やじうまミニレビュー
サンワサプライの5ボタンつき「ペン型マウス」の理想と左クリックが阻む現実
2026年6月29日 06:03
サンワサプライから登場した「400-MAWB231」は、ペンの形状をしたBluetooth/2.4GHz独自方式両対応のワイヤレスマウスだ。5ボタンマウスと同等の機能を備え、ペンを握る感覚で操作できることを売りとしている。
PC歴が長い人の中には、ペン型マウスは“地雷”であると認識している人は少なくないと思うが、果たして今回の新製品はどうなのか。編集部から実機が送られてきたので、試用レポートをお届けする。
ペン型マウスはなぜ広まらないのか
ペン型のマウスは筆者の知る限り、1990年代半ばから存在するが、誰もが使うペンと持ち方が共通、かつ省スペースで操作可能という圧倒的アドバンテージがありながら、発売されても2~3年で終息、しばらく間が空いて新製品が登場するもまた終息というサイクルの繰り返しで、いっこうに広まる気配がない。少なくとも、複数メーカーが参入して量販店でコーナーができるような兆しは皆無だ。
筆者が考えるに、こうなる理由は大きく分けて2つある。1つは機構面。マウスはポインタを動かす機構(イメージセンサー)、画面をスクロールさせる機構(ホイール)、左右ボタン、さらには戻る/進むボタンなどの機構を備えるが、ペン型マウスの中にはたとえばホイールが代替機構も含めて存在しないなど、一部の機構自体が欠けている製品が少なくない。最近はさすがに見かけなくなったが、初期はこうした製品も多かった。
もう1つは操作性だ。マウスにはマウスの、ペンにはペンの作法があり、ペンに似せれば操作がしやすくなるというものではない。使い勝手を追求した結果ペンの形状になったのであれば分かるが、そうではなくまずペン型ありきでスタートし、そこにマウスと同等の機能を詰め込もうとした結果、操作性が破綻した製品ができあがるというわけである。おそらくそうした経緯で誕生したのだろうと思わせる製品があまりにも多い。
ペン先を押し込むことで左クリックは合理的
話がやや脱線したが、では今回の製品はどうなのかをじっくりと見ていこう。ボディは釣りのルアーに似た流線形が特徴で、先端にイメージセンサーを搭載している。この先端部をデスクに押し当ててなぞることで、ポインタを動かす仕組みだ。かなり太めのボディだが、ペン型と呼ぶこと自体は差し支えないだろう。
握った時に人差し指が触れる位置には、多数のボタンが並んでいるが、その中に左ボタンはない。あるのはホイール、右ボタン、さらにはカウント切り替えボタンの3つで、これにプラスして左側面に戻る/進むボタンがあるという、5ボタンマウス相当の機能を備えている。
では左ボタンはどこにあるのかというと、ペンの先端をグッと押し付けると、イメージセンサー周辺の段差が押し込まれ、左クリックが行なえる仕組みになっている。つまり指先でボタンを押すのではなく、本体をデスクに押しつけることで、左クリックと判定されるというわけである。
この仕組みはなかなか合理的だ。タブレットでスタイラスを使った経験のある人は分かるだろうが、スタイラスをしっかり握った状態で自由に動かせる指はせいぜい人差し指くらいで、ほかの指はすべて本体を保持するのに使われる。
そうした意味で、小回りの利く人差し指はホイールや右クリックなどの操作のために取っておき、本家のマウスにはない、筐体そのものを押し込むという操作に左クリックを割り当てるというのは、直感的な操作を可能にするという意味で秀逸だ。従来モデルですでに実現されていたギミックだが、本製品の最大の特徴と言える。
左クリック時に発生するブレがマウスとして致命的
ただし、である。いくら仕組みが合理的でも、正確な操作ができるかどうかはまた別の話だ。本製品では、先端を押し込んで左クリックしようした瞬間に、ポインタの位置がズレるという症状が多発する。
例を挙げると、ウェブブラウジングでタブを閉じるために「×」をクリックするつもりが、隣のタブをクリックしてしまったり、右クリックメニューを選択しようとして、ひとつ上や1つ下の項目を選択してしまったりする。これは従来のペン型マウスでも見られた症状で、つまり問題点が解決されていないことになる。
ほかのボタンはどうだろうか。人差し指での操作に割り当てられているホイール/右クリック/カウント切り替えの3つのうち、ホイールについては人差し指が常時触れる位置にあるので、操作は容易でストレスも溜まらない。ボディ右横から回り込む形でホイールに指を乗せるのは若干の違和感があるが、取り立てて問題視するレベルではない。
そのホイール手前にある右ボタンに関しては、決して押しやすくはないが、可もなく不可もなくといったところ。いちばん手前にあるカウント切り替えボタンは、人差し指の関節を思いきり曲げなければ指が届かないが、そもそもカウント切り替え自体、操作を中断して切り替えればよいだけなので、こちらも許容範囲だろう。
左側面にある「戻る/進む」ボタンはどうだろうか。この2つのボタンは親指で操作するレイアウトなのだが、前述のように親指は本体の保持に使われるので、その親指を離してボタンを操作しようとすると不安定この上ない。高い頻度での利用は難しいと考えておいたほうがよいだろう。ただ戻る/進むボタン自体の利用頻度の低さを考えると、クリティカルな問題にはなりにくい。
というわけで、やはりネックになるのは、左ボタンに相当する先端部のギミックということになる。人差し指でボタンを押すのよりはブレは少ないはずで、先端にこうしたギミックを組み込んだこと自体は悪くないのだが、この構造を採用したことで、ポインタが動かないようイメージセンサー部を宙に浮かせてからクリックするという、かつては通用した小技も使えなくなってしまっているのが痛い。
最後に接続方法などもチェックしておこう。接続方法はBluetoothのほか、ドングルを用いた独自2.4GHz帯での接続にも対応している。ドングルはUSB Type-A仕様で、USB Type-Cに変換するアダプタも付属する。
また本体下部、電源ボタンの隣にはUSB Type-Cポートがあり、ここから充電を行う仕組みになっている。1回の充電で4カ月半利用可能というのは持つというのはそこそこ長寿命であり、評価できるポイントだ。
用途を選ぶ製品。過剰な期待は禁物
以上のように、5ボタンマウスの機能がそのまま使えるという点では、ペン型マウスの中でも優秀な部類に入る製品だ。欠けているのはせいぜいチルトホイールくらいで、5ボタンマウスなら可能な操作が本製品だとできないといったことはない。またペン型マウスにありがちな、本体の傾きによっては反応が悪くなる問題も、試用した限りでは見られなかった。
一方で使い勝手に関しては、従来のペン型マウスの問題点はそのままで、ウェブブラウジングはスクロールなどの大雑把な操作は問題なくとも、クリックを伴う操作は苦手。精度を要求されるお絵描き用途はもってのほか、ゲームも操作をミスってのゲームオーバーが続出するだろう。慣れればなんとかなるのでは……と思うかもしれないが、そもそもの精度がネックなので、使い込んで解消するとは考えにくい。
現実的な使い道を探すならば、スクロールを中心とした気軽なWebブラウジングのほか、ドラッグおよびホイール操作を中心としたマップアプリの閲覧くらいだろう。いずれにしても、普段使っているマウスを置き換えられる出来ではなく、マウス操作に疲れた時に気分転換に使う用途が関の山だ。戻る/進むボタンを除けば左右対称デザインなので、それらのボタンが使えない前提で、左手用デバイスとして使うのもありだろう。
このように、総じて用途を選ぶ製品であり、ペン型であるというだけで過剰な期待は禁物という、過去のペン型マウスと同じ結論にならざるを得ないというのが、実際に試用したうえでの筆者の評価だ。





























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