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BenQ、HDR対応27型フルHD液晶を投入
2017年9月27日 20:13
ベンキュージャパン株式会社は27日、都内で「Eye-Care」ディスプレイの体験イベントを開催した。
会場には27型液晶ディスプレイ「EW2770QZ」など、Eye-Careテクノロジー搭載のディスプレイが多数展示されていた。
Eye-Careは、低輝度設定時にバックライトをDC制御することで、チラつきをなくす「フリッカーフリー」のほか、眼精疲労の原因とされるブルーライトを軽減する「Low Blue Light」、色味の変化を抑えながら同様の効果を発揮できる「Low Blue Light+」、周辺の明るさに合わせて画面輝度を自動調整する「Bright Intelligence(以下B.I.)」、輝度に加えて色温度も追従させる「Bright Intelligence+(以下B.I.+)」からなる。
「Low Blue Light+」は、眼精疲労の原因とされる短波長の青(420~455nm)の放射をフィルタで除去しつつ、長波長(455~480nm)をそのまま維持して表示するため、従来のブルーライト低減機能にありがちな「画面が黄ばんで見える」といった色の歪みを抑えて同じ効果を発揮するというもの。
B.I.+については、前述のEW2770QZが搭載製品で、画面下部にカラーフィルタを噛ませたフォトダイオードを環境光センサーとして備え、ディスプレイ周辺の色温度を検知して画面の色温度も変化させるという仕様だ。
明るさを自動調整する製品は他社製品でも見受けられるが、色温度まで調整するというのはユニークな機能と言える。
担当者によれば、自動輝度調整機能も従来は8段階しかなかったとのことだが、B.I.からは無段階の調整を可能としたことで、滑らかに変化するようになっているという。
今回のイベントに合わせ、BenQでITディスプレイ製品ビジネスユニット アシスタント・ヴァイス・プレジデントを務めるEnoch Huang氏に話をうかがうことができた。
B.I.+で色温度の変化に対応した理由については、1つは、BenQがアドバイスを求めた専門家の回答や、いくつかの研究・調査の結果、室内の照明とディスプレイのコントラストが乖離していればしているほど、眼精疲労への影響が大きいということがわかったためだという。
2つ目は長時間使用する場合、高い色温度は低い色温度と比較してより強い疲労をもたらすためだと語った。つまり室内照明とディスプレイの融合と、長時間作業への対応が目的の機能だという。
例えば太陽の光が差す部屋の場合、晴天ならば8,000K(ケルビン)、曇天なら6,500~7,500K、日没時には2,000K以下という具合に、時間や天気で太陽に合わせて色温度が大きく変動してしまう。また、室内照明に使われる蛍光灯も製品によって色温度に大きな幅があるため、それらとのコントラストを改善する機能というわけだ。
B.I.搭載モデルはすでに4~5機種ほど発売済みなのに対して、B.I.+はまだ2機種の搭載だが、同氏は、2016年末から2017年初頭までに5~6機種に搭載していく予定とした。
当然、輝度調整のみを行なうB.I.に比べて、色温度も調整するB.I.+では色温度センサーを内蔵する必要があるなど、コストがかかってしまう。
そのため、同氏はB.I.をB.I.+へと置き換えるのではなく、製品群で住み分けて共存させていく予定だと語った。
BenQでは写真家やデザイナーといったプロフェッショナル向けのハイエンドディスプレイも投入しているが、こちらへの採用については、まず「高い表示品質」の実現が最優先される製品群となるため、B.I.などの機能を前面に押し出すことはないと語ったものの、ディスプレイで常に写真編集などの作業をするわけではなく、Webの閲覧や動画視聴といった用途でも使われることを理解しており、そういった利用時にだけ機能を使うかたちを提示できるだろうと述べ、採用製品が登場することもありそうだ。
同氏は、Eye-Careはビジネスユーザーだけでなく、学生や家族など、幅広いユーザー層に恩恵をもたらす機能になっていると語ってくれた。
会場には、発売済みの製品だけでなく、日本未発表の27型液晶ディスプレイ「EW277HDR」も参考展示が行なわれていた。
EW277HDRは、フルHD(1,920×1,080ドット)のベゼルレスデザインを採用した液晶ディスプレイ。
HDR10規格をサポートしており、VAパネルと400cd/平方m(HDRモード時)の高輝度バックライトによって、ネイティブコントラスト比3,000:1を実現。Rec.709で100%、DCI-P3で93%のカバー率を謳う。B.I.+も搭載しており、HDRコンテンツの表示時にも機能していた。なお、ワールドワイドの発売は2017年末から2018年初頭の予定とのことだ。
同社では32型のHDR対応4Kディスプレイ「SW320」を投入しているが、プロ向けということもあり高価格帯だった。EW277HDRではフルHDパネルを採用しており、EWシリーズでもあることから、HDR対応製品としては安価になる見込みだという。
Ultra HD BDを意識してか、HDR対応ディスプレイは4K解像度の製品がほとんどだったが、本製品の登場を皮切りに、安価なHDR対応ディスプレイの登場に期待したい。
HDRに関連して、ASUSやAcerなどはNVIDIAの提唱する「G-Sync HDR」対応製品の投入を予告しているが、Huang氏は、対応製品はBenQでは今のところ目処は立っていないとの回答だった。
理由として、G-Sync HDRの場合、G-Syncディスプレイと同様にNVIDIAのモジュールが画像処理を行なうために、B.I.+やそのほかの調整機能(トーンなど)など、メーカー独自の機能と共存が難しいためだという。それらの技術的な解決点が見つかればあるいは、とのことだ。
先程のEW277HDRは、ディスプレイのエッジに配置されているバックライトの最大輝度を向上させてHDR対応を実現しているが、G-Sync HDRディスプレイでは、バックライトを液晶パネル直下に配置し、いくつものエリアに分割して駆動させることでコントラスト比を大幅に向上させる「ローカルディミング」という手法を採用しているのが特徴の1つと言える。
そこで、G-Sync HDR対応はせずともローカルディミングを採用したHDRディスプレイの投入はあるのかという質問を行なったところ、「ローカルディミングを採用した製品についても検討している」との回答を得られた。
もしそういったゲーミングディスプレイが登場すれば、AMDのG-Sync対抗技術「FreeSync」も、FreeSync 2からHDR表示をサポートしているため、G-Sync HDRと真っ向から戦える製品が登場する可能性も期待できそうだ。
有機ELといった液晶以外の技術を使ったディスプレイ製品の投入についてもうかがったところ、同氏は、有機ELに関して言えば、現状では放送局などで使われるマスターモニターとしての採用など、まだニッチな市場で、かつ高価格なものだが、「もちろん選択肢として有機EL含め、さまざまなものを検討している」と語ってくれた。