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少子化、GIGAでも電子辞書市場は安泰?シャープが高校生向けなど5機種を発売
2022年1月13日 11:00
シャープは、カラー電子辞書「Brain(ブレーン)」シリーズの新製品として、高校生モデル2機種と、大学生・ビジネスモデル、中学生モデル、生活・教養モデルの合計5機種を、2022年1月27日から順次発売する。
高校生モデルでは、文部科学省の新学習指導要領により、2022年度から必修単位となる「総合的な探究の時間」に役立つ「探究学習」メニューを新たに搭載。幅広く情報を収集することが可能な「探究検索」や、授業での「情報収集」「レポート/発表」に役立つコンテンツも用意した。
シャープでは、「新しい学びにも対応し、自ら学び、考える力を付ける学習に活用できる」としている。
底堅い需要が今後10年続く電子辞書市場
電子辞書市場は、2018年度には111万7,000台、2019年度には95万7,000台の出荷実績があったが、新型コロナウイルスの感染拡大による一斉休校や、学校などでの販売会が中止になった2020年度には66万6,000台と約7割にまで市場が縮小。2021年度も63万8,000台に留まると見られている。
だが、2022年度はコロナ以前の水準には戻らないものの、緩やかな回復基調に転じると予測しており、業界の期待が高まっている。
その背景にあるのは、需要の半分を占める高校生向けの需要回復だ。
シャープでは、「これまでの電子辞書市場は、年間100万台の需要があり、そのうち半分の需要を高校生が占めていた。少子化が叫ばれていながらも、2031年までは、高校への新入学生は毎年100万人超が見込まれている。大きな成長はないが、電子辞書は購買層が明確であり、長期に渡って、根強い需要が存在する。新入学生に対して、電子辞書の必要性を訴求する方法にも変化が生まれており、販売会だけでなく、チラシなどを活用した告知も開始している」と語る。
一方で、1人1台のPCやタブレットを整備するGIGAスクール構想が、電子辞書市場に影響を与えるとの見方もあるが、それについても、「2021年9月のデジタル庁の調査では、教える側の体制や、高校でのインフラ整備が整っていないといった課題が顕在化しており、電子辞書がすぐにタブレットに置き換わることはない。電子辞書はまだ使ってもらえると考えている」と発言。
さらに、「今後、タブレットと電子辞書を併用することも想定される。単に辞書を引くだけでなく、いつでも、どこでも学習できる機能を搭載していることから、成績アップのためのツールとしての提案が可能になるほか、将来に渡って使い続けることができるツールとしての提案も可能である」と述べた。
同社が高校生を対象に実施したアンケートでは、電子辞書の購入後に取り組むようになったものとして、英単語の暗記が38.5%、英語のリーディングが22.7%、英作文が22.5%となっており、英語の学習ツールとしての利用が促進されていることが分かったほか、よかった点としては、持ち運びやすいが74.2%、分からないことを進んで調べるようになったが58.0%など、持ち運びがしやすく、様々な場面で学習を支援できる点が受けている。学習意欲が高まったという回答も23.3%に達している。
また、購入を決めた理由としては、搭載コンテンツと数が32.8%、使いやすさが31.4%、機能の多さや拡張性が30.0%となっており、「辞書機能やコンテンツの充実が重要であるとともに、学習機としての進化も重要に要素になっている」とする。
探究学習に最適化した機能を搭載
今回の新製品では、高校生モデルとして、英語強化モデルの「PW-S2」と、通常モデルの「PW-H2」の2機種を用意。高校生需要の取り込みに力を注いでいる。
1つ目は、「探究学習」メニューの搭載だ。
探究学習は、2022年度以降に入学する高校1年生から実施される新学習指導要領で必修単位となる「総合的な探究の時間」で学ぶ学習活動であり、「課題の設定」「情報の収集」「整理・分析」「まとめ・表現」という探究の過程を繰り返すことで、課題解決能力の育成を目指すことになる。
新製品に搭載した「探究学習」メニューでは、「情報収集」や「レポート/発表」を選択するだけで、「ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典電子辞書版」や「日本語 大シソーラス 類語検索大辞典」など、「探究学習」に役立つコンテンツを簡単に確認できるようにしている。さらに、見出し語だけでなく、説明文中の言葉も検索できる「探究検索」を搭載したことで、見出し語検索だけでは知り得なかったと思われる知識に触れることで、情報の深掘りが可能となる。
例えば、「気候変動」をテーマにした際には、通常の検索だけでは、言葉の意味だけを表示するが、探求検索を使うことにより、見出し語だけでなく、説明本文中に出てくる「気候変動」に関連する言葉も表示。オバマ元米国大統領の項目に、気候変動の取り組みによって、2009年にノーベル平和賞を受賞したことなども表示でき、正しい情報をもとに、周辺知識を得ることができる。ここでは、検索語を5つまで追加でき、検索結果を絞り込んで調べることも可能だ。
「テーマに合わせた課題を自分たちで設定し、情報を収集し、分析し、自分の考えを発表するのが探求学習の狙い。環境問題や人口問題、グローバル化、情報化社会などが探求テーマになる。情報収集の際に、PCやスマホを利用したインターネット検索では、不確かな情報が含まれることもあるが、電子辞書は出版社が監修した信頼性が高い情報の宝庫であり、意味を調べるだけでなく、情報の深堀ができ、様々な角度から情報を集めることができる。また、まとめたものをプレゼンテーションする際にも、英和辞典や例文、最新語など、必要な語彙を豊富に収録しているメリットを生かすことができる。探求学習においては、電子辞書の方が役立つだろう」とした。
英語の意味をイメージ図で表示
また、電子辞書としては初めて、「コンパスローズ英和辞典」を収録。単語の語源から複数の語義への発展過程が分かりやすく図式化された「語義のマッピング」や、ネイティブの感覚を理解しやすい「語のイメージ」など、単語の理解を深めるための工夫が盛り込まれている。
例えば、日本語では「見る」と訳される「watch」と「look」と「see」の意味が異なることを、意味だけでなく、イメージ図を使って視覚的に表示。watchは、集中して目を向けるという意味であるのに対して、lookは目を向ける、seeは目を通して頭に入ってくるといったような使い分けを確認できる。また、「capital」には「首都」のほかに、まったく異なる「死刑の」という意味がある理由が、「頭」といった語源があり、「死刑の」には頭をはねるという意図から来ている背景を知ることができるなど、意味の理解を支援する。
そのほか、9年ぶりの全面改訂となり、言葉の本質をとらえた語釈と適切な用例を掲載した「新明解国語辞典 第八版」や、10年ぶりの大改訂となり、言葉の適切な使い方と誤用を詳しく解説した「明鏡国語辞典 第三版」など、多くの学校で推薦される豊富なコンテンツの最新版を収録しているのも特徴だ。
学習ツールとしての機能を強化
さらに、複数の辞書を一括検索できる「検索ウィンドウ」をBrain Learningメニュー画面に追加。画面タッチやホームキーの押下で、3つのメニュー画面が素早く切り替わり、どのメニュー画面からも気になる言葉を手際よく検索できるようにしたという。
「思い付いた時に信頼性の高い辞書をすぐに引ける専用機ならではの便利さを実現した」という。
また、Brain独自機能の「縦型学習スタイル」を提案。3色カラーシートで単語を隠しながら覚える「暗記ツール」機能や、覚えた単語を入力する「確認テスト」、発音の採点機能やリスニング機能も搭載。「聞く・話す・読む・書く」の英語4技能のトレーニングを可能にしたほか、「英検過去問」として、2021年度版を新搭載。実際に出題された問題をもとにしているため、英検対策に役立つという。
「繰り返し学習を定着させることができる。通学などの隙間時間を有効活用できる学習ツールになる」とした。
リチウムイオン充電池を採用しており、約140時間の連続表示、約70時間の連続使用を可能にしており、「満充電1回あたりの電気代は約0.5円で、月3回充電しても、高校3年間に必要な電気代は、わずか54円で済む」という。Brainの利用者のうち、約85%が月3回以下の充電で済んでいるという。
用途に応じて製品を品揃え
5.5型(横121.1×縦68.0mm)のWVGA+カラー液晶を搭載。本体は152.4×94.5×18.4mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約260g。
オープンプライスだが、市場想定価格は、高校生モデルのPW-S2が4万9,000円前後。同じく高校生モデルのPW-H2および大学生・ビジネスモデルのPW-B2が4万3,000円前後。中学生モデルのPW-J2および生活・教養モデルのPW-A2が3万9,000円前後。いずれも税込み。
PW-S2はワンランク上の英語学習ができる英語強化モデルとして、3冊の英和大辞典や4冊の英英辞典など270コンテンツを収録。高校生向け標準モデルのPW-H2は、授業に必要な辞書を拡充して230コンテンツを収録。
PW-B2、PW-J2、PW-A2は、いずれも150コンテンツを収録しており、大学生の就職活動を支援したり、中学生がキーボードのキー配列やローマ字入力を楽しくマスターしたり、社会人がビシネスシーンで使える英語の学習や、シニアの学び直しや趣味、知識を広げたりといったように、それぞれの用途を想定したコンテンツを収録している。
なお、シャープの電子辞書は、購入者および購入者の保護者を対象にした調査で、10年連続顧客満足度ナンバーワンを獲得しているという。