買い物山脈

広大な作業領域が欲しくて、21:9/3,440×1,440ドットのLG製ゲーミングモニターを購入

製品名
LG「34WP60C-B」
購入価格
5万260円
使用期間
2週間
「買い物山脈」は、編集部員やライター氏などが実際に購入したもの、使ってみたものについて、語るコーナーです
2022年4月現在の筆者のPCデスク

 2月くらいから、ウルトラワイドモニターへの物欲がふつふつと湧いてきた。理由は単純で、16:9では普段の作業が手狭だからだ。そして、色々と品定めをした結果、LGの34型「34WP60C-B」を購入した。Amazonでの購入価格は5万260円だった。広大な作業領域を手にして、非常に満足しているが、なぜ21:9が欲しくなったのか、実際に使ってみてどうだったかなどをレポートする。

 なお、この34WP60C-Bも含めた直近の自宅PCデスクの環境を紹介したYouTube動画も制作したので、こちらも併せてご覧いただきたい。

在宅勤務時代のPC Watch編集長PC自宅デスクを大公開!PC & モニター編

2つのウィンドウを出すのに16:9は手狭

 かなり少数派だと思うが、筆者はPCのウィンドウをフルHD環境では原則としてフルスクリーンで表示している。ゲームはもちろんだが、Photoshopやブラウザなど仕事関連などのアプリでもそうしている。

 2015年から4K修行僧という連載を開始し、会社では4Kモニターを使うようになった。この時から、この4KモニターにフルHDのウィンドウを上下左右に4つ整列させて使っていたので、半端にウィンドウを重ねるということをしなくなり、ノートなどフルHDモニターを使うときもフルスクリーンで使うようになったのだ。スマホはつねにフルスクリーンなので、それと使い勝手を合わせてみようと考えたのもある。

4KモニターにフルHD×4ウィンドウ構成で使っていた2015年当時の環境

 コロナ禍を契機に、メインの仕事場が自宅になったわけだが、自宅ではASUSの27型フルHDゲーミングモニターをメインモニターで使っていた。それまで4K+ノートという環境だったので、これ1台で足りるはずもなく、15.6型のモバイルモニターをセカンダリとして使っていた。もちろんこれら2枚も原則として、アプリをフルスクリーン表示で使っていた。

ウルトラワイドモニターを買う前のPCデスクの様子

 ただ、フルスクリーンにはどうしても適さないアプリがある。それがテキストエディタだ。画面が横いっぱいに広げられた文章は読みづらいからだ。人が読みやすい1行の文字数は日本語の場合で横30~50文字程度だろう。これがフルHDで横いっぱいに広げると、フォント12ポイントで100文字ほどになってしまう。そのため、テキストエディタを使うときは、Win+←を押し、ウィンドウスナップ機能を使って画面半分で表示させていた。

テキストエディタをフルHD解像度で、折り返しなしでフルスクリーン表示させたところ。非常に読みにくい

 テキストエディタについては、それでいいのだが、使いにくいというか効率の悪さを感じていたのが、ブラウザとの同時表示だ。文章を書く時/チェックする時は、ブラウザで情報を参照していることが多い。そこで、テキストエディタを画面左半分に出し、右半分にブラウザを表示することになる。

 この時、PC Watchのように横幅がある程度狭いサイトなら問題ないが、大きな画像を表示させていたりである程度横幅があるのを想定して作られたサイトだと画面が見切れてしまい一覧性が低下してしまう。ブラウザでGmailを参照するときも、横960ドットだとかなり狭くなってしまう。

 なら、モニター2台を使って表示を分けるかとも思ったが、原稿をチェックする時だと、頻繁にテキストエディタとブラウザを目が行き来するので、距離が離れるとつらいのだ。

16:9モニターでのテキストエディタとブラウザの等分表示。ブラウザ側は情報が見切れることがしばしば

 そういうわけで、ブラウザは半画面表示と全画面表示を適宜切り替えつつ作業していた。これだと、全画面表示の時は、テキストエディタとを行ったり来たりになるし、半画面にしても横スクロールバーで操作しなければいけないこともあり、効率が悪いと感じていた。

 また、Premiereで動画編集をするときも、タイムラインが横に長くなるし、各種ペインを表示させると手狭になる。

 こういった理由で21:9以上のウルトラワイドが欲しくなってきたのだ。

21:9のLG製34型「34WP60C-B」を購入

LG「34WP60C-B」。台座はすでに取り外している

 結果的に冒頭に書いた通り、LGの34型ゲーミングモニター「34WP60C-B」を購入した。ここに行き着くまで、そこそこ悩んだ。

 悩んだ点1つめは32:9にするか、21:9にするかだ。ウルトラワイドとしては21:9の製品が多いが、最近は完全に16:9の2台分となる32:9の製品も出てきた。ただ、32:9はうちの机に置けなくはないが、かなり横幅がある。配信など、物理的に2台モニターが必要な状況もあるので、32:9を買っても、もう1台は使うことになるので、なおのこと横に広がることになる。

 また、最初からモニターはアームに付けることを考えていた(ASUSの27型はすでにアームに付けている)のだが、32:9の製品は重量もかなりあり、重量的に対応できるアームが限定されるのもちょっとした問題だった。ということで、32:9は見送ることにした。

 なお、32:9製品については弊誌スタッフとフリーライターの笠原氏がそれぞれ購入し、レポートを掲載しているので、気になる人はそちらを参照してほしい。

 選択肢が21:9に絞られたことで、まずは今のフルHDを21:9化した2,560×1,080ドットの製品を検討し始めた。しかし、そんな事を部内のボイスチャットでなんとなく話していたら、とあるスタッフから「2,560×1,080ドットって3万円くらいするけど、2,560×1,440ドットなら2万5千円くらいで買えますよ」と指摘された。

 鋭い。というかありがたい指摘だった。欲しいのはフルHDを超える解像度とコスパ。コスパで考えるなら、21:9の2,560×1,080ドットより、16:9の2,560×1,440ドットを買った方がいい。しかし、ウルトラワイドへの憧れもあったので、3,440×1,440ドットのウルトラワイドを物色することにした。

 既に持っているASUSの製品がゲーム用なので、ウルトラワイドの方はゲーム用である必要はなかった。しかし、この解像度だとほとんどの製品がゲーム用で高リフレッシュレートに対応している。非ゲーマー向けもあるが、クリエイター用という位置付けで、むしろゲーマー向けよりもかなり価格が高い。

 そういった中、34WP60C-Bを選んだのは、最終的にはタイムセールをしていたこともあり、価格が5万円ジャストと、ほかの同等製品より1万円ほど安かったのが決め手となった。

 基本的に、この手のものを選ぶときは、価格よりも仕様/性能が自分の要求を満たすかどうかで選ぶべきだ。その点において34WP60C-Bは、3,440×1,440ドット表示はもちろん、最大で160Hzのリフレッシュレートと、HDR10対応、FreeSync対応、sRGB 100%カバーと競合製品と遜色ない仕様/性能であり、それでいて価格が安いとなれば選ばない理由はないなと結論付けた。

使い勝手、映像の品質は申し分なし。一部ゲームでは互換性問題も

 実際に使ってみて、まず感じたのは「マジ横広い!!」だった。21:9なのだが、フルHDの2倍あるのではと錯覚するほど。それもそのはず。比率は16:9から21:9になっただけだが、解像度としては横が1,920ドットから3,440ドットになったので、約1.8倍に広がっているのだ。解像度としては、縦にも360ドット伸びているのだが、横の広さに目を奪われる。

 これで下記の写真の通り、ブラウザなどメインウィンドウを16:9に近い比率で表示させつつ、その横にテキストエディタなどサブウィンドウを無理なく配置できる。Premiereをフルスクリーンで表示させたときの画面の広さは、快適そのものだ。前述の通り、これまで基本的にどのアプリもフルスクリーンで使ってきたが、この製品を購入してからは、2ウィンドウ表示がデフォルトになった。

こんな使い方はしないが、あえてフルスクリーンでPC Watchを表示させたところ
テキストエディタなどを横に表示させても、ブラウザの横幅は余裕がある
Premiereではフルスクリーンが活きる
エクスプローラーとPhotoshopを開いたところ

 画質も申し分ない。応答速度は5msと最高速レベルではないものの、動きの激しいゲームをプレイしても残像感は全くない。輝度こそ300cd/平方mと低いが、HDRにも対応しているので対応コンテンツでの色合いも鮮やかだ。

 ウルトラワイド34型というサイズをじっくり使うのはこれが初めてだが、横が広すぎて目や首が疲れるということはない。もちろん、1つのアプリをフルスクリーン表示すると目の移動が大きくて疲れることもあるかもしれないが、2ウィンドウ表示なので、イメージとしては27型の16:9を横向きと、15.6型の16:9を縦向きにしてくっつけて使っているような形となっていて、以前より目の移動が増えたとは感じていない。

 湾曲型を使い込むのも初だが、これについては特にメリットや恩恵は感じていない。ほんの少し曲がっている程度なので、没入感が増えた感じもない。デメリットも特にはないので、可もなく不可もなく、気にしていないといったところか。

 設置に際しては、ASUS用に使っていたのと同じ、エルゴトロンのLXデスクマウントアームを追加で購入した。元々の台座が足が細長いものなので、特に邪魔になることはないと思うが、アームで浮かせることで、ディスプレイの下のスペースも有効活用できる。なお、これについては別途記事化の予定だが、このアームポールには追加のアームとノート用のトレイを設置し、ノートもアームに載せている。

エルゴトロンのLXデスクマウントアームで支えている。アームがもう1つあるのはノート用
台座を外したことで、ディスプレイの下にものを収納できる。左にある黒いのはペンタブレット
インターフェイスはHDMI×2、DisplayPort 1.4×1

 リフレッシュレートについては、ASUSの240Hzから160Hzへと下がったものの、元々144Hzと240Hzの違いを体感できていなかったので、変化は感じていない。個人的にリフレッシュレートが重要となってくるのは、ストリートファイターV チャンピオンエディションにおけるヒット確認だが、60Hzではほぼ不可能な猶予14フレームのヒット確認が160Hz環境ではできている。

 ちなみに、60Hzと144Hzの違いは、トップレベルのゲーマーでない筆者のようなカジュアルゲーマーでも、マウスカーソルを動かしただけで分かる。FPS系のゲームでは、特に視点が大きく動いたときに滑らかさが違うし、基本的に入力判定もより短時間になるので、より精度の高い動きが可能となる。

 ただ、ストリートファイターVについては、ウルトラワイドと相性が良くない。元々16:9固定のグラフィックスなので、ウルトラワイドでは横に黒帯が出るのは当然なのだが、デフォルト設定できちんと表示されるのはゲーム内で解像度を3,440×1,440ドットに設定した時のみだ。

ストリートファイターV チャンピオンエディションでは、ゲーム内でネイティブ解像度の3,440×1,440ドットに設定すると、左右に黒帯は出るが、正しい縦横比で表示される

 これ以外、例えば標準の1,920×1,080ドットにすると、強制的に横に引き伸ばされてしまう。きれいにスケーリングさせるには、NVIDIAコントロールパネルの「デスクトップのサイズと位置の調整」において、スケーリングで「縦横比」を選んだ上で、「ゲームとプログラムによって設定されているスケーリングモードを上書きする」にもチェックを入れる必要がある。ほかのゲームではここにチェックを入れなくても、縦横比のスケーリングモードを選んでいるだけで、横の黒帯付きだがきれいにスケーリングしてくれる。

 ゲームを3,440×1,440ドット表示設定にしておけばいいのだが、これだと性能が低いGPUではフレームレートが低下する可能性もある。このゲームで高解像度にするメリットはほとんどないので、通常解像度のフルHDでプレイしたい場合は、設定を変更しよう。

ゲーム表示が1,920×1,080ドットなど非ネイティブ解像度で、ディスプレイ設定がスケーリングオンだと、このように強制的に横に引き伸ばされる
Cup Headも画面は16:9固定だが……
1,920×1,080ドットを選んでも正しくスケーリングしてくれる
Arcade Classics Anniversary Collectionのグラディウスも、特に設定を変更することなくスケーリング表示される
ストリートファイターVでもスケーリング表示させるには、NVIDIAコントロールパネルの「デスクトップのサイズと位置の調整」において、スケーリングで「縦横比」を選んだ上で、「ゲームとプログラムによって設定されているスケーリングモードを上書きする」にもチェックを入れる

 こういった小さい問題はあるが、ゲームに致命的な支障は今のところ何も発生していない。そして、オーバーウォッチなどFPS系のゲームは21:9を余すところなく活用した描画が可能だ。

オーバーウォッチの画面
Apex Legendsの画面

ウルトラワイドのお供に便利なFancyZones

 先に書いた通り、現在はウルトラワイドに2つのウィンドウを表示して利用しているが、それにあたってMicrosoftのPowerToysにある「FanceZones」という機能を活用している。

 Windows 11では、画面を2分割や4分割してウィンドウを整列させるスナップ機能が強化された。Windows 10では、基本的に画面分割は縦横2等分までしかできなかったが、Windows 11では、横3等分や、横長と縦長2等分といったレイアウトが追加された。これは、ウルトラワイドモニターユーザーにはありがたい機能だ。

Windows 11ではスナップのレイアウトの種類が増えた

 筆者も横長と縦長2等分を使っていたのだが、いくつか問題が起きた。まずは、この追加レイアウトを利用するには、ウィンドウの最大化ボタンにマウスオーバーさせて、メニューを表示させる必要があるのだが、これに対応していないアプリも多いのだ。例えば、Adobeのアプリは対応していない。ただ、その場合は、Win+Zを押すことで、どのアプリでもスナップレイアウトのメニューを呼び出せることが分かった。

 ただ、しばらく使っていて、筆者の環境では机全体のレイアウトなどから、左を縦長にして、右を横長にする方が見やすいと気付いたのだが、標準のスナップにはこういったレイアウトはない。そこで、FancyZonesを使うことにした。

PowerToysのFancyZones

 FancyZonesは、画面を上下左右、何等分にでも分割できる強力なレイアウト作成機能だ。スナップに似ているが、スナップとは別物で、スナップと共存(あるいは機能的な上書き)もできる。画面の分割数だけではなく、各ゾーンの幅も自由に指定できる。複数のディスプレイをまたいだレイアウトすら作成できる。

エディターで自由なレイアウトを作成できる

 レイアウトエディターで気に入ったレイアウトを作成したら、デフォルトでは、そのウィンドウをドラッグするときにShiftを押すと、設定したゾーンの枠が表示されるので、そこにドロップすれば、すっと整列させられる。筆者はオプションを変えて、ドラッグしながら右クリックで同じ動作するようにしている。Win+PgUp/PgDwで、そのゾーンでのウィンドウ切り替えもできるなど、かなり便利な機能だ。

ウィンドウをドラッグしながらShiftか右クリックで表示させるゾーンを確認できる

 ちなみに、LGでは、同社製ディスプレイ用に、Windows上でOSD操作などができる「OnScreen Cont」を提供しており、この中にスナップレイアウトに似た「Screen Split」という機能もある。これも試したのだが、各ウィンドウの周囲に数ドットの枠が表示されてしまう(FancyZonesもデフォルトでは表示されるが0ドットにできる)のと、あらゆるウィンドウが強制的にスナップされる仕様なので、使っていない。

非常にコストパフォーマンスに優れる1台

 購入から2週間ほどが経ち、34WP60C-Bはコストパフォーマンスの面でも素晴らしい製品だと感じている。ただ、残念ながら、Amazonでのタイムセールが終了した現在、価格は5万7千円ほどになっているので、筆者の購入時に比べるとコストパフォーマンスはやや下がってしまっている(それでもクラス最安レベルだ)。

 それでも、表示品質や解像度、リフレッシュレートなど絶対的な性能も良好。そして、ウルトラワイドという使い勝手と、それによる生産性の向上などを加味して、大変満足度が高い買い物だった。

 筆者は、今ではサブとなったASUSの16:9を左手に、右手に13.3型ノート、そして正面にLGの34WP60C-Bという3画面構成で日々の仕事を行なっているが、配信などのように物理的に2台ないと困る状況でなければ、34WP60C-B 1台だけでもほとんどのPC作業を快適にこなすことができるだろう。

 会社でも自宅でも、作業環境を改善したいなら、1つの選択肢としてウルトラワイドモニターの導入をお勧めしたい。