やじうまミニレビュー

人をかぎりなくダメにする? 10ボタン搭載の空中操作デバイス「Relacon」

やじうまミニレビューは、1つ持っておくと便利なPC周りのグッズや、ちょっとしたガジェットなど幅広いジャンルの製品を試して紹介するコーナーです。
エレコム「Relacon」。今回紹介するBluetooth接続モデル(M-RT1BRBK)のほか、2.4GHz帯レシーバが付属したモデル(M-RT1DRBK)もラインナップする

 本体を片手で握り、親指でボールを動かしてポインタを動かす、空中操作デバイスの歴史は古い。リラックスした姿勢でPCを使う用途のほか、プレゼンでも活躍するこれら製品は、かつては有線、その後無線タイプも加わり、販売元を変えつつロングセラーとなっている。

 もっとも、過去のモデルにはスクロールに非対応という致命的な欠点があり、お世辞にも快適に使えるとは言えなかった。寝転がってWebブラウジングを行なう目的で製品を購入したものの、ほどなくしてお蔵入りになった経験がある人もいるはずだ。

エレコムの「Relacon」は、過去のモデルの形状を踏襲しつつ、ボールの手前にホイールを、さらには合計10個ものボタンを搭載し、Webブラウジングをはじめさまざまな用途に対応できるようにした製品だ。同社ではハンディトラックボールと呼称している(エレコム、リラックスした姿勢でポインタ操作が可能なハンディトラックボール参照)。

左右どちらの手でも使えるデザイン。ホイールの配置は合理的

 本体は左右どちらの手でも使えるデザインを採用している。それゆえ利き手での利用はもちろん、疲労や怪我など、利き手でのマウスの操作が行なえないときの補助デバイスとしても活用できる。

 重量は公称約77gだが、ここに単4形乾電池×2が加わるので、実測では92gと、サイズのわりにそこそこずっしりしている。ただし実際に使っていても重量のせいで疲れることはなく、快適な操作性を実現するための適度な重みという印象だ。

 本体前方のボタンは親指で操作するほか、その先、本体の先端部分に上下に並んだ2つのボタンがマウスの左右ボタンの役割を果たす。どちらも人差し指で操作することが前提だが、後述のユーティリティでボタンの役割を入れ替えたうえで、人差し指と中指を使い、マウスと同じ指の割り当てを再現することもできる。

 そして本製品の大きな特徴であるホイールは、ボールの手前に配置されている。ボールの高さよりわずかに低い位置にあるため、ボール操作時に干渉することもなく、使い勝手は良好だ。一般的に、ホイールを回すときはポインタは動きを止めているはずで、同じ指で操作することでこの2つを排他にしているのは合理的だと感じる。

 特筆すべきなのは、未使用時にセットしておけるスタンドが付属していることだ。充電などのギミックは備えておらず、文字どおりの「台」なのだが、未使用時には手近なところに放置することになりがちな同種製品と違い、置き場所にも配慮しているのは秀逸だ。

ボールの手前にホイールがある。チルトには対応しない
側面。中央が電源スイッチ、その右側が分解能の切り替え(500/1000/1500カウント)に使うボタン。Bluetoothのペアリングにも利用する
本体の先端、上下に並んだボタンがマウスの左右ボタンに相当する。ちなみに下側が左クリックに相当する
単4形乾電池×2本で駆動する
通常の持ち方。人差し指で、先端の2つのボタン(左右ボタンに相当)を操作する
人差し指と中指で先端の2ボタンを操作する握り方も可能だが、後ろ寄りのボタンを押しにくくなる
未使用時に置いておくためのスタンドが付属する
スタンドに置いたところ。常時使うものではないだけに、これがあるだけでずいぶん違う

10ボタン搭載でショートカットの割り当てが自在

 さて本製品の特徴としてもう1つ、合計で10個ものボタンを搭載していることが挙げられる。メーカーが用意するユーティリティを使うことで、これらボタンにさまざまなショートカットを割り当てられる。

 具体的なボタンの配置は写真をご覧いただきたいが、ホイールボタンの左右に、Webブラウザの「戻る」、「進む」ボタン。さらにその手前には、上下に音量調整、左右に「前の曲」、「次の曲」、中央に「再生/一時停止」が割り当てられたメディアコントロールボタンが用意されている。

 たとえばこれらをすべてをブラウジング用に割り当てた場合、「進む」、「戻る」のほか「PageUp」、「PageDown」、「次のタブ(Ctrl+Tab)」、「前のタブ(Ctrl+Shift+Tab)」、「タブを閉じる(Ctrl+W)」と割り当てても、まだボタンが1つ余る。追加で割り当てるならば「リロード(F5)」くらいだろうか。

 いずれにせよ、これだけ割り当てられれば、寝転がってリラックスした姿勢であらゆる操作が可能で、人をダメにするには十分だ。遅延の設定やマクロなど、ゲーミングマウスのような詳細な設定こそできないものの、Webブラウジングやメディア再生といった用途であれば不満はまったくない。

ホイールの左右にあるボタンのほか、その下段にはメディアコントロールに使う上下左右および中央ボタンが用意されている
同社のユーティリティを使うことでこれらボタンに機能を割り当てられる。これはデフォルトの割り当て
プリセットされたさまざまなボタンのほか、任意キーやジェスチャーの割り当てにも対応する

PCをパートナーに自堕落な生活を送りたい人に

 いわゆる多ボタンマウスは、いったん握り直さないとすべてのボタンを押せないことも多いが、本製品はそのままの握り方で、すべてのボタンを操作できる。強いて挙げれば、先端の左右ボタンがもう少しくぼんでいて指をかけやすければ、よりフィット感は高かったように思うが、全体からすると些細な問題だ。

 唯一の弱点は、ポインタの位置をピタッと合わせたにもかかわらず、ボールから指を離すときにわずかにボールが回転し、ポインタが微妙にずれるという、同種製品の欠点を完全には払拭できていないこと。過去製品に比べればはるかにマシなのだが、これについては満点はつけにくいことは、知っておいたほうがよいかもしれない。

 とはいえ全体としての完成度は高く、7千円台(2.4GHzレシーバタイプは6千円台)の価値は十分にある。筆者はもっぱら、右手が疲れたときにチェアを目一杯倒して左手でブラウジングする用途で使っており、長時間作業をしたあとの気分転換用に欠かせなくなりつつある。PCをパートナーに自堕落な生活を送りたい人に、満を持して(?)おすすめできる一品だ。

PCで使用中。おもにWebブラウジング用途で重宝する。ベッドやソファに寝転がっての操作にも最適だ
ホイールの回転方向がWindowsと逆向きになることさえ目をつむれば、iPadでも利用できる
ボール径は非公開だが、実測したかぎりでは25mm径のようだ