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専門家が語る8Kディスプレイの向こう側に見える世界

デル「UltraSharp UP3218K」

 デル株式会社は、業界初の8K液晶ディスプレイ「UltraSharp UP3218K」に関する説明会を開催した。同製品は7月に発売されており、本誌でもレビューを掲載済み(第12話。8K修行僧見参!参照)だが、8Kという解像度が実際にもたらす利点について、プロカメラマンの西尾豪氏と、AV Watchでもおなじみのテクニカル・ジャーナリストの西川善司氏が解説した。

製品仕様

 本製品のおもな仕様は、解像度が7,680×4,320ドット(8K)、表示色数が10億7千万色、輝度が400cd/平方m、中間色応答速度が6ms(中間色)、コントラスト比が1,300:1、視野角は上下/左右とも178度。駆動方式はIPS。

 色域カバー率はAdobe RGB 100%、sRGB 100%、Rec709 100%、DCI-P3 98%。また、X-Rite測色計によるキャリブレーションに対応するなど、写真や映像に携わるプロの要求にも応えられる。

 ディスプレイインターフェイスはDisplayPort 1.4×2。ケーブル1本でも8K表示は可能だが、この場合は30Hzとなり、2本接続することで60Hzに対応する。

 価格は498,000円とまだまだ高価だが、「プレミアムパネル保証」により、1つでも輝点があった場合、3年の保証期間内は無償交換を行なう。また、「良品先出しサービス」にも対応し、交換が必要な場合、翌営業日までに良品が先に出荷される。

前掲の画面を接写したところ

一眼レフで撮影する高解像度写真も等倍で閲覧可能

プロカメラマンの西尾豪氏

 西尾氏は、人物撮影を中心に撮影活動を行なっているカメラマンで、TV東京の女性アナウンサーや番組用の宣材写真などをてがけている。

 前述の本誌レビューでも伝えているとおり、西尾氏は、8Kという解像度により、4,000万画素クラスの高解像度な一眼レフ写真もほぼ等倍で閲覧できることで、編集効率がグンと上がるとそのメリットを説明した。

 写真において、狙ったとおりのピントが得られているかは非常に重要だが、同時に写真全体の構図も確認したい。しかし、一般的なフルHD(1,920×1,080ドット)のディスプレイだと、写真全体を表示すると大きく縮小されるためピントが確かめにくい。一方、等倍表示にするとピントは確認できるが、表示領域がごく一部になるため、全体感を把握できない。そのため、縮小表示と等倍表示を行ったり来たりしながら確認や編集を行なうこととなる。

8Kクラスの写真をフルHDで表示すると16分の1に縮小される
等倍表示では一部しか表示できない
実際、左の写真を等倍表示するとこのようになり、全体感がわからなくなる

 これが8Kディスプレイだと、4,200万画素(7,952×5,304ドット)の写真でも等倍でほぼ全域を表示できる。また、UltraSharp UP3218Kは、ピボット回転にも対応しており、ポートレート撮影では多い縦位置の写真を作業するさいも、ディスプレイを簡単に縦位置にして作業できる。

8Kなら4,200万画素の写真も等倍でほぼ全域を表示可能
ピボットでポートレート写真にも対応可能

 西尾氏は8Kディスプレイだと、写真を見ることが楽しくなり、等倍で全体を閲覧できることでカメラの画質や解像力がわかるようになり、写真の腕前も上がるとした。また、8Kで31.5型というサイズ感も作業する上でちょうどいい大きさだと実感を語った。

8Kの本命はPC

テクニカル・ジャーナリストの西川善司氏

 西川氏は、現時点での8Kの活用事例について解説した。

 ユーザーとしては、新しいものに飛びついたとしても、それがすぐに廃れてしまうと、投資が無駄になってしまうことが気がかりだ。

 この点について西川氏は8Kについて、今後も継続的にディスプレイ高解像度化はニーズが存在し、映像規格としてもBT.2020でUltra HDの1つとして定義されていることなどから、数年でいまの4Kの立ち位置くらいになっているだろうと予測する。

8Kへのニーズは確実に存在する
8Kは標準規格として定義もされている

 ただし、TVの8K放送については、まだ市場には対応チューナが存在せず、場合によってはアンテナも買い換えが必要で、2018年12月からはじまる4K/8Kの実用放送についても、8K対応するのは19あるチャンネルのうちNHKの1チャンネルのみで、展望が不明瞭だとする。

 しかし、TV以外の分野では、すでに8Kの活用事例がいろいろと生まれつつある。

 たとえばアート。高精細に撮影したアート作品を8Kディスプレイで表示することで、貴重な作品を移動させることなく、さまざまな場所で閲覧できる取り組みがはじまっている。

 医療分野では8K対応の内視鏡も実用化されている。非常に繊細な作業が必要だが、70型8Kディスプレイという環境では、細かな神経をきっちり目視しつつ施術できるという。

8Kの活用事例

 そして、西川氏は8Kを活用する上での本命プラットフォームはPCだとする。前述の写真編集以外でも、たとえばYouTubeでは2014年から8K対応しており、PCならすでに8K動画を楽しめる。

 ディスプレイとはやや異なるが、VRにおいても、HMDが8Kパネルになると、ドット間の格子が視認できなくなり、より没入できるようになる。もちろん従来からのPC作業も、解像度が高くなると、作業効率が向上する。

 価格が高価なため、おいそれと購入できるものではないが、デルではヤマダ電機、ビックカメラ、ヨドバシカメラの主要店舗に実機を展示しているので、興味のあるユーザーは実物を確かめてみるといいだろう。