やじうまミニレビュー
エレコムの子ども向けキーボード「KEY PALETTO」、小学生が使ってみたら……?
2023年5月30日 06:18
エレコムが2023年5月に発売したのは、今どきのゲーミングデバイスでもなく、かといってクリエイター向けでもビジネス向けでもない、主に小学生あたりの子どもに向けたキーボード「KEY PALETTO(キーパレット)」だった。「大人向け」にはないカラフルでコンパクトな、楽しそうな見た目……。
ちょっと気になったので、筆者の小学生の子どもにも実際に使わせてみた。すると、ひらがな入力専門だったのが、みるみるローマ字入力に適応していった! お父さんうれしい!
大人もわくわくするカラフルデザインに、優しい手触りの角丸キー
KEY PALETTOは、エレコムが大阪電気通信大学と共同で開発したという子ども向けのキーボード。子どもがPCで学習するにあたり、それに適した使いやすいキーボードを目指した製品だ。
ラインアップはUSB接続の有線モデルのほか、Windows/ChromeOS向けのBluetoothモデル、iOS/iPad向けのBluetoothモデル、さらにUSBドングルを利用する2.4GHz無線モデルの4タイプが用意。基本的なキーレイアウトは共通しており、iOS/iPad向けのみキートップの刻印が異なるところがある。
今回試したのは、そのうちの2.4GHz無線モデル。ケーブルが邪魔にならず、しかもペアリングなどの手間がかからないという意味では、最もコンパクトかつ手軽に使えるモデルと言える。
パッケージは、実にかわいらしい。外側もそうだが、中を開けても、製品の実物とともにカラフルなロゴがここでも見えるようになっていて、大人ながらもなんだかわくわくしてしまった。
キーボードのサイズ感としては、約267×136×23mmなので、まあまあよくあるコンパクトなキーボード。重量も310gと軽い。キーピッチは約17mmで、フルピッチ(19mm)よりレイアウト自体もコンパクトだ。
キー1つ1つは角丸になっていて、中央部分はわずかに凹んでいる。見た目の印象だけでなく指当たりも優しい感じ。構造としてはメンブレン方式で、タッチは(大人にとっては)軽め。ストロークは2.5mmということなので、3mmほどあるメカニカルキーボードより浅いが、一般的なノートPCのキーボードと比べれば深めといったところだろうか。
ただ、メンブレンのせいか、いったん力が加わると最後まで押下され、文字入力される。キーが軽い分、大人であればわずかに力が入っただけで押下されてしまうため、入力ミスしやすいかもしれない。というか、そもそもキーピッチが狭い点で、やはり大人が使いやすいモデルではないということだろうけれど。
アルファベット、ローマ字入力を学びやすく、使いやすくする独自の工夫
KEY PALETTOのユニークな点は、そうした見た目やサイズ感、操作感だけではない。色分けされているキーやキートップに刻印されている内容にも独自の工夫や狙いがある。
まずカラフルなキーの色分けは、どの指で押すキーなのかを分かりやすく示すためのもの。中央付近の黄色いキーは人差し指、青は中指、赤は薬指、緑は小指で押す、といった具合だ。明確に色分けしておくことで、両手を使ってタイプするときの基本的な指の使い分けが覚えられるというわけだ。指先に貼り付ける同じ色のシールも同梱されており、指とキーの対応を視覚的に一致させることで、さらに理解が進みやすくなるだろう。
一般的なキーボードとの違いという意味では、アルファベットの「小文字」が大きく刻印されているのが面白い。通常ならここは大文字のはずだ。しかしよく考えてみると、おそらく大多数のユーザーはCaps Lockがオフの状態、つまり小文字入力をデフォルトとしているはずで、入力される文字とキートップの刻印が一致していないという矛盾がある。
筆者もその違いを全く意識せずに使ってきたが、本来ならメインの刻印は小文字になっているのが自然なはずで、子どもにとってみれば当然その方が直感的で分かりやすいだろう。もちろん大文字もキートップの左上に刻印されており、「Shiftキーを押しながら入力する」ことが分かるように四角で囲まれた表示になっている。
さらに、不意に大文字と小文字の入力が切り替わってしまわないよう、Caps LockキーをCtrlキーに置き換える物理スイッチも用意されている。確かにShiftキーを使えば大文字入力に困ることはないので、Caps Lockキーはなくてもかまわない。筆者もほとんど使っていないキーだ。時々誤って押してしまい、いきなり大文字になって戸惑うこともよくある。Ctrlキーに変えておけばそうしたトラブルもなくなるだろう。
ある意味簡単に玄人向けのキーマップになるので、そうした方面での需要も、もしかしたらあるかも?
また、キートップにひらがなの表示がないことから、KEY PALETTOはあくまでもローマ字入力を学ぶためのキーボードでもある。小学生低学年だと、ひらがなは理解していてもアルファベットまではまだ完全に覚え切れていないかもしれない。もしくは、ローマ字表記の仕方までは知らない、ということもあるだろう。
そんな子どものために、ローマ字入力の仕方がすぐに分かる「サポートカード」も付属している。このカードにはローマ字とひらがなの対応表を表裏に記載しており、キーボード背面側に立てかけられるようになっているので、1文字ずつ確認しながら入力していくときも楽ちんだ。
子どもは初見から前のめり、ローマ字入力にもマジメに取り組み始める
そんなわけで、子ども向けに最適化されたKEY PALETTOを筆者がヘビーに使ってもあまり意味がないから、小学3年生の娘に使わせてみることにした。事前に「今度こういうキーボードを試すけど、使ってみたい?」と聞いたところ、デザインのカラフルさに興味を引かれたのか、予想以上に前のめりの態度でOKの返事。当日の夜に「まだ届かないの?」と聞いてくるほど気がはやっていた。飲食デリバリーじゃねーぞ。
PCでは普段からゲーム(Minecraftやフォートナイト)をしたり、ひらがな入力で親とSkypeなどを使ってコミュニケーションしている娘。キーボードを使う条件として提示した「ローマ字入力を覚えること」というお願いもすんなり受け入れ、色分けされている意味や指の使い方のレクチャーにもちゃんと付き合ってくれた。
いつもならこうはいかない。何か教えようとすると(筆者の教え方の問題だとは思うが)すぐに拒否反応を示すはずなのに、なぜこうも変わるのか。これが子ども向けに最適化されたキーボードの魔力なのだろうか、なんて思ってみたり。
これまではずっとひらがな入力だったので不安だったけれど、アルファベット自体は理解していたようなので、最初から全く使えないということもなく、きちんとローマ字入力で使い始めた。ひらがなが刻印されていないのでローマ字入力するしかない、という諦めもあるだろう。ある意味強制的に学習できているわけだ。
まだアルファベットキーの配置を把握できていないのと、ローマ字表記も全部は覚えていないので、サポートカードとキーボードとを交互ににらめっこしながら、ポチポチとゆっくりタイプしている。以前はフルキーボードだったので、少しキーが小さくなったところに違和感を覚えないこともないようだが、指の使い分けも意識しながら意外なほどマジメに取り組んでいて、お父さんはちょっぴりうれしい。
両手でスムーズにタッチタイプするにはまだまだ時間がかかりそうではある。でも、アルファベットキーの配置をしっかり覚えればプログラミングなどできることも広がるだろう。そういえば筆者もPC(PC-8801mkII)でプログラミング(BASIC)を始めたのは小学3年生だった。子どもにも同じことをやってほしい、なんて全く思わないが、世代が代わってもタイミングは似るものなのだなあ、と、なんだか感慨深いような……。