やじうまミニレビュー
発音トレーニング機能を備えたカシオの英会話学習機「joy study JY-S01」
2018年1月31日 12:36
スマートフォン全盛のいまもなお、電子辞書をはじめとしたスタンドアロンな学習デバイスが支持されるのは、「ネットに接続できない」のが大きな理由だ。言ってみれば勉強のために図書館にこもるのと同じで、ついついネットを見たり動画を観てしまう心配がないことが、製品の価値を高めているというわけだ。
それゆえ、巷でよく言われる「スマホでいいじゃん」という理屈は、これらの学習デバイスにはまったく通用しない。むしろスタンドアロンな状況下で使えるコンテンツがどれだけ充実しているか、どんなユニークな機能があるかが、製品の評価を決めることになる。
昨年(2017年)秋にデザインを一新したカシオの英会話学習機「joy study」は、そうした点で注目に値する製品だ。英会話学習と言ってもさまざまだが、この製品の場合、いったいなにができてなにができないのかを、今回はチェックしていこう。
高級感が増した筐体。マイク付きイヤフォンはカナル式
本体はスマートフォンの上下を切り詰めた程度の大きさで、胸ポケットにすっぽりと収まる。カラー液晶を採用した画面は実測で52×39mmと、かつてのiPodもしくはガラケーほどのサイズで、視認性も高い。重量は85gということで、100~150gはある昨今の5型クラスのスマートフォンに比べ、かなり軽量だ。
一般的な電子辞書は、いまだに半角カナのような文字がメニューに使われていたりと、見た目も視認性も見劣りすることがしばしばだが、本製品はそれらとはまったく無縁で、画面のデザインもなかなかスタイリッシュだ。発色も良好で、タッチディスプレイでないにもかかわらずうっかり画面をタッチしそうになるほどだ。
従来のjoystudyシリーズは、廉価なMP3プレーヤーを思わせる外観で、正直あまり他人に見せたいデザインではなかった。しかし本製品はデザインに注力しており、前面パネル下部のヘアライン加工など、端々に高級感がある。もちろん大事なのは見た目でなくコンテンツだが、学習のモチベーションを上げるために、こうした部分も重要だ。
本製品の操作は、画面下にあるボタンで行なう。ペコペコと頼りないメンブレンの感触ではなく、しっかりとしたキータッチを保ちつつも周囲に音が響かないボタンを採用しており、操作性は良好だ。
本製品にはマイク付きのイヤフォンが付属している。本体にスピーカーは内蔵されていないので、音声を聴けるのはこのイヤフォンのみだ。スピーカーが非搭載なのは評価が分かれそうだが、再生中にうっかりプラグが抜けて本体から音声が流れる事故が起こらないという点ではプラスだろう。
英語の発音を採点してくれる発音トレーニング機能を搭載
本製品は、英語を「聞いて」覚えることに注力した英語学習ツールであり、市販の学習コンテンツの電子版が計20個収録されている。そのなかでもメインは「デイリースピーキング」、および「キクタン/キクジュク/キクタン英会話」の2つということになる。
「デイリースピーキング」は、リスニングをこなしながら発音も込みで英会話を覚えるためのコンテンツで、まず英文を3回繰り返して聞き、その後英語→日本語、さらに日本語→英語の順番で聞き、頭のなかで英語が思い浮かべられるようになるまで繰り返す仕組みだ。
「キクタン/キクジュク/キクタン英会話」は単語、熟語および英会話を学ぶためのコンテンツで、チャンツと呼ばれるリズムに乗せ、英単語とその和訳を繰り返し聞き、単語および熟語の発音と意味を覚える仕組みだ。電子辞書ではおなじみなので、ご存知の人も多いだろう。
この2カテゴリだけでも相当なボリュームであり、キクタンのようにEntryからBasic、Advanced、Superにまで細分化されているコンテンツを最初からやり込むと、完全マスターまで何カ月もかかっておかしくないのだが、本製品の目玉機能となるのはむしろこれらよりも、新規に搭載された発音トレーニング機能だろう。
これは、本製品が用意した例文を、マイク付きイヤフォンに向かって読み上げると、その正確さを採点してくれるというものだ。カラオケの採点機能を思わせる機能だが、これを繰り返していくことにより、発音能力の向上に役立てられるというわけだ。
これら発音の入力(録音)には、付属のマイク付きイヤフォンを使用する。実際に使うまではマイク性能はやや疑問符だったが、試したかぎりでは周囲に影響されることもなく、きちんと聞き取られているようだ。ゲーム感覚でプレイできるので、短期間で英語の発音を矯正したい人にはもってこいだろう。なるべく短い分野フレーズからはじめることをおすすめしたい。
なお、この発音トレーニング機能は、専用コンテンツ「発音トレーニング」のほか、前述のディリースピーキング、さらに外国人客の接客を前提としたコンテンツ「とにかくひとこと接客英会話」が対応している。このコンテンツは英語応対能力検定にも対応しているので、そちらの学習にも役立つはずだ。
英会話学習機として高い充実度。いわゆる電子辞書ではない点に注意
以上、ざっと見てきたが、従来モデルに比べてコンテンツの収録数も増えているほか、スピーキングを強化するための発音トレーニング機能が追加されたこともあり、英会話学習機としてはかなりの充実度だ。
その分価格は従来モデルよりもやや上がり、2万円前後となっているのだが、本製品に搭載されているコンテンツと同じラインナップをスマホで揃えようとすると、おそろしく割高だったりする。単純に比較できるものではないが、発音トレーニング機能込みで約2万円前後という価格は、トータルでみるとかなりリーズナブルと言ってよいだろう。
なお、本製品は英和辞典や和英辞典は搭載していないため、デスクの上に置いて単語の意味を引いたり例文を調べるといった電子辞書的な使い方はできない。またTOEIC対応コンテンツなども搭載しないため、それらの学習用途であれば、同社EX-wordシリーズなど電子辞書を探したほうがよい。あくまでも英会話学習機であることは理解した上で、導入を検討したほうがよいだろう。