やじうまミニレビュー

機能てんこ盛りのTWSイヤフォン「Poly Voyager Free 60+ UC」はガジェッターにおすすめ

やじうまミニレビューは、1つ持っておくと便利なPC周りのグッズや、ちょっとしたガジェットなど幅広いジャンルの製品を試して紹介するコーナーです。
Voyager Free 60+ UC

 ある日、珍しくHPの広報の方から、傘下のイヤフォンブランドであるPolyのTWS(True Wireless Stereo)イヤフォンの新作「Voyager Free 60+ UC」のレビューの依頼が飛んできた。一応は4万円台の高級イヤフォンだし、そのレビューはむしろAV Watchに掲載すべきでは? と思った読者は鋭い。実は筆者も思ったのだが、結果から言うとPC Watch向けな製品だった。

 手短に“どこがPCユーザー向け”なのかという点からまとめると以下の通り。

  • バックグラウンドノイズを削減して自分の声だけを拾える3基のマイク
  • 風切り音低減のWindSmart技術
  • 音声通話向けの音質チューニング
  • ケースのタッチスクリーンで即座にミュートや音量調節が可能
  • 取り外さずに外音を取り入れられるトランスペアレントモード
  • USB Bluetoothアダプタ付属
  • 8台のデバイス情報を記憶してタッチスクリーンで切り替え

 つまり、音楽鑑賞をする目的のために作られたのではなく、Web会議用途に特化したTWSイヤフォンであるということだ。だからPC Watch向けなのである。

Web会議に最適な音質

 本体はエコを意識したパッケージで、内容物はイヤーピースのほかにUSB Type-C→Type-Aのケーブルや、USB Type-C→3.5mmステレオミニジャック変換ケーブルなどが付属している。

 ケースはタッチスクリーンがある関係でやや大きめ。イヤーピースは軸の部分がやや長めだが、ほっそりしている。フィット感はグイグイ耳の中に入り込んで隙間なく……というわけではなく適度な感じ。軽量で長時間着けていても苦にならなかった。ちなみにiPhoneやAndroid端末の近くでケースを開けても自動的に検出されてペアリングできるといった類の機能はないようだ。

製品パッケージ
付属品など
Bluetoothアダプタを本体内に収納できる

 まずWeb会議で肝心なマイクの性能についてテストしてみたが、TWSイヤフォンとしてはまずまずといった感じだ。実際PC Watch内部のWeb会議で使ってみたところ、「普段使っているShokzのOpenCommより若干劣っており、若干遠いようにも聞こえるが、ほぼ問題ない」とのこと。

 普段使っているOpenCommはブームマイクで口元に近いので、優秀なのは当たり前なのだ。実際に自分でVoyager Free 60+ UCとOpenCommの両方で録音して聞いてみたが、前者のほうが若干遠いかな? という以外ほぼ同じで良好だった。近くの扇風機などの音は入らず自分の声がクリアなのも、さすがにノイズキャンセリングがよく効いている。

 一方、イヤフォンとしての音質は、傾向としては中高域寄りな印象だ。低音や重低音はないわけではないが、決して強調したりはしておらず自然な印象。ただ、どちらかと言えば人の声にフォーカスが当てられている感じで、長時間のWeb会議で聞き疲れしないチューニングだ。

 冒頭で述べた通りWeb会議に特化しているイヤフォンではあるものの、当然音楽を再生できないわけではないし、普段遣いとしてはむしろそちらのほうが長時間になるであろうから、音楽再生も試してみた。

 人の声にフォーカスが当たるというのは、歌を再生していても感じられ、歌詞がとても聴き取りやすいのが印象的。たとえばデュア・リパの「Break My Heart」のサビの部分はそこそこ早口なので、筆者は歌詞も含めて“楽器”として聴き流してしまうのだが、Voyager Free 60+ UCなら音楽部分とボーカルがよく分離されているので、しっかり“歌詞”として聞こえる。

 しかし音楽によってはこれが裏目に出てしまうことがあり、たとえば紗倉ひびきの「お願いマッスル」のようなボーカルが既に十分強めに前に出ているような音楽では、演奏やドラムの部分がスポイルされるような感じだ。また、“人の声が文字として認識させる”ことは長けているものの、ボーカルの色っぽさや艶っぽさはあまりない。おそらくこの付帯する情報の少なさが、長時間のWeb会議でも聞き疲れしない理由の1つでもあるだろう。

 もちろん、何を聴くか、何を聴きたいかによって得意不得意が生じるのはどのイヤフォンも共通なのだが、Voyager Free 60+ UCはWeb会議は聞き疲れをさせない、音楽では歌詞を聴かせるイヤフォンだと評していいだろう。

 ちなみに本機にはアクティブノイズキャンセリング(ANC)機能が搭載されているが、効果はまずまず。筆者は普段BOSEの「QuietComfort Earbuds II」を使っているのだが、うるさい街中でも着けた途端に別世界とも言える静寂な環境に引き込まれるその圧倒的なANCなどと比較すると見劣るが、部屋の中のファンやエアコンの音はかなりに消してくれる。なお、ANC動作中にアイドル時にイヤピースに触れると外音取り込みモードになる機能も用意されている。

Android版のPoly Lensアプリ。イヤーバッズ側のアップデート、言語設定、着脱センサー、タッチセンサーの細かなカスタマイズが可能
PC用のPoly Lensアプリ。ケースのファームウェアアップデートが行なえる(スマートフォン版はできない)

タッチスクリーン付きケースは何が便利なのか?

 イヤフォンのケースにタッチスクリーンがついたからなんだ、と思うかもしれない。イヤーバッズ自身、タッチでボリュームの操作などができるのでなおさらだ。実際製品を入手するまで筆者もそう思っていたが、使ってみたら意外と便利だった。

 まずはWeb会議中にとっさにマイクをミュートにできるボタンである。この製品はWeb会議が開始すると自動的にミュートボタンを画面に表示する。これでいつでもミュートにできるわけだ。

 もちろん、ユーザーがミュートにする手段は多々あろう。画面上のボタンを押すこともできるし、ショートカットキーを覚えていればそれを使ってもいいし、Stream Deckのような外付けデバイスでマイクミュートにする機能もあるのでそれを使っているかもしれない。しかし、「ウィンドウはどこだっけ」、「ショートカットなんだっけ」、「今は外出先でノートを使っていてStream Deckがない」なんていうのは普通に発生しうる。そんな時このケースが横に置いてあれば役に立つわけだ。

 それから、8つのデバイスのペアリングを記憶しておき、接続先を切り替える機能も、このタッチスクリーンがあってこそ実現できたもの。ちなみにペアリングする時もUIで直感的に操作できるのも良い設計だと感じた。

通話中はこんな感じのアイコンが表示されるため、すぐにマイクをミュートにできる。ただし通話終了はスマートフォンの電話のみ
音楽の次のトラック/前のトラックの操作も
こちらは音量調節。とはいえ本体のタッチでも行なえるのだが。せっかくカラーディスプレイなんだからもう少しリッチなUIでも良かった気がする
デバイスのペアリングも
最大8台までのペアリング済みデバイスをサッと切り替えられるのは◎である

 なお、ケースがポケットの中にある場合、なんらかのタイミングで誤反応してしまわないよう、本体後部にロックボタンが搭載されている。ロックすると画面を3回タッチするまで操作できなくなるので誤操作を防げるという寸法だ。

本体後部のボタンを押すと操作をロックできる

 このケースはタッチスクリーンで便利なだけでなく、Qiによる無接点充電を備えているのもポイント。さらに付属の3.5mm→ケースのUSB Type-C変換ケーブルを使えば、本来は無線化できない飛行機内のエンターテインメントシステムの音声出力や、古い機器の音声出力を本機で楽しめる。外出、出張の機会が多く、なおかつデバイスも多く所持しているユーザーにはうれしい。

本体を3.5mm→Bluetoothのトランスミッターにする機能
前世紀MDもBluetoothで聴ける

やや値は張るが、機能面で評価したい

 Voyager Free 60+ UCの実売価格は4万1,800円だ。1,000円台でもTWSイヤフォンが買える中、これはかなり強気の価格設定で高級イヤフォンの部類だと思うが、タッチスクリーンで直感的に扱える点や、8台のデバイスから接続先を選んで切り替えられる点、USBのBluetoothアダプタが付属する点、3.5mmミニジャックからの転送など、競合にはない機能がふんだんに盛り込まれている(一番近いのはJBLの「Tour Pro 2」か)。

 特に、外出先でWeb会議をする機会や出張する機会が多く、また筆者のようにデバイスをたくさん持っているようなガジェッターにおすすめしたい1台だと言える。