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2万円安い!「ROG Ally」の下位モデルが登場。上位モデルとの性能差を最新ゲームでチェックしてみた

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ASUS「ROG Ally(RC71L-Z1512)」。価格は8万9,800円

 ASUSは9月18日、ポータブルゲーミングPC「ROG Ally」の下位モデル「RC71L-Z1512」を発表した。同日予約を開始し、3日後の9月21日から販売する。搭載CPUが「Ryzen Z1」に変更となり、より購入しやすい10万円切りの価格で提供されるのが特徴。すでに販売されている上位モデル「RC71L-Z1E512」とのパフォーマンス差が気になる人も多いだろう。

 製品の概要や使い勝手についてはすでに上位版のレビューが掲載されているため、この記事ではRC71L-Z1512の製品サンプルをもとに、上位モデルとのパフォーマンス差をいくつかのゲームタイトルで比較するミニレビューをお届けしよう。

ROG Ally上位モデルと下位モデルの違い

ROG Allyのスペック
型番RC71L-Z1E512RC71L-Z1512
CPURyzen Z1 Extreme
(8コア、16スレッド、 3.3/ 5.1GHz、24MBキャッシュ)
Ryzen Z1
(6コア、12スレッド、3.2/4.9GHz/ 22MBキャッシュ)
GPURadeon Graphics
(最大8.6TFlops FP32)
Radeon Graphics
(最大2.8TFlops FP32)
メモリ16GB (LPDDR5-6400、8GB×2)
ストレージ512GB (PCI Express 4.0 x4 SSD)
ディスプレイ7.0型 1,920×1,080ドット タッチパネル液晶 グレア
OSWindows 11 Home 64ビット
ネットワークWi-Fi 6E
本体サイズ280.0×111.38×21.22~32.43mm
重量約 608g
バッテリ駆動時間約10.2時間
価格10万9,800円8万9,800円
上がRC71L-Z1512、下が発売済みの上位モデル「RC71L-Z1E512」。搭載CPU(APU)のみが異なり、筐体も同一でハードウェアの機能などに違いはない

 上記スペック表を見れば明らかなように、ROG Allyの上位モデル・下位モデルの違いは、搭載CPU(APU)、およびCPU内蔵グラフィックスである「Radeon Graphics」が異なるのみ。

 下位モデルでもディスプレイやメモリ、ストレージは同一の構成で、筐体の各種インターフェイスや「ROG XG Mobile」とのドッキング機能なども同じように利用できる。

「Ryzen Z1」の情報を「CPU-Z」で取得。採用ダイは近日中の登場が噂されていた「Phoenix 2」であることが読み取れる
「GPU-Z」で取得したGPU情報。名前こそ同じRadeon Graphicsだが、CU数がRyzen Z1 Extreme版の3分の1に縮小されている

 上位モデルのCPUである「Ryzen Z1 Extreme」が8コア/16スレッドCPUであるのに対し、今回発売となる下位モデルは6コア/12スレッドCPUであるRyzen Z1を搭載。動作クロックとキャッシュ容量も抑えられているものの、よりパフォーマンスに影響しそうに見えるのがGPUだ。

 Ryzen Z1 ExtremeとRyzen Z1はどちらも内蔵GPUとしてRadeon Graphicsを搭載するが、Ryzen Z1 Extreme版はFP32の演算速度が最大8.6TFlopsである一方、Ryzen Z1版は最大2.8TFlopsとパフォーマンスが大きく落ちている。

 これは両者のCU(Compute Unit)数が異なるためで、Ryzen Z1 Extreme版は12CU、Ryzen Z1版は4CU構成ということで、実に3倍もの開きがあるわけだ。この差がどの程度、実際のゲーム描画に影響を与えるかを確認してみよう。

中程度の画質なら最新ゲームもなんとかプレイ可能

 早速ベンチマーク検証に移ろう。本レビューの主役であるRC71L-Z1512に加え、比較対象として上位モデルのRC71L-Z1E512を借用できたため、両者の結果を併記していく。

 なお、ベンチマーク中はROG Ally本体にACアダプタを接続し、専用ユーティリティ「Armoury Crate」の「オペレーティングモード」を最大パフォーマンスとなる「Turbo」に設定している。

ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON

 まずは最新タイトルとして大きな話題となった「ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON」の結果からだ。画面解像度は本体の最大解像度である1,920×1,080ドットに固定し、映像品質は「中」に設定。フレームレート上限を「120」、垂直同期は「オフ」としている。序盤のミッション「テスターAC撃破」で一定コースを移動した際の1分間のフレームレートを、「CapFrameX」で計測した。

 RC71L-Z1512のパフォーマンスは際どいところだが、なんとか平均フレームレートで30fpsを達成。最小フレームレートは21.2fps程度まで落ち込んでおり、少々負荷が高くなるようなシーンではカクつきがやや気になる印象だ。

 一方、上位モデルのRC71L-Z1E512ではほぼ40fpsに近い平均フレームレートが出ており、プレイ中の印象はかなり軽快になる。

 GPUのCU数の差から単純にイメージできるほどの差は出ていないが、上位モデルなら少し性能に余裕があり、下位モデルでもほどほどの画質でプレイ可能、というあたりのバランスの取り方は興味深い。

STREET FIGHTER 6 ベンチマーク

 続いてはこちらも比較的新しいタイトルである「STREET FIGHTER 6」を見てみよう。計測には実ゲームベースのベンチマークツールを利用し、画面解像度は1,920×1,080ドット、画質プリセットであるクオリティは「NORMAL」に設定したあと、フレームレート上限を「120」、垂直同期を「オフ」に変更している。本ベンチマークは総合スコアにあまり意味がないため、「FIGHTING GROUND」「BATTLE HUB」「WORLD TOUR」のシーン別に平均フレームレートを比較した。

 格闘ゲームながらやや重めの本作では、RC71L-Z1512が3つのモードで平均フレームレートが30fpsを下回ってしまい、快適なプレイは困難な印象だ。より画質を下げることも可能だが、それでも平均60fpsを超えるのは難しい。

 上位モデルでも対戦シーンである「FIGHTING GROUND」、オンラインロビー「BATTLE HUB」は40fpsを超えているが、シングルモードである「WORLD TOUR」は40fpsに届かず。

 いずれにせよ、ROG Allyで最新タイトルをプレイする場合は場面ごとのフレームレートの不安定さが無視できないため、格闘ゲームのようにフレームレートの安定性が重視されるようなタイトルをプレイするには不向きだろう。

ホグワーツ・レガシー

 最後に、比較的高負荷なオープンワールドゲームである「ホグワーツ・レガシー」の結果を見てみよう。画面解像度は1,920×1,080ドットに固定し、全体の品質プリセットは「中」に設定。本作はそのままでは負荷が高すぎるため、アップスケールタイプに「AMD FSR2」、アップスケールモードに「AMD FSR2クオリティ」を設定した状態での計測を実施している。ホグワーツ魔法学校内の一定コースを移動した際の1分間のフレームレートを「CapFrameX」で計測した。

 RC71L-Z1512はギリギリで平均30fps越えを達成。相変わらず上位モデルとはフレームレートに開きがあるものの、“それなりに快適にプレイ可能”というラインは確保できているように思う。画面が7インチと小さめなので、画質は中程度、なおかつアップスケーラーを利用しても映像の印象は悪くない。

 ただし、扉を開けて広い中庭に出るようなシーンでは地形の読み込みに手間取り、目に見えてフレームレートが低下してしまうあたりは若干気になるところだ(最小フレームレートが4fps前後まで低下している原因でもある)。あくまで携帯機なので致し方ない点ではあるし、そうした細かい不自由を許容できるのであれば、ROG Allyは魅力的なデバイスだろう。

切り詰めた性能。上位モデルとの2万円の価格差をどう見るか

 RC71L-Z1512は上位モデルよりさらに性能を切り詰めてはいるが、なんとか“最新ゲームを中程度の画質でプレイ可能”と言えるだけのパフォーマンスは発揮できている。

 上位モデルでは価格が2万円アップするものの、平均で10fps前後と小さくないフレームレートの向上が望めることから、この価格差をどう捉えるかは悩ましいところだ。

 ある程度しっかりしたPCゲームタイトルを遊ぶなら上位モデルがおすすめなのは言うまでもないが、とにかくハンドヘルドのポータブルゲーミングPCを1台試してみたい、あるいは普段プレイするゲームに高負荷なものがない、といった場合はRC71L-Z1512が選択肢に挙がってくるだろうか。

 用途を吟味する必要はあるが、PCとしても活用できる上、ハードウェアとしての完成度も高いため、気になる人はチェックして損はないはずだ。