レビュー

悩ましいRyzen G向けメモリの選択

 今回は、先日発売となったRaven Ridgeこと「Ryzen 5 2400G」と「Ryzen 3 2200G」の2製品が持つGPU性能と、メインメモリの動作クロックの関係をベンチマークテストでチェックする。

 過去のAPUと同じようにメインメモリのクロックが高いほどGPU性能も高くなるのか。また、各メモリクロックでどの程度のGPU性能となるのかを確認して、Raven Ridgeと組み合わせるメモリ選びの参考にしてもらいたい。

GPUの規模に対して狭いメインメモリの帯域幅と、それを左右するメモリクロック

 Raven Ridgeが備えるGPUコアは専用のVRAMを持たないため、メインメモリをVRAMとして利用することになるのだが、メインメモリの帯域幅がGPUコアのスペックに対して狭く、GPU性能のボトルネックとなっている。

 例えば、上位モデルであるRyzen 5 2400Gが備えるRadeon RX Vega 11は、11基のCompute Unit(CU)を持ち704基のストリームプロセッサ(SP)を有しており、GPUの規模としてはRadeon RX 550の8CU(512SP)を上回っている。

 しかし、7Gtps動作のGDDR5メモリを128bitのメモリインターフェイスで接続したRadeon RX 550のメモリ帯域幅が112GB/secであるのに対し、デュアルチャネル動作時のDDR4-2933メモリのメモリ帯域幅は約46.9GB/secとRadeon RX 550の半分にも満たない。

【表1】Raven RidgeのGPUとRadeon RX 550の比較
モデルナンバーRyzen 5 2400GRyzen 3 2200GRadeon RX 550
アーキテクチャVegaPolaris
Compute Unit11基8基8基
ストリームプロセッサ704基512基512基
テクスチャユニット44基32基32基
GPUクロック1,250MHz1,100MHz1,183MHz
対応メモリDDR4GDDR5
メモリクロック2,933 Mtps7 Gtps
メモリインターフェイス128bit (2ch)128bit
メモリ帯域幅46.9GB/sec112GB/sec

 このGPUの規模とメモリ帯域幅の不均衡を左右する要素の1つがメインメモリの動作クロックであり、高クロックなメモリを使うことで、GPUが利用できるメモリ帯域幅を広くしてパフォーマンスの向上を図るというのが、今回の検証の趣旨なのである。

テスト機材

 今回の検証では、DDR4-3200動作対応のオーバークロックメモリである「G.Skill F4-3200C14D-16GFX」を使って、DDR4-2133~DDR4-3200までのメモリクロック5種類をテストする。DDR4-2666以下のメモリクロックでは一般的なスタンダードメモリの仕様に合わせた設定とし、DDR4-2933以上ではオーバークロックメモリであるG.Skill F4-3200C14D-16GFXのXMP設定に基づいた設定を適用した。

 マザーボードには最新のベータ版BIOS(UEFI)を適用した「ASRock Fatal1ty AB350 Gaming K4」を使用。その他の機材は以下の通り。

【表2】メモリクロックと動作設定
メモリクロックタイミングメモリ帯域幅(2ch時)動作電圧
DDR4-213315-15-15-3634.1GB/sec1.20V
DDR4-240017-17-17-3938.4GB/sec
DDR4-266619-19-19-4342.7GB/sec
DDR4-293314-14-14-3446.9GB/sec1.35V
DDR4-320014-14-14-3451.2GB/sec
【表3】テスト機材一覧
CPURyzen 5 2400GRyzen 3 2200G
マザーボードASRock Fatal1ty AB350 Gaming K4 (UEFI: L4.63)
メモリG.Skill F4-3200C14D-16GFX
GPURadeon RX Vega 11Radeon RX Vega 8
システム用ストレージSamsung MZ-V5P256B/IT (256GB SSD/M.2-PCIe 3.0 x4)
アプリケーション用ストレージOCZ VTR180-25SAT3-480G (480GB SSD/SATA 6Gbps)
電源玄人志向 KRPW-TI700W/94+ (700W 80PLUS Titanium)
CPUクーラーCPU付属クーラー
OSWindows 10 Pro 64bit (Ver 1709/Build 16299.214)
グラフィックスドライバ17.40.3701-18206a-324287C-ATI
電源プロファイル高パフォーマンス
G.Skill F4-3200C14D-16GFX
ASRock Fatal1ty AB350 Gaming K4

メモリクロックの違いによるメモリ帯域の違いを確認

 3Dベンチマークテストの結果を確認する前に、メモリクロックの違いによってメモリ帯域幅がどの程度変化しているのかSiSoftware Sandra PlatinumのMemory Bandwidthでチェックした。

Sandra Platinum (24.61) - Memory Bandwidth
Sandra Platinum (24.61) - Memory Bandwidth (DDR4-2133の結果を100%とした場合)

 DDR4-2133でのメモリ帯域幅は両APU共に24.4GB/sec前後であるのに対し、DDR4-3200ではRyzen 5 2400Gが36.34GB/sec、Ryzen 3 2200Gも35.85GB/secへと、それぞれ1.5倍近くメモリ帯域幅が増加している。そのほかの結果もメモリクロックの向上に伴ってメモリ帯域幅が増加していることが確認できた。

3Dベンチマークでの効果をチェック

 では、メモリクロックがAPUのGPU性能に与える影響を3Dベンチマークテストで確認していく。今回利用したベンチマークテストは、3DMarkのDirectX11テスト「Fire Strike」と、「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」の2種類。

 3DMarkでは、DDR4-2133で「2,632」であったRyzen 5 2400Gのスコアが、DDR4-2933では約1.17倍の「3,095」、DDR4-3200では約1.22倍の「3,232」に上昇し、メモリクロックの上昇に伴うスコアの向上が確認できる。

 Ryzen 3 2200Gでも同じようにスコアの向上が確認できるが、DDR4-2133に対してDDR4-2933のスコアは約1.13倍、DDR4-3200でも約1.18倍と、Ryzen 5 2400Gに比べるとスコアの向上率がやや低めとなっている。GPUコアの規模とメモリ帯域幅の不均衡の度合いからすると、これは順当な結果と言えるだろう。

3DMark - Fire Strike v1.1
3DMark - Fire Strike v1.1 (DDR4-2133の結果を100%とした場合)

 ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマークでは、画面解像度を1,920×1,080ドット、描画設定を最高品質に設定してベンチマークを実行した。

 Ryzen 5 2400Gのスコアは、DDR4-2133で「2,379」であったものが、DDR4-2933で約1.21倍の「2,873」、DDR4-3200では約1.28倍の「3,053」へと向上している。

 Ryzen 3 2200GでもDDR4-2133とDDR4-3200の間には約1.23倍の差がついており、3DMarkよりもスコアの向上率が高い結果となった。

ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク (1,920×1,080ドット/描画設定「最高品質」)
ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク (DDR4-2133の結果を100%とした場合)

消費電力の測定結果。オーバークロックメモリの消費電力への影響は軽微

 最後に、各メモリクロックで、アイドル時の消費電力と、3DMark (Fire Strike/Graphics Test 1)実行中のピーク時消費電力を測定した結果を紹介しよう。

 アイドル時の消費電力については両APUとも26~27Wを記録している。ほぼ横並びと言っても良い結果だが、クロックや動作電圧の高いメモリと組み合わせている状況では僅かに消費電力が増しているともとれる結果だ。

 ベンチマーク実行時のピーク消費電力については、両APUともメモリクロックが高くなるほど消費電力が高くなっている傾向がみられるが、DDR4-2133とDDR4-3200の消費電力差は、Ryzen 5 2400Gで6W、Ryzen 3 2200Gで5Wであり、消費電力差は1割に満たない。ベンチマークスコアを考えれば、高クロックメモリを使用した方が電力効率は良くなっているということになる。

システムの消費電力

Raven RidgeのGPU性能を確実に向上させる高クロックメモリ。課題はコストと安定性

 以上の通り、Raven RidgeのGPU性能は高クロックメモリを使用することで確実に上昇する。性能を向上させるうえ電力効率まで改善するとなれば、Raven Ridgeにはぜひとも高クロックメモリを組み合わせたくなる。

 しかし、2018年現在のDDR4メモリ価格を考えると、高価な高クロックメモリの導入はRaven Ridgeの大きな長所であるコストパフォーマンスを削いでしまいかねない。また、現状でDDR4-2933以上のクロックを実現しているメモリは「オーバークロックメモリ」であり、パーツの組み合わせによっては安定して動作しないリスクが大きい。

 Raven Ridgeが持つGPUの性能を高めるという点では間違いなく高い方がよいメモリクロックだが、そのパフォーマンスをコストや安定性のリスクと天秤にかけた場合、どのメモリクロックがRaven Ridgeに最適なのか、よく検討してみる必要があるだろう。