■笠原一輝のユビキタス情報局■
Core i7/i5/i3 |
IntelはNehalem世代以降で新しいブランド戦略をとる(別記事参照)が、その具体的な計画が徐々に明らかになってきた。
OEMメーカー筋の情報によれば、Intelは今後リリースする予定のデスクトップPC向けのLynnfield/Clarkdale、ノートPC向けのClarksfield/Arrandaleのブランド名の詳細を明らかにしたという。これらのブランド名は4コアのLynnfield=Core i5、2コアのClarkdale=Core i3といった単純な構成ではなく、同じコアでもブランド名が異なるなどより複雑な構成になっている。
Intelからの正式発表前ではあるが、本記事ではOEMメーカー筋の情報などで判明してきた、Intelの新しいブランド戦略についてお伝えしていきたい。
●コードネーム=ブランドではない複雑な構成普及版Nehalemと言われるLynnfield、Clarkdaleのブランド名がCore i5、Core i3になるという噂は、実のところかなり前からささやかれていた。
しかし、その詳細が明らかになってみると、Lynnfield=i5、Clarkdale=i3といった単純な仕組みではなかった。OEMメーカー筋から筆者にもたらされた情報によれば、具体的には以下のようになっている。
【表1】IntelのデスクトップPC用Nehalemコアのブランド名(筆者作成)
ブランド名 | 開発コードネーム | プロセッサー・ナンバー | コア数/スレッド数 | Turbo Boost | キャッシュ | 対応チップセット | ソケット | メモリCH | メモリクロック | VT-d | TXT |
Core i7 Extreme Edition | Bloomfield | 9xx | 4C/8T | ○ | 8MB | X58 | LGA1366 | 3 | 1,066/800 | ○ | - |
Core i7 | Bloomfield | 9xx | 4C/8T | ○ | 8MB | X58 | LGA1366 | 3 | 1,066/800 | ○ | - |
Lynnfield | 8xx | 4C/8T | ○ | 8MB | Ibexpeak | LGA1156 | 2 | 1,333/1,066 | ○ | ○ | |
Core i5 | Lynnfield | 7xx | 4C/4T | ○ | 8MB | Ibexpeak | LGA1156 | 2 | 1,333/1,066 | - | ○ |
Clarkdale | 未定 | 2C/4T | ○ | 4MB | Ibexpeak | LGA1156 | 2 | 1,333/1,066 | ○ | ○ | |
Core i3 | Clarkdale | 未定 | 2C/4T | - | 4MB | Ibexpeak | LGA1156 | 2 | 1,333/1,066 | - | - |
Pentium | Clarkdale | 未定 | 2C/2T | - | 3MB | Ibexpeak | LGA1156 | 2 | 1,066 | - | - |
見てわかるように、同じCore i7でもBloomfiledコアとLynnfieldコア、Core i5でもLynnfieldコアとClarkdaleコアが混在しており、これまでコードネームで各プロセッサの違いを理解してきた本誌の読者にはやや難解で複雑な構成になっている。
それぞれ詳しく見ていこう。まずBloomfieldコアのCore i7に関しては従来通りで、Core i7 Extreme Edition 9xxとCore i7 9xxの2つのラインナップは継続される。ここに、9月にリリースされる予定のLynnfieldコアのCore i7が加わることになる。LynnfieldコアのCore i7は8xxのプロセッサー・ナンバーで表示され、4コア/8スレッド、8MBのL2キャッシュ、2チャネルのDDR3メモリ(1,333MHzサポート)というスペックになる。
これに対して、Core i5にもLynnfieldコアの製品が用意される。Lynnfield版Core i7との最大の違いは、HTテクノロジが無効にされ、4コア/4スレッドという構成になっていることだ。また、VT-dにも非対応(なお、すべてのNehalemプロセッサはVT-xには対応している、ちなみにWindows 7のWindows XPモードが必要としているのはVT-x)で、企業向けの管理機能であるvProには非対応となることが違いとなる。なお、LynnfieldコアのCore i5のプロセッサー・ナンバーは7xxという形式となる。
すでに明らかになっているように、IntelはLynnfieldコアの製品を第3四半期に投入する予定となっており、リリース時には以下のSKUが投入される予定だ。なお、具体的なリリース時期は、現時点で9月の上旬あたりが予定されているとのことだ。
【表2】LynnfiledコアのSKU(筆者作成)
ブランド名 | プロセッサー・ナンバー | コア数/スレッド数 | クロック周波数 | Turbo Boost時最高クロック | キャッシュ | パッケージ | TDP |
Core i7 | 870 | 4C/8T | 2.93GHz | 3.6GHz | 8MB | LGA1156 | 95W |
860 | 4C/8T | 2.8GHz | 3.46GHz | 8MB | LGA1156 | 95W | |
Core i5 | 750 | 4C/4T | 2.66GHz | 3.2GHz | 8MB | LGA1156 | 95W |
これらの9月に投入されるSKUとは別に、より低消費電力のバージョンも計画されている。Core i7-860S(2.53GHz)、Core i7-750S(2.4GHz)の2製品がそれで、通常版が95WのTDPとなるのに対して、低消費電力版は82Wになる。こちらの2製品は、やや送れて2010年の第1四半期に投入される。
●ClarkdaleコアはCore i5、Core i3、Pentiumの3つのブランドで展開される2つのブランドがあるLynnfieldだが、Clarkdaleの方はもっとややこしく、表1の通り、Core i5、Core i3、Pentiumの3つのブランドで展開されるのだ。
ClarkdaleコアのCore i5は2コア/4スレッド、4MBのキャッシュ、2チャネルのDDR3メモリ(1,333MHz対応)というスペックだ。
Core i3ブランドのClarkdaleはほぼ同じスペックということになるが、VT-dとTXTに関しては非対応となる。このため、vProにも非対応ということになる。ClarkdaleコアのPentiumは、HTテクノロジには対応せず2コア/2スレッドとなり、かつキャッシュも3MBとなるのが、Core i3シリーズとの差別化ということになる。
Clarkdaleは、リリース時期が2010年の第1四半期の予定であり、現時点ではプロセッサー・ナンバーに関してOEMメーカーにも通知されていない模様だ。ただ、SKUに関してはある程度明らかになってきており、具体的には下記のようになっている。
【表3】ClarkdaleのSKU構成(筆者予想)
ブランド名 | プロセッサー・ナンバー | コア数/スレッド数 | クロック周波数 | Turbo Boost時最高クロック | キャッシュ | パッケージ | TDP |
Core i5 | 未定 | 2C/4T | 3.46GHz | 3.73GHz | 4MB | LGA1156 | 73W |
未定 | 2C/4T | 3.33GHz | 3.60GHz | 4MB | LGA1156 | 73W | |
未定 | 2C/4T | 3.2GHz | 3.46GHz | 4MB | LGA1156 | 73W | |
Core i3 | 未定 | 2C/4T | 3.06GHz | 非対応 | 4MB | LGA1156 | 73W |
未定 | 2C/4T | 2.93GHz | 非対応 | 4MB | LGA1156 | 73W | |
Pentium | 未定 | 2C/2T | 2.8GHz | 非対応 | 3MB | LGA1156 | 73W |
クロック周波数の面でもCore i5、Core i3、Pentiumには差がつけられている。
●ノートPC向けCore i7とCore i5はデスクトップと位置づけが異なるノートPCの方はCore i7とCore i5という2つのブランドが展開される。ノートPCの方でも、デスクトップPCと同じようにまずクアッドコアのClarksfieldが投入され、そしてそのあとでデュアルコアのArrandaleが追加されることになる。
【表4】Intel、ノートPC用Nehalemコアのブランド名(筆者予想)
ブランド名 | 開発コードネーム | プロセッサー・ナンバー | コア数/スレッド数 | Turbo Boost | キャッシュ | メモリCH | メモリクロック | vPro | パッケージ |
Core i7 Extreme Edition | Clarksfield | 9xx | 4C/8T | ○ | 8MB | 2 | 1,333MHz | - | rPGA |
Core i7 | Clarksfield | 8xx | 4C/8T | ○ | 8MB | 2 | 1,333MHz | ○ | rPGA |
Clarksfield | 7xx | 4C/8T | ○ | 6MB | 2 | 1,333MHz | ○ | rPGA | |
Arrandale | 未定 | 2C/4T | ○ | 4MB | 2 | 1,066MHz | ○ | rPGA/BGA | |
Arrandale-LV | 未定 | 2C/4T | ○ | 4MB | 2 | 1,066MHz | ○ | BGA | |
Arrandale-ULV | 未定 | 2C/4T | ○ | 4MB | 2 | 800MHz | ○ | BGA | |
Core i5 | Arrandale | 未定 | 2C/4T | ○ | 3MB | 2 | 1,066MHz | ○ | rPGA/BGA |
ノートPCではデスクトップPCには存在するBloomfieldに相当するプロセッサコアが存在していないので、Extreme EditionはClarksfieldベースとなり、プロセッサー・ナンバーが9xxとなる。通常のCore i7ベースの製品も用意されており、それがCore i7の8xx、7xxとなる。8xxと7xxの違いは主にキャッシュ容量で8xxが8MB、7xxは6MBとなる。
デュアルコアのArrandaleはCore i7とCore i5の2つのブランドが利用される。デスクトップPCではデュアルコアがCore i5/Core i3/Pentiumになっているのと比べるとややずれがあるように感じるが、デュアルコア版でもCore i7があるのは、低電圧版と超低電圧版の存在があるからだろう。消費電力が重要視される低電圧版と超低電圧版には、クアッドコアのClarksfieldは消費電力の面でフィットしない。このため、Nehalem世代の低電圧版と超低電圧版はデュアルコアのArrandaleがベースになっているのだが、これらの製品はプロセッサ単体の価格としてはハイエンド製品に近い価格設定になるので、どうしてもCore i7である必要があるのだろう。
リリース時期だが、元々第3四半期に計画されていたClarksfieldは若干遅れて第4四半期のリリースとなる。ただし、第4四半期といっても3カ月まるまる遅れるのではなく、実際には10月頃のリリースが計画されており、1カ月後ろにずらされたと考えるのが正しいだろう。Arrandaleのリリースは予定通り2010年の第1四半期になっており、同時期に新しいWi-Fi/WiMAXのコンボモジュールも追加され、Intelの次期ノートPC向けプラットフォームとなるCalpellaが本格的に立ち上がることになる。
なお、このCalpellaの本格的な立ち上げにあわせて、IntelのWi-Fi/WiMAXのモジュールのブランド名はCentrinoブランドに変更されることになる。
●次世代のネットブックのプラットフォームはAtom N450+NM10最後にネットブックの次世代プラットフォームとして計画されているPine Trail-Mについて触れておこう。Pine Trail-MはCPU+GPU+メモリコントローラとなるPineviewと、従来のサウスブリッジに相当するIOH(I/O Hub)のTiger Pointの2つの製品から展開されているが、こちらに関しても正式にブランド名が決まったと、OEMメーカーに対して通知されたという。
PineviewはAtomブランドで展開され、最初の製品はN450というプロセッサー・ナンバーが与えられ、Tiger PointはNM10という製品名が与えられることになる。Atom N450はプロセッサコアのクロック周波数は1.6GHz、512KBのL2キャッシュ、200MHzで動作するIntel GMA 950相当のGPUを内蔵しており、667MHzまでのDDR2メモリをサポートする。なお、N270/280では未対応だった、Intel64にも対応し、今後は64bit環境でも利用することができる(少ないメモリ環境が予想されるネットブックなどで意味があるかは別の議論として)。Atom N450とNM10は予定通り第4四半期に市場に投入される予定だ(なお、デスクトップ用のPine Trail-Dは若干遅れて2010年の第1四半期が予定されている)。
注目の価格であるが基本的には現行のAtom N270/280+Intel 945GSEの価格設定と大きくは替わらないと通知があった、とOEMメーカーの関係者は説明している。少なくともPine Trail-Mの世代では、ネットブックのハードウェアのコスト面では現行製品と大きな違いはなさそうだ。
(2009年 7月 13日)