルチタッチのほか、筆圧検知2,048段階のワコム式ペンや、独自のダイヤルデバイス「トーテム」に対応するなど、クリエイターの作業に特化した周辺機器となる。

CanvasとPrecision 5720 ALL-IN-ONEを組み合わせた利用環境
筆圧2,048段階のワコムペン対応
独自のダイヤルデバイストーテム。回転とクリックの組み合わせでさまざまなショートカットを実行できる
Canvasのおもな仕様

 没入型と言うと、VRなどのHMD(ヘッドマウントディスプレイ)がすぐに思い浮かぶが、クリエイターや開発者が集中力を途切れさせずに作業を継続できる環境もまた没入型である。

 今回、ちょまどさんと古田氏は、それぞれイラスト描画、写真編集、動画編集のデモをCanvasを使って行なった。従来も、液晶タブレットなど、ペン対応のデバイスはあったが、これまでは途中途中で、ペンをマウスに持ち替えたり、キーボードを使ったり引っ込めたりという作業が発生し、集中力が乱れる原因となっていた。

ちょまど、こと千代田まどか氏

 Canvasであれば、これまでキーボードやマウスが必要だった局面を、左手のタッチやトーテムで代用できるため、デバイスを持ち替える必要性をかなり減らせるという。

 ちょまどさんは、イラストを描くさいに、拡大縮小や回転を多用するが、これは左手のタッチ操作でできる。また、細かな書き直しをするさいに、UndoとRedoを頻繁に使うが、これもダイヤル式のトーテムを回すことで、1手ずつ戻ったり、進んだりを簡単に実行できるのが便利だとコメント。

Canvasを使ってイラスト作成の実演をするちょまどさん
日本マイクロソフトのマスコットキャラクターの1人であるクラウディア窓辺の頭にバラの花飾りを描いた

 アドビの古田氏は、Canvasと液晶一体型ワークステーション「Precision 5720 ALL-IN-ONE」を組み合わせたデモを実演。Precision 5720 ALL-IN-ONEは、27型の4K液晶を搭載する。

アドビ システムズ マーケティング本部ビデオ製品担当の古田正剛氏

 Canvasは液晶タブレットなので、利用には別途PCが必要となる。ノートPCやPrecision 5720 ALL-IN-ONEのような液晶一体型と組み合わせると、2画面の環境を構築できる。Photoshopの編集では、写真を拡大して細かい修正を行なうことが多いが、画面が1つだと、拡大縮小を何度も繰り返して修正がきちんとできているか確認しなければならない。これが、デュアルディスプレイ環境では、Canvasでは作業する場所を拡大拡大したまま、もう1つの画面は全体を表示したままにして、編集とプレビューを同時に行なえるメリットがある。

Photoshopでは、正面の画面に全体を表示したまま、Canvasで細かい場所を拡大して写真編集作業できる
Premiereもタッチで360度動画の視点を変えたり、トーテムをジョグダイヤルとして使ったりしながら作業できる
Webカメラからユーザーの頭の動きや唇の動きを取り込んで、キャラクターにリアルタイムでアニメーションの動作をつけることができるキャラクターアニメーターのデモ。こちらもタッチでキャラの両手を動かしたりできる

 PhotoshopやPremiereもタッチおよびトーテムに対応しているため、さまざまな作業を直感的かつ効率的にできると古田氏。時短やテレワークなど働き方改革が叫ばれる現在、作業を「いかに気持ちよくするか」というのも働き方改革にとって重要な視点の1つであるとする。

 古田氏は、幼少の頃からMSXなどでプログラミングに興じていたねっからのPCユーザーで、これまで当然のようにキーボードやマウスでPCを扱ってきた。しかし、VR/ARも含め、没入的に作業する場合、必ずしもキーボードの利用が最適解ではないのかもしれないと思ったと、Canvasを使った上での感想を述べた。

 トーテムについては、アプリケーションが対応していれば、そのアプリ上で使うときに、自動的に機能が切り替わる。たとえば、ブラウザ上では、ボリューム、スクロール、拡大縮小、元に戻すという4つの機能が利用できるが、ちょまどさんが使ったイラストソフト「CLIP STUDIO PAINT」では、表示倍率、表示回転、取り消し、ブラシサイズ、タイムライン、平行線定規の6つの機能が使える。

 おおむねこの標準機能だけでも作業できるが、メインの担当分野がコーディングであるちょまどさんは、Visual Studioを使って、その場でトーテムに機能を追加するコーディングのデモも行なった。コーディングの知識のないユーザーが、いきなりここまでやるのは難しいが、トーテムなどのダイヤル式デバイスは、Windows 10で標準対応されており、機能のカスタマイズも柔軟にできることをアピールした。

ちょまどさんは、トーテムに機能を追加する簡易お絵かきアプリをその場でコーディングするデモも行なった
20周年記念ケーキを囲んで登壇者で撮影