やじうまミニレビュー
クリエイター向けホイールデバイス「Rev-O-mate」
~回転式ダイヤルと10個のボタンを備えた入力補助デバイス
2018年5月17日 06:00
株式会社ビット・トレード・ワンの「Rev-O-mate」は、ロータリー式のダイヤルに、10個のボタンを備えた入力機器で、右手でマウスやペンタブレットを操作しつつ、左手で本製品を使って補助操作を行なうことを前提とした、クリエイター向けの入力補助デバイスだ。
イラストレーターであるJACO氏のアイデアをもとに開発されたこのデバイスは、2017年秋にKickstarterで出資の募集が行なわれ、この4~5月にかけてEarlyBirdsプランまでの出荷が行なわれた(イラスト描きや画像編集がはかどる10ボタン+ダイヤル式デバイス「Rev-O-mate」)。
この先、一般販売も行なわれるであろう本製品を入手したので、簡単な使い勝手とともに、どのような製品かを紹介しよう。
手のひらにすっぽり収まるロータリー式デバイス
本製品は、大型のロータリーダイヤルの基部に10個のボタンを備えた、入力補助デバイスだ。エルゴノミクスマウスやトラックボールのように、どちらかの手に合わせたボタンレイアウトを採用しているわけではなく、完全な左右対照形であることが特徴だ。
ロータリー式の入力デバイスといえば、かつて日本国内でも販売されていた、Griffin Technology「PowerMate」を思い浮かべる人も多いだろう。実際、本製品のアルミ筐体はPowerMateと非常に質感が近く、サイズもほぼ同等だ。PowerMateを使ったことがある人ならば、PowerMateに10個のボタンを追加した製品だと考えれば、理解しやすいだろう。
ボタンは「左側に3つ」、「右側に3つ」、「手前に4つ」という3グループに分かれており、それぞれの間は若干広く空いている。
もし10個のボタンが均等な間隔で配置されていたならば、目視なしでボタンを識別するのはまず不可能だが、本製品はこの間隔があるおかげで、どのボタンなのかを指先だけで識別できる。さらに、手前4つの左右のボタンは突起も設けられているので、間違えることはまずない。
ロータリーダイヤルは無段階で、ビデオ編集デバイスのジョグダイヤルなどに近い操作性だ。ロータリーダイヤルを上から押し込む動作にも操作を割り当てられるので、基部の10個のボタンと合わせて、プログラマブルなボタンを11個備えることになる。
クリアラバー素材の底面は発光するギミックを備えており、後述するプロファイルを切り替えた時に、どのプロファイルを適用したかを色で知らせてくれる仕組みになっている。常時点灯させることもできるほか、一瞬だけ光って、すぐに消えるように設定することもできる。明るさも3段階から調整できるので、特に目ざわりだとは感じられない。
ちなみに、ナイロンメッシュ素材のケーブルはかなりの反発力があり、本体が引きずられて動きかねないほどだ。筆者は当初見落としていたのだが、購入時点では底面に保護シートが貼られており、これをはがしてデスク上に置いてやれば、ノンスリップ加工により容易には滑らなくなる。
本製品の底面は完全な円形なので、向きが変わっても持ち心地に変化がない。それゆえ、ケーブルが12時の方向から出る向きでしっかりと固定することで、ボタンの押し間違いを防ぐことができるはずだ。
【お詫びと訂正】底面スリップ加工に関する記述を修正しました。
3つのプロファイルを切り替えて、11個のボタンを割当可能
本製品の設定ツールは、2018年6月に正式公開が予定されており、2018年5月14日時点では、ベータ版に相当する設定ツールと、Photoshop、Illustrator、CLIP STUDIO、SAI向けの4種類のプロファイルのみが利用できる。
ここでは、現在利用可能なベータ版設定ツールとプロファイルをもとに、本製品でできることと、その設定方法をチェックしていく。本記事の公開時点では、すでに内容が変わっている可能性があり、また正式公開後にさらに大幅に変更される可能性が濃厚であることを、あらかじめご承知置きいただきたい。
まずは設定ツールの画面をご覧いただこう。本製品は3つのプロファイルを登録し、切り替えて利用できる仕組みになっている。つまり、最大3つのソフトについて、それぞれのソフトに特有のショートカットを割り当てて使えると考えればよい。
上記のPhotoshop向けプロファイルの場合、ロータリーダイヤルを押下する操作にはUndoが、ロータリーダイヤルにはキャンバスの回転、拡大縮小、ブラシサイズおよびプロファイル自体の変更という4つの操作が割り当てられている。その下の10個のプリセットボタンには、これらダイヤル機能の切替のほか、消しゴム、手のひら、スポイト、保存といった操作やツールが割り当てられている。
もっとも、ユーザによっては、ここで割り当てられている消しゴムツールや手のひらツールは、あまり利用頻度が高くないこともあるだろう。その場合は、プリセットされたほかの機能、たとえばペンやブラシ、切り抜きツールや移動ツールなどを、リストから選んで割り当てればよい。
これ以外にも、自分で登録したマクロを割り当てることもできる。キーの組み合わせやその順序はもちろん、ボタンの押下時間など、細かい設定に対応している。現時点では未対応だが、今後はボタンの同時押しもサポートする予定があるとのことだ。
ダイヤル機能に関しては、マルチメディアキーなどを割り当てることもできるほか、2個までのキーのコンビネーションであれば、マクロを使わなくとも簡単に登録できる。
ちなみに、これらの設定内容はすべて本体内のメモリ領域に保存されるので、設定済みの本製品をほかのPCにつなぎ直しても、標準ドライバのみで同じ操作が行なえる。
ゲーミングマウスのように、別のPCに接続して使う機会の多い入力デバイスにはよくある機能だが、据え置き利用が多いであろう本製品で同機能がサポートされているのは面白い。今回はチェックまでは行なっていないが、ほかのPCに設定をコピーする用途でも使える可能性がある。
クリエイター向け用途以外では、やや宝の持ち腐れ?
以上のように、クリエイター向けに設計されている本製品だが、ではもっとシンプルな操作、たとえばWebブラウジングなどにおいて、本製品を使う価値はあるだろうか。結論から書いてしまうと、利用自体はもちろん可能だが、やや宝の持ち腐れになってしまうというのが、しばらく使った上での印象だ。
なにせ本製品は、10(+1)個という、多数のプログラマブルなボタンを有している。Webブラウジングに用いるキーといえば、細かいところまでこだわればそれ以上の数はあるが、実際に使うのはせいぜい数個程度だろう。そのため、優先順位を付けて割り当てていっても、あからさまにキーが余ってしまう。
もう1つネックとなるのが、本製品はポインタを移動させる機能がないため、最終的にはマウスの併用が必須になることだ。
もちろん開いたままのタブを切り替えたり、上下にスクロールしたり、タブを閉じるといった操作は行なえるのだが、新しいリンクをクリックできないのは、ウェブブラウジングでは致命的だ。もしそうした用途であれば、左手で使えるトラックボールを使ったほうが、効率は上がるだろう。
といったわけで、クリエイターが作業の効率化のために導入し、サブの用途としてブラウザやメディアプレーヤーのショートカットを割り当てて使うのならまだしも、後者が主目的であれば、本製品はややそぐわない製品と言える。
機能の豊富さはピカイチで、ハードウェアの品質の高さも折り紙つき、かつ単価も1万円以下であるなど、魅力的なデバイスだが(実際、一から作り上げたハードウェアとしては完成度はかなりのものだ)、購入にあたっては機器の特性とその目的をよく理解した上で、判断することをおすすめしたい。