やじうまミニレビュー

ATXでも効果絶大なSFX電源「FSP DAGGER PRO」を使ってみた

やじうまミニレビューは、1つ持っておくと便利なPC周りのグッズや、ちょっとしたガジェットなど幅広いジャンルの製品を試して紹介するコーナーです。
片手でラクラク持てるDAGGER PRO

 新CPUやGPUが出るたびに高頻度で買ってパーツを交換するヘビーなPC自作ユーザーでも、「電源」と「ケース」だけは、寿命がかなり長いのではないだろうか。特に電源は高品質なものを1回買うとなかなか壊れないので、5年は当たり前、気づいたら10年も同じものを使っていることもざらだ。かくいう筆者も、未だにクレバリー(2012年破産)で購入したSilverStoneの「Strider Gold」シリーズを使っていたりする。

 そのため、筆者はしばらく「電源」についてそれほど注目はしていなかったのだが、FSPが7月末に発売した「DAGGER PRO」にはちょっと心を奪われた。

 というのも、筆者はちょっと前にCooler Masterの超コンパクトなATXケース「MasterBox Q500L」を購入したのだが、このQ500Lは小型化のために電源を前面配置にしている。ハイエンド構成にしようと上部に240mmラジエータを入れると、電源がやや下にオフセットされるのだが、そうするとビデオカードのスペースが圧迫され、270mm超のビデオカードが入らなくなるのだ。

 最新のGeForce RTX 3070/3080以上のモデルでは、発熱量がかなり増加しているため、クーラーが大型化しカードが長尺化している。GeForce RTX 20/GTX 16シリーズで余裕だったQ500Lも、さすがにStrider Goldとの組み合わせでは、最上段の拡張スロットに装着できない。

 筆者はマザーボードの下PCI Expressスロットを使って干渉を回避しているが、これはSupermicroの「C9Z490-PGW」だからこそx16のままで接続できる芸当で、普通のマザーボードではx8接続となり性能のボトルネックになるどころか、そもそも組み込めなくなってしまうことだろう。こうなると基本的にケースの買い替えしかない。しかしQ500LのmicroATX顔負けのコンパクトさには、筆者もかなり気に入っている。

MasterBox Q500Lはコンパクトさを実現するため前面に電源を配置するが、Strider Goldのような奥行きが180mmある電源を使用すると拡張カードの長さは限定される。簡易水冷を組み合わせるとクリアランスはさらにシビアになり、GeForce RTX 3080 Ti GameRock OCのような304mmのビデオカードだと、1~4段目のスロットに入らない

 そこで目をつけたのが、SFX電源のDAGGER PROというわけだ。幅125mm、高さ63.5mmというスペックはもちろんのこと、奥行きはわずか100mm。このスペックならQ500Lの前面につけたとしてもかなりの余裕ができそうだ。それでありながら850Wという容量を確保しているので、GeForce RTX 3080 Tiと組み合わせても大丈夫じゃないか? となったわけだ。

 というわけで広報経由でDAGGER PROを送ってもらい、この環境に組み込んで試用してみたが、まさにビンゴだった(なおATXへの装着は、付属の変換ブラケットを使う)。今回はPalitの超大型ビデオカード「GeForce RTX 3080 Ti GameRock OC」と組み合わせてみたのだが、マザーボード最上段のスロットにビデオカードを挿しても、クリアランスにはかなりの余裕があった。ひとまず、Mini-ITXといった環境のみならず、クリアランスが厳しいATX環境でも、DAGGER PROはかなり有効的な製品であることは、おわかりいただけたのではないかと思う。

iPhone 5Sと比べてみると、その小ささがよくわかる。これに850Wが詰まっているのだ
奥行きが100mmしかないDAGGER PROだと、ビデオカードが最上段のスロットにラクラク入る。ちなみにC9Z490-PGWは拡張スロットが7段分あるので、6段しかないほかのマザーボードならさらにクリアランスが広がる。ケースに入る長さなら、どんなビデオカードでもOKだ

 それ以外にも組んでみてわかったメリットはいくつかある。1つ目はケーブルがモジュラータイプでも、フラットタイプになっているため柔らかく取り回しがしやすいこと。ちなみにCPU補助用12VとPCI Express用のケーブルは、デバイス側の先端から二股に分かれているのではなく、電源の根元側から二股に分かれているタイプ。電源付近でケーブルをまとめられるため、全体的な見栄えは良くなる。

 なお、850Wモデルとしてはケーブル/コネクタは少なめ。メイン用20+4ピンのほか、CPU補助用12Vが8ピンと4+4ピンの組み合わせ、PCI Express 6+2ピンが4基あるが、ドライブやペリフェラル用としてのケーブルはSATA×3+ペリフェラル用4ピンが1本、SATA×2+ペリフェラル用4ピン+FDD用4ピンが1本のみ。もっとも、ストレージがM.2 SSDに移行している中、一般ユーザーがこれで不足することはまずないだろう。

製品パッケージ
パッケージを開封
付属品など
DAGGER PROのラベルは両側に貼られており、ファンの向きに関わらずラベルが見える
ファンは92mmで、負荷20%以下の場合はファンが回らない。実際の環境でもかなり静かだった
各ラインの出力。+12Vだけで最大850Wの出力ができる
一応開けてみた。パーツがギュッと詰まっている

 もう1つは手に持ちやすい大きさと重さであることだ。ATXサイズの電源は一般的に重く、ケースに組み込む際にはほかのパーツとぶつからないよう細心の注意を払いながら、「うんとこしょ」と設置するものが多い。筆者は数年前、電源を設置する際に人生初のギックリ腰を体験し、大変な思いをさせられたことがあるのだが、その点DAGGER PROは片手でラクラク持ち上げられ、姿勢や関節への負担は少なかった。また、周辺との干渉も少ないため所定位置への設置も極めてスムーズだった。

とにかく組みやすい大きさと重さ。これならどんな作業も苦にならない

 まさか電源ユニット1つでここまで語ることが多いとは筆者も思わなかったのだが、それぐらいDAGGER PROは筆者にとってクリティカルヒットした製品だった。ちなみに価格は850Wで2万円を切っており、「SFXに850Wの容量を詰め込むのに苦労しました。しかもやや特殊なフォームファクタだし思いっきりプレミアムつけちゃお」というわけでもない良心的な価格。コンパクトさや取り回しのしやすさを考慮すれば、むしろお買い得ではないだろうか。