やじうまミニレビュー
スマホ連携でブラッシングから健康をサポート「フィリップス ソニッケアー ダイヤモンドクリーン9000」
2020年6月17日 06:10
新型コロナウイルスについてはまだよくわかっていないが、近年、インフルエンザのような感染症の予防には、うがいや手洗いのほか、口腔ケアも重要だとされている。歯垢のなかで繁殖した細菌が出すプロテアーゼが、ウイルスの細胞への侵入を容易にするらしい。そして一般的には、手磨きよりは電動歯ブラシを使ったほうが、短時間で綺麗に、かつ優しく磨くことができると言われている。
筆者も、以前は歯をゴシゴシと手で磨くのが好きだったが、いわゆる「歯茎下がり」に気がついてからは電動歯ブラシに切り変えた。個人の主観だが、たしかに手磨きよりも電動ハブラシのほうが歯茎に優しいようだ。
今回、フィリップスから試用サンプルを提供された「フィリップス ソニッケアー ダイヤモンドクリーン 9000」は、2020年5月25日に発売された最新の充電式電動歯ブラシだ。「ソニッケアー」というのはフィリップスの充電式電動歯ブラシのブランド名である。1分間に約31,000回の高速振動とそれによって生み出される「音波水流」なる唾液の流れで歯垢を除去でき、かつ、手磨きの50%のブラシ圧で歯を磨けるため歯と歯茎にもやさしいというのが売り文句だ。
なかでも、フラッグシップである「ダイヤモンドクリーン」シリーズは、充電器上にセットして使えるデザイングラスを付属。グラスに入れるだけで充電できるスタイリッシュさをアピールしている。大きな特徴は2017年からはIoT対応となったことである。歯ブラシのハンドル本体がBluetoothを使ってスマホアプリと連携することで、磨いた回数や時間、ブラッシングの圧強さなどをスマホ画面で確認でき、適切なブラッシングをサポートできる。
また、ブラシヘッド下部にはRFIDが搭載されており、本体のハンドル部分でチップを認識。ステイン除去やホワイトニングなど、使用するブラシヘッドの種類に合わせて、振動を最適モード・強さに自動で調整するという。
「9000」シリーズは、そのダイヤモンドクリーンシリーズの普及価格帯モデルだ。ただし普及価格帯といっても価格はそれなりで、6月15日現在のAmazon.co.jpでの価格は税別22,182円である。本体のカラーは2色。ホワイトとピンクだ。ピンクはほのかで淡い色となっており、日本の桜をイメージしたそうだ。
このほか、充電可能なトラベルケースも付属する。充電は裏面に収納されたUSBケーブルで行なう。外観も合皮素材でかなりかっちりしている。ケースには本体のほか、ブラシももちろん収納可能で、そのまま充電できる。なお、標準で付属しているブラシヘッドは「プレミアムクリーンブラシヘッド」1つである。
4種類の歯磨きモード、3段階の強さ
実際の使い勝手はどうか。電動ハブラシにもいくつかのタイプがあり使い方が異なるのだが、フィリップスの音波ハブラシの使い方は基本的に単純で、ブラシヘッドをハンドルにセットし、電源を押せば振動がはじまるので、歯にあてるだけだ。1カ所あたり2秒くらいあてて、磨き終わったら次の部位に移す。ゴシゴシと手を動かす必要はない。むしろ動かしてはいけない。
1回あたりの歯磨きは2分間。2分のあいだに20秒ごとにビープ音と振動が一瞬停止するので、その都度、ブラッシングの部位を変えていくのが全体をまんべんなく磨くコツである。要するにペースメーカーだ。20秒ごと、つまり6分割なので、2カ所の奥歯と前歯に分けて磨いていくのがいいとされている。ちなみに筆者がもともと使っていた下位機種は30秒ごとだった。
筆者の場合も最初はそうだったのだが、電動歯ブラシを1回も使ったことがない人は、最初は、初めての感覚にびっくりすると思う。だが、すぐに慣れてしまうのでそれほど心配する必要はない。しかし、どうしても慣れない人に対しては「イージースタート機能」という機能がある。通常よりも弱い振動から始まって、15回目くらいで通常の振動へと強めていく機能だ。デフォルトではオフになっており、セット方法の詳細は取扱説明書に書かれている。
「ダイヤモンドクリーン9000」の場合は、歯磨きのモードが4種類用意されている。通常モードの「クリーン」、それにホワイトニングを加えた「ホワイトプラス」、歯茎ケアを重視した「ガムヘルス」、そしてディープクリーンプラスだ。強さ設定も3種類ある。上述のようにブラシヘッドのRFIDからタイプは自動設定されるのだが、手で選びなおすこともできるというわけだ。
率直に言って、ユーザーとしてはチップ認識はほとんど意識することはない。ただしこれは筆者が基本的に通常モード・通常のブラシヘッドを使う単純なユーザーだからで、積極的に「ステイン除去ブラシ」や「歯茎ケアブラシ」(いずれも別売り)を日常的に使いわける、たとえば曜日によって複数の異なるブラシヘッドを使い分けているような人ならば便利かもしれない。
フィリップスは「プレミアムクリーンブラシヘッド」を使った場合、手磨きの10倍の歯垢除去力があるとしている。ここからは完全に筆者の好みだが、標準付属の「プレミアムクリーンブラシヘッド」はやや大きすぎるなと感じた。表面積が大きい方が一度に多くの歯が磨けるし、そのぶん適当に動かしても全体がより短時間で磨けるのは当然なのだが、小さめのブラシヘッドのほうが口のなかで小回りがきくというか、磨きたいところだけを磨けるように感じる。
なお、フィリップスのブラシヘッドにはおおむね互換性がある。つまり、より安価な下位モデル用のブラシヘッドも使える(全てではない)。試しに差し替えてみたところ、やはり普通に使えた。ただし下位モデルのブラシヘッドにはRFIDは内蔵されていない。このあたりは歯磨き効果もさることながら、本当に「好みの問題」なので、いろいろ試してみるしかない。たとえば最初に大きなブラシで磨いたあとに、小さいヘッドのブラシで再度磨くといった使い方をしている人もいるようだ。
交換ブラシを自動再注文できる「Philips sonicare」アプリ
さて、特徴であるスマホ連携だが、これもじつのところとくに必要なければ、連携しなくても使える。もちろん今回は試してみた。iOS/Androidに対応している「Philips sonicare」アプリをダウンロードし、ログインするか、「MyPhilips」アカウントを新規に作成する。そしてBluetoothをオンにして、ハブラシハンドルを手近に用意して、アプリから連携する。
筆者の場合は、なぜかアプリからはうまく連携ができなかったので、一度スマホの設定画面からBluetooth機器連携を選び直してから連携したが、この手の作業に慣れている人ならば、それほど戸惑うことはないだろう。あとはただ磨けばいい。
「ダイヤモンドクリーン9000」の場合、アプリで作られるのは「プログレス」と呼ばれるブラッシングレポートである。毎日のブラッシング回数、ブラッシング時間、ブラッシングの力加減が表示される。要するに歯磨きログだ。あまりにブラッシング圧が強い人の場合は警告されることで自分の磨き方の間違いを客観視することができるのだろう。もっとも、電動ハブラシの場合、普通に使えば使用時間は一定だ(デフォルトでは2分間)。また、力加減にしても、慣れていればとくに何か警告されることはない。
磨きながらアプリを使うと、タイマーが表示される。もちろん、常にスマホ片手に磨く必要はない。磨いたあとにスマホアプリを立ち上げて歯ブラシの近くに持っていくと、自動的にログが更新される。
もう1つ、おそらくメーカー側にとって重要な機能がある。ブラシヘッドの交換推奨までの回数カウントダウンが表示されるのである。ブラシヘッドの自動注文もアプリから可能だ。Amazonと連携することで、自動再注文できるようになっている。ちなみにブラシヘッドは3カ月に1回の交換が推奨されている。この手の消耗品については既に「Amazon定期便」を使っている人も少なくないと思うが、生真面目な人にはおすすめの機能だ。
おもしろいなと思ったのは「私の歯科予約」という機能だ。カレンダーアプリと連携することで、歯医者の受診予定を「Philips sonicare」から設定することができる。歯医者に定期的に通って歯石除去をやってもらっている人もいると思うが、そういう人向けの機能である。つまり、歯に関するケアについては、全てこのアプリから管理しましょうというわけだ。
ただ、わざわざアプリと連携する意味がユーザーにとってそれほどあるかというと、筆者の場合は「それほどはなかった」という感想だ。メーカーにとってはユーザーの使用データが取得できるしマーケティングなどに使えるので利点があるのだろう(最初にそれらのデータを送ることについて許諾が求められ、OKしないとアプリが使えない)。しかし一ユーザーとして見ると、実際にアプリを使ったことで、自分のブラッシング圧が間違ってなかったことを確認できた点は良かったが、それ以外のメリットはそれほどない。もし面倒ならばアプリ連携はとくに気にせずに、単品で普通に使うほうがいいのではないかと思った。
また、せっかくスマホアプリを使うのであれば、単なる歯磨きログだけではなく、もうちょっと具体的なアドバイスが欲しい。1週間程度の歯磨きデータを取れるのであれば、たとえば「あなたは上あごの右前側は磨き時間が短い傾向があります。もう少しそこを丁寧に磨きましょう」といったアドバイスも可能なはずだ。スマホ連携するのあれば、まずは最低限、それくらいの機能が欲しいし、さらに加えて何かしらの追加機能が欲しいなあと思うのは贅沢だろうか。
もう1点、上述のように筆者には大きめのブラシヘッドがいまひとつ合わなかったので、RFIDを内蔵していないブラシヘッドに一度交換してみた。そうすると、なぜかそれまでの使用履歴が表示されなくなってしまったので、再度ペアリングをやり直す必要があった。すると、クラウド上にあるデータから履歴が復元された。履歴がクラウドに保存されているのは良いのだが、アプリ自体の安定性にまだ、やや課題があるのかもしれない。普段づかいのアプリにおいて安定性はとても重要だと思うので、ここは改善してもらいたい。
IoTで自分の歯磨きを客観視
フィリップスによれば、日本の電動ハブラシ普及率は2割程度。オランダやスウェーデンの6割、ドイツやイギリスの5割程度と比べると低い数字だ。理由は手磨きで満足している人が多いこと、価格が高いこと、ランニングコストがかかることなどが挙げられている。電動ハブラシユーザーの筆者にも納得できる理由だし、人間の生活習慣を変えることは難しいだろうなと思う。
ただ、電動歯ブラシから手磨きに戻るかと問われると、筆者自身にはそのつもりはまったくない。9000シリーズは自分のような人間にはややオーバースペックだったが、電動ハブラシにはより入手しやすいモデルも色々あるので、検討してみてはどうだろうか。
ちなみに、「ダイヤモンドクリーン9000」の場合はアプリに表示されるのはプログレスレポートだけだが、最上位機種の「ダイヤモンドクリーンスマート」の場合は、単なる歯磨きログだけはなく、歯型が表示され、部位ごとの強さが適切かどうかを閲覧することができるそうだ。
自分の歯磨きが正しく行なえているかどうかは、歯医者さんで歯磨き指導でも受けなければ、なかなか確認する機会がない。「どうも自分の歯磨きは間違っているのではないか」と懸念を持っている人は、IoT歯ブラシを使って客観視して見るのもいいかもしれない。何しろ、歯は一度ダメになったら戻らないのだから。