笠原一輝のユビキタス情報局

見えてきたIntelの新しいプロセッサブランド戦略



Core i7/i5/i3

 IntelはNehalem世代以降で新しいブランド戦略をとる(別記事参照)が、その具体的な計画が徐々に明らかになってきた。

 OEMメーカー筋の情報によれば、Intelは今後リリースする予定のデスクトップPC向けのLynnfield/Clarkdale、ノートPC向けのClarksfield/Arrandaleのブランド名の詳細を明らかにしたという。これらのブランド名は4コアのLynnfield=Core i5、2コアのClarkdale=Core i3といった単純な構成ではなく、同じコアでもブランド名が異なるなどより複雑な構成になっている。

 Intelからの正式発表前ではあるが、本記事ではOEMメーカー筋の情報などで判明してきた、Intelの新しいブランド戦略についてお伝えしていきたい。

●コードネーム=ブランドではない複雑な構成

 普及版Nehalemと言われるLynnfield、Clarkdaleのブランド名がCore i5、Core i3になるという噂は、実のところかなり前からささやかれていた。

 しかし、その詳細が明らかになってみると、Lynnfield=i5、Clarkdale=i3といった単純な仕組みではなかった。OEMメーカー筋から筆者にもたらされた情報によれば、具体的には以下のようになっている。

【表1】IntelのデスクトップPC用Nehalemコアのブランド名(筆者作成)

ブランド名開発コードネームプロセッサー・ナンバーコア数/スレッド数Turbo Boostキャッシュ対応チップセットソケットメモリCHメモリクロックVT-dTXT
Core i7 Extreme EditionBloomfield9xx4C/8T8MBX58LGA136631,066/800-
Core i7Bloomfield9xx4C/8T8MBX58LGA136631,066/800-
Lynnfield8xx4C/8T8MBIbexpeakLGA115621,333/1,066
Core i5Lynnfield7xx4C/4T8MBIbexpeakLGA115621,333/1,066-
Clarkdale未定2C/4T4MBIbexpeakLGA115621,333/1,066
Core i3Clarkdale未定2C/4T-4MBIbexpeakLGA115621,333/1,066--
PentiumClarkdale未定2C/2T-3MBIbexpeakLGA115621,066--

 見てわかるように、同じCore i7でもBloomfiledコアとLynnfieldコア、Core i5でもLynnfieldコアとClarkdaleコアが混在しており、これまでコードネームで各プロセッサの違いを理解してきた本誌の読者にはやや難解で複雑な構成になっている。

 それぞれ詳しく見ていこう。まずBloomfieldコアのCore i7に関しては従来通りで、Core i7 Extreme Edition 9xxとCore i7 9xxの2つのラインナップは継続される。ここに、9月にリリースされる予定のLynnfieldコアのCore i7が加わることになる。LynnfieldコアのCore i7は8xxのプロセッサー・ナンバーで表示され、4コア/8スレッド、8MBのL2キャッシュ、2チャネルのDDR3メモリ(1,333MHzサポート)というスペックになる。

 これに対して、Core i5にもLynnfieldコアの製品が用意される。Lynnfield版Core i7との最大の違いは、HTテクノロジが無効にされ、4コア/4スレッドという構成になっていることだ。また、VT-dにも非対応(なお、すべてのNehalemプロセッサはVT-xには対応している、ちなみにWindows 7のWindows XPモードが必要としているのはVT-x)で、企業向けの管理機能であるvProには非対応となることが違いとなる。なお、LynnfieldコアのCore i5のプロセッサー・ナンバーは7xxという形式となる。

 すでに明らかになっているように、IntelはLynnfieldコアの製品を第3四半期に投入する予定となっており、リリース時には以下のSKUが投入される予定だ。なお、具体的なリリース時期は、現時点で9月の上旬あたりが予定されているとのことだ。

【表2】LynnfiledコアのSKU(筆者作成)

ブランド名プロセッサー・ナンバーコア数/スレッド数クロック周波数Turbo Boost時最高クロックキャッシュパッケージTDP
Core i78704C/8T2.93GHz3.6GHz8MBLGA115695W
8604C/8T2.8GHz3.46GHz8MBLGA115695W
Core i57504C/4T2.66GHz3.2GHz8MBLGA115695W

 これらの9月に投入されるSKUとは別に、より低消費電力のバージョンも計画されている。Core i7-860S(2.53GHz)、Core i7-750S(2.4GHz)の2製品がそれで、通常版が95WのTDPとなるのに対して、低消費電力版は82Wになる。こちらの2製品は、やや送れて2010年の第1四半期に投入される。

●ClarkdaleコアはCore i5、Core i3、Pentiumの3つのブランドで展開される

 2つのブランドがあるLynnfieldだが、Clarkdaleの方はもっとややこしく、表1の通り、Core i5、Core i3、Pentiumの3つのブランドで展開されるのだ。

 ClarkdaleコアのCore i5は2コア/4スレッド、4MBのキャッシュ、2チャネルのDDR3メモリ(1,333MHz対応)というスペックだ。

 Core i3ブランドのClarkdaleはほぼ同じスペックということになるが、VT-dとTXTに関しては非対応となる。このため、vProにも非対応ということになる。ClarkdaleコアのPentiumは、HTテクノロジには対応せず2コア/2スレッドとなり、かつキャッシュも3MBとなるのが、Core i3シリーズとの差別化ということになる。

 Clarkdaleは、リリース時期が2010年の第1四半期の予定であり、現時点ではプロセッサー・ナンバーに関してOEMメーカーにも通知されていない模様だ。ただ、SKUに関してはある程度明らかになってきており、具体的には下記のようになっている。

【表3】ClarkdaleのSKU構成(筆者予想)

ブランド名プロセッサー・ナンバーコア数/スレッド数クロック周波数Turbo Boost時最高クロックキャッシュパッケージTDP
Core i5未定2C/4T3.46GHz3.73GHz4MBLGA115673W
未定2C/4T3.33GHz3.60GHz4MBLGA115673W
未定2C/4T3.2GHz3.46GHz4MBLGA115673W
Core i3未定2C/4T3.06GHz非対応4MBLGA115673W
未定2C/4T2.93GHz非対応4MBLGA115673W
Pentium
未定2C/2T2.8GHz非対応3MBLGA115673W

 クロック周波数の面でもCore i5、Core i3、Pentiumには差がつけられている。

●ノートPC向けCore i7とCore i5はデスクトップと位置づけが異なる

 ノートPCの方はCore i7とCore i5という2つのブランドが展開される。ノートPCの方でも、デスクトップPCと同じようにまずクアッドコアのClarksfieldが投入され、そしてそのあとでデュアルコアのArrandaleが追加されることになる。

【表4】Intel、ノートPC用Nehalemコアのブランド名(筆者予想)

ブランド名開発コードネームプロセッサー・ナンバーコア数/スレッド数Turbo BoostキャッシュメモリCHメモリクロックvProパッケージ
Core i7 Extreme EditionClarksfield9xx4C/8T8MB21,333MHz-rPGA
Core i7Clarksfield8xx4C/8T8MB21,333MHzrPGA
Clarksfield7xx4C/8T6MB21,333MHzrPGA
Arrandale未定2C/4T4MB21,066MHzrPGA/BGA
Arrandale-LV未定2C/4T4MB21,066MHzBGA
Arrandale-ULV未定2C/4T4MB2800MHzBGA
Core i5Arrandale未定2C/4T3MB21,066MHzrPGA/BGA

 ノートPCではデスクトップPCには存在するBloomfieldに相当するプロセッサコアが存在していないので、Extreme EditionはClarksfieldベースとなり、プロセッサー・ナンバーが9xxとなる。通常のCore i7ベースの製品も用意されており、それがCore i7の8xx、7xxとなる。8xxと7xxの違いは主にキャッシュ容量で8xxが8MB、7xxは6MBとなる。

 デュアルコアのArrandaleはCore i7とCore i5の2つのブランドが利用される。デスクトップPCではデュアルコアがCore i5/Core i3/Pentiumになっているのと比べるとややずれがあるように感じるが、デュアルコア版でもCore i7があるのは、低電圧版と超低電圧版の存在があるからだろう。消費電力が重要視される低電圧版と超低電圧版には、クアッドコアのClarksfieldは消費電力の面でフィットしない。このため、Nehalem世代の低電圧版と超低電圧版はデュアルコアのArrandaleがベースになっているのだが、これらの製品はプロセッサ単体の価格としてはハイエンド製品に近い価格設定になるので、どうしてもCore i7である必要があるのだろう。

 リリース時期だが、元々第3四半期に計画されていたClarksfieldは若干遅れて第4四半期のリリースとなる。ただし、第4四半期といっても3カ月まるまる遅れるのではなく、実際には10月頃のリリースが計画されており、1カ月後ろにずらされたと考えるのが正しいだろう。Arrandaleのリリースは予定通り2010年の第1四半期になっており、同時期に新しいWi-Fi/WiMAXのコンボモジュールも追加され、Intelの次期ノートPC向けプラットフォームとなるCalpellaが本格的に立ち上がることになる。

 なお、このCalpellaの本格的な立ち上げにあわせて、IntelのWi-Fi/WiMAXのモジュールのブランド名はCentrinoブランドに変更されることになる。

●次世代のネットブックのプラットフォームはAtom N450+NM10

 最後にネットブックの次世代プラットフォームとして計画されているPine Trail-Mについて触れておこう。Pine Trail-MはCPU+GPU+メモリコントローラとなるPineviewと、従来のサウスブリッジに相当するIOH(I/O Hub)のTiger Pointの2つの製品から展開されているが、こちらに関しても正式にブランド名が決まったと、OEMメーカーに対して通知されたという。

 PineviewはAtomブランドで展開され、最初の製品はN450というプロセッサー・ナンバーが与えられ、Tiger PointはNM10という製品名が与えられることになる。Atom N450はプロセッサコアのクロック周波数は1.6GHz、512KBのL2キャッシュ、200MHzで動作するIntel GMA 950相当のGPUを内蔵しており、667MHzまでのDDR2メモリをサポートする。なお、N270/280では未対応だった、Intel64にも対応し、今後は64bit環境でも利用することができる(少ないメモリ環境が予想されるネットブックなどで意味があるかは別の議論として)。Atom N450とNM10は予定通り第4四半期に市場に投入される予定だ(なお、デスクトップ用のPine Trail-Dは若干遅れて2010年の第1四半期が予定されている)。

 注目の価格であるが基本的には現行のAtom N270/280+Intel 945GSEの価格設定と大きくは替わらないと通知があった、とOEMメーカーの関係者は説明している。少なくともPine Trail-Mの世代では、ネットブックのハードウェアのコスト面では現行製品と大きな違いはなさそうだ。

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(2009年 7月 13日)

[Text by 笠原 一輝]