やじうまミニレビュー
標準DDR4-2400動作が特徴のApacer製オーバークロックメモリ「Blade Fire」
2018年3月30日 11:00
Apacerの「Blade Fire」シリーズは、同社がゲーミング向けとして位置づけているDDR4メモリモジュールだ。今回、台湾で広報代理を務めるCyberMediaによるサンプル提供があったので、ご紹介しよう。
じつは、本製品は2016年に発表され、日本でも2017年3月にオーバークロックワークスで販売された実績があったのだが、こちらは並行輸入品扱いであり、販売がすでに終了している。2018年に入ってから、エスティトレードが正規代理店となり、再び取り扱いを開始するという。
Blade Fireシリーズはゲーミング向けということで、高クロックモデルも用意するほか、ユニークなデザインのヒートシンクと、LEDイルミネーションを備えている。1モジュールあたりの容量は8GBで1ランク構成。クロックは2,800MHz/3,000MHz/3,200MHzの3種類、容量は8GB(1枚)/16GB(2枚組)/32GB(4枚組)の3種類となっている。
レイテンシおよび電圧は、2,800MHzモデルが1.2Vで17-17-17-36、3,000MHzモデルが1.35Vで16-18-18-38または16-16-16-36、3,200MHzモデルが1.35Vで16-18-18-38となっている。今回試用したのは、16GB(2枚組)/3,000MHz/16-18-18-38のモデルだ。
ヒートシンクは黒塗装された金属製(材質は不明)となっており、Bladeの名のとおり、刀をイメージしたシルバーのデザインが施されている。本体上部もコンバットナイフを彷彿とさせるような非対称デザインでユニークだ。
前後のヒートシンクに挟まれるかたちで、赤いプラスチックのクリアパーツがネジ止めされており、基板上のホワイトLEDを透過して、動作中に赤い光を放つ。この赤い光は1分間あたり平均で44回明滅する、心臓の鼓動をイメージしたものとなっている。隙間から若干の白い光も見えるため、ほかのパーツが赤でも白でも似合う印象を受けた。なお、このイルミネーションは設定したりオフにしたりはできない。
モジュールは基板の表記からするに10層基板だと推測される。標準的なDDR4メモリは8層のため、より優れた信号品質が期待されるのだが、本製品は上部にLEDやLED制御関連の部品を実装している関係上、層を増やしたのは賢明な判断だろう。メモリチップは片面実装となっているが、裏面にも空きパターンがあり、デュアルランクを想定した基板だと推測される。
実装されているチップはSamsungの「K4A8G085WB-BCPB」。Samsungの製品情報によれば、容量は8Gb、速度は2,133Mbps、電圧は1.2V、パッケージは78FBGAなどとなっている。データシートを見ればわかるとおり、いわゆる「Bダイ」に属するもので、高いオーバークロック耐性に定評があるものとなっている。
ちなみに、Samsung Bダイのバリエーションモデルとして、2,400Mbpsネイティブ動作の「-BCRC]、「-BIRC」、2,666Mbpsネイティブ動作の「-BCTD」、「-BITD」、そして3,200Mbpsネイティブ動作の「-BIWE」などがある。これは、Bダイの設計自身が高クロックに特化していることを裏付けるものだとも言えよう。
今回はテストをするにあたり、AMD Ryzen 5 2400G環境を用意した。Intel環境でメモリのオーバークロックを行なっても、恩恵を受けられるシーンが限られるのだが、Ryzen Gシリーズは内蔵グラフィックス性能が強力である一方で、メモリの速度が最大の足かせとなっていることはこれまでお伝えしたとおり(悩ましいRyzen G向けメモリの選択参照)。本製品はDDR4-3000対応のメモリではあるが、Ryzen Gでどの程度のクロックまで達成できるのかが焦点となる。
結論から言ってしまえば、本製品はスペックの上限であるDDR4-3000にもっとも近い設定のDDR4-2933では起動せず、DDR4-2800では不安定。安定動作するのはDDR4-2666(タイミングは16-18-18-38)まで、という結果。それに伴う、DDR4-2133(同)設定時からの3D性能の向上は11%~14%前後となった。
SiSoftSandra 2017(SP4) | |||
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DDR4-2133 | DDR4-2400 | DDR4-2666 | |
整数メモリー帯域 | 24GB/s | 27.88GB/s | 29.2GB/s |
浮動小数点メモリー帯域 | 24GB/s | 27.69GB/s | 29.5GB/s |
3DMark Fire Strike | |||
Graphics score | 2876 | 3204 | 3287 |
Graphics test 1 | 14.07fps | 15.76fps | 16.05fps |
Graphics test 2 | 11.25fps | 12.49fps | 12.88fps |
Physics score | 9968 | 9509 | 9657 |
Physics test | 30.95fps | 30.19fps | 30.66fps |
Combined score | 917 | 1030 | 1075 |
Combined test | 4.27fps | 4.79fps | 5fps |
3DMark Sky Diver | |||
Graphics score | 10528 | 11494 | 11714 |
Graphics test 1 | 48.33fps | 52.39fps | 53.4fps |
Graphics test 2 | 47.82fps | 52.58fps | 53.58fps |
Physics score | 8693 | 9042 | 9189 |
8threads | 128.19fps | 143.5fps | 146.43fps |
24threads | 81.31fps | 87.4fps | 88.54fps |
48threads | 51.01fps | 54.09fps | 55.22fps |
96threads | 29.21fps | 30.39fps | 30.88fps |
Combined score | 10159 | 11322 | 11484 |
Combined test | 41.81fps | 46.6fps | 47.26fps |
今回試用したASRockのマザーボード「AB350 Gaming K4」は、以前のレビューどおりDDR4-3200まで問題なく動作させられるだけのポテンシャルを秘めており、BIOSの設定ではメモリ周りの設定をかなり柔軟に行なえる。本製品は、オーバークロック時のタイミングなどを記録したX.M.P 2.0を持っており、AB350 Gaming K4でも問題なく読んで適用できるのだが、その設定で動作しないだけでなく、筆者が手動でタイミングを緩めたりしても、DDR4-2933で起動することはできなかった。本製品はIntel Z170/Z270/Z370環境に最適化されているとのことなので、Ryzenへの最適化が進んでいないのだろう。
ちなみに今回、メモリのオーバークロックにあたって、Ryzen向けにメモリのタイミングや設定を自動的に計算してくれるツール「Ryzen DRAM Calculator 1.1.0 Beta 1」を用いて設定してみたのだが、これもうまくいかなかった。
もっとも、このツールはSamsung Bダイで3,200Mbpsをターゲットにすると、いきなり14-14-14-30というタイトなタイミングを提示する、競技オーバークロッカー向けのものであるのも確かではあるが、ターミネーションブロックのインピーダンスを設定する項目を提示するなど、オーバークロック初心者が参考にできるような項目もある。Ryzen環境でメモリクロックを上げたいのならば、試してみる価値はあるだろう。
ちなみに、本製品にはほかのオーバークロックメモリにはあまりない特徴がある。それはX.M.P. 2.0領域ではないスタンダードなSPD情報領域において、JEDECのDDR4-2400(17-17-17-39)に準拠したタイミングが記録されているということだ。
市場にあるオーバークロックメモリのSPD情報の多くは、DDR4-2133のプロファイルしか保存されておらず、BIOSで明示的に指定しないかぎり、DDR4-2133で動作するようになっている。一方本製品は、Kaby LakeやRyzenといったDDR4-2400にネイティブ対応したCPU環境で使用すれば、とくに設定せずともDDR4-2400で動作する点がポイントだ。
Ryzen G環境でこそ高いクロックを達成できなかったが、Samsung Bダイを使用しているだけにそのポテンシャルは高い。見た目もそこそこインパクトがあり、ケース内に華を添えたいユーザーにも好適。あとは国内で再販が開始されることに期待したい。