やじうまミニレビュー
ちょっと出っ張るだけなのに600MB/s超の実力派。バッファロー史上最小SSDを試す
2023年8月25日 06:18
バッファローから、超小型ポータブルSSD「SSD-PSTU3-BA」シリーズが登場した。USBメモリ型SSDの最新モデルで、バッファローのポータブルSSD史上最小サイズを実現。見た目にはUSBメモリとしか思えないほどの超小型サイズを実現している点が最大の特徴となっている。
今回SSD-PSTU3-BAシリーズの容量500GBモデル「SSD-PST500U3-BA」を試用する機会を得たので紹介する。9月上旬に発売予定で、直販サイト「バッファローダイレクト」直販価格は1万円。
ポータブルSSDとは思えないほどの超小型筐体
SSD-PST500U3-BAを見て真っ先に感じるのは、これが本当にポータブルSSDなのか、というものだ。それもそのはず、サイズは14.6×28×8mm。しかも、28mmある奥行きのうち12mmほどはUSB端子だ。そう考えると、本体部は14.6×14×8mmしかないことになる。100円硬貨と並べてみると、その小ささが一層際立つ印象だ。ちなみに、実際にノートPCのUSBポートに装着してみると、筐体から飛び出す部分は17mmほどだった。これなら、PCに装着したままでもそれほど邪魔にはならなそうだ。
軽さも尋常ではなく、公称約4.5g、実測でも4.2gしかない。筐体の小ささを考えるとこれだけ軽くても当然かもしれないが、これがポータブルSSDだと考えるとやはり驚異的な軽さと言える。
はっきり言って、これだけ小さく軽い筐体ということで、実際に手にしてもUSBメモリとしか思えない。ぞんざいに扱っていると、簡単にどこにいったか分からなくなってしまいそうなので、扱いには注意が必要そうだ。
その一方でポータブルSSDということで、堅牢性も高められている。SSD-PSTU3-BAシリーズは、米国国防総省調達基準「MIL-STD-810H 516.8 procedure IV」準拠の耐衝撃性能を備えているという。実際に、122cmの高さからすべての辺、面、角の合計26方向から落下させる試験を行ない、正常に動作することを確認しているという。これは、持ち運んで利用することの多いポータブルSSDであることを考えると、非常に安心できる特徴と言える。
このほか、保存データをAES256で暗号化するアプリ「SecureLock Mobile2」の利用や、S.M.A.R.T.情報をクラウドに蓄積しSSDの劣化具合を確認できる故障予測サービス「みまもり合図」にも対応。みまもり合図は後日対応となるが、これらセキュリティを意識した仕様も、安心して利用できるポイントと言える。
容量は、今回試用した500GBと、250GBをラインナップ。また1TBモデルも近日発売予定。
ちなみに、本体にはキャップ類は付属せず、USB端子むき出しの状態となっている。これは、SSD-PSTU3-BAシリーズは一般的なポータブルSSDのように必要な時に装着して使用するのではなく、基本的にはPCなどのUSBポートに装着したまま利用することを想定しているためだ。この本体の小ささなら、確かに装着したままの利用も十分可能と感じる。
ただ、頻繁に着脱する一般的なポータブルSSD同様の使い方も想定し、できればUSBポートを覆うキャップは用意してもらいたかったように思う。
インターフェイスはUSB 3.2 Gen2準拠で、速度はリード最大600MB/s
接続インターフェイスはUSB 3.2 Gen2 Type-Aを採用。本体の小ささを考えると、USB Type-Cを採用しても良かったように思うが、汎用性を高めるためにUSB Type-Aを採用したと考えられる。実際SSD-PSTU3-BシリーズはPCだけでなく薄型TVや家庭用ゲーム機での利用も想定しているため、USB Type-Aの採用は必然だったのだろう。
もちろんUSBバスパワーで動作するため、利用時に別途電力を供給する必要はない。
データ転送速度は、シーケンシャルシードが約600MB/s、シーケンシャルライトが約500MB/s。ポータブルSSDとしては飛び抜けて高速というわけではないが、十分納得できる速度を実現している。内蔵SSDの仕様は非公開だが、CrystalDiskInfoでチェックしてみると、SATA SSDではなくPCIe/NVMe SSDを採用しているようだ。
なお、この速度を最大限引き出すには、USB 3.2 Gen2ポートに接続して利用する必要がある。USB 3.2 Gen1以下のUSBポートに接続した場合には、ポートの仕様に応じて転送速度が低下することになる。
リード、ライトとも600MB/s超を確認
では、ベンチマークソフト「CrystalDiskMark 8.0.4c」を利用して簡単に速度をチェックしていこう。テスト時のCrystalDiskMarkの設定は「NVMe SSD」にセットした。テスト環境は以下に示したとおりで、マザーボード背面に用意されるUSB 3.2 Gen2 Type-Aに接続してテストを行なった。
【表】テスト環境 | |
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マザーボード | ASUS TUF GAMING B650-PLUS WIFI |
CPU | Ryzen 5 7600 |
メモリ | DDR5-5600 32GB |
システム用ストレージ | Samsung SSD 950 PRO 256GB |
OS | Windows 11 Pro 64bit |
まず、データサイズが1GiBの結果では、シーケンシャルアクセス速度がリード626MB/s、ライト632MB/sと、リード、ライトともに公称の速度を上回る速度を記録した。それも、ライトは公称では500MB/s以上ということなので、大きく上回っていることが分かる。
4Kランダムアクセス速度8Q32T16)についても、リードは292MB/s、ライトは449MB/sと、同等クラスのポータブルSSDと比較しても同等以上の速度で、こちらも申し分ないものとなっている。
また、マザーボードのUSB 3.2 Gen1 Type-Aに接続した状態でもテストを行ってみた。そちらの結果を見ると、シーケンシャルアクセス速度はリード397MB/s、ライト452MB/sに低下。ランダムアクセス速度も低下していることが分かる。これは、接続インターフェイスの速度がボトルネックになっているためだ。これでも十分高速ではあるが、速度をフルに引き出すにはUSB 3.2 Gen2ポートに接続して利用する必要がある。
続いて、データサイズを16GiB、32GiBに設定した場合の結果8USB 3.2 Gen2接続)を見てみると、シーケンシャルリードやランダムリードはデータサイズが1GiBの場合とほとんど変わっていないが、データサイズが大きくなるに従ってシーケンシャルライトやランダムライトの速度が大きく低下していることが分かる。
【22時50分訂正】記事初出時、データサイズの単位が誤っておりました。お詫びして訂正します。
また、写真や動画など6,264ファイル、総容量約43.5GBを保存したフォルダをSSD-PST500U3-BAに転送してみたところ、当初は500MB/sを超える転送速度だったのが、転送量が20GBを超えたあたりで速度が360MB/s程度に低下した。
これはおそらく、温度の上昇によってサーマルスロットリングが発生し速度が低下したと考えられる。
テスト中やファイル転送中にSSD-PST500U3-BAを触ってみると、かなり温度が高くなっている。実際にCrystalDiskMarkのテスト実行中にCrystalDiskInfoでテスト中の温度をチェックしてみると、最大で73℃に達した。また、サーモグラフィーカメラで表面温度を計測してみると、55℃を超えていた。
SSD-PSTU3-BAシリーズでは転送速度をコントロールして発熱を抑える独自技術を採用しているとのこと。ただ、本体サイズが小さくなれば、それだけ放熱能力も低下する。長時間のリードやライトが発生する場合には、どうしても放熱が追いつかず、サーマルスロットリングで転送速度が低下してしまうのはしかたがないだろう。
日常的に数十GBの大容量データを転送する必要がある場合には、サーマルスロットリングによる速度低下を実感する場面が増えるかもしれない。ただ、そこまで大容量のデータを日常的に扱わないのであれば、サーマルスロットリングが発生する場面は希になるはずで、ほぼ気にせず利用できるはずだ。
USBメモリライクに使える高速ストレージとして魅力
今回見てきたようにSSD-PST500U3-BAは、ポータブルSSDとして申し分ない性能を実現しつつ、小型のUSBメモリとしか思えないほどの小さな筐体を実現しており、とにかく小さなポータブルSSDが欲しいという人にとって非常に魅力的な製品に仕上がっている。
また、この小ささのおかげでノートPCに接続したままでも扱いやすい。速度も申し分ないため、内蔵ストレージの交換や増設の難しいノートPCでのストレージ増設用としても十分活躍してくれそうだ。
価格的には、同容量のポータブルSSDと比較してやや高価ではあるが、サイズの小ささを優先させたいのであれば、十分価値のある製品と言える。