福田昭のセミコン業界最前線

2018年のSSD出荷台数は37%成長して1億6,715万台に

~日本HDD協会2019年1月セミナーレポート(SSD市場編)

 ハードディスク装置(HDD)関連の業界団体である日本HDD協会(IDEMA JAPAN)は今年(2019年)の1月25日に「2019年ストレージの最新動向と今後の展望」と題するセミナーを開催した。

 日本HDD協会はこれまで毎年1月あるいは2月に、業界動向や技術動向、市場動向に関するセミナーを主催してきた。この恒例のセミナーで非常に高く評価されているのが、市場調査会社テクノ・システム・リサーチによるストレージ市場分析である。

 今年は「Updated Storage(HDD and SSD)Market Outlook」と題する講演があった。講演者は同社のアシスタントディレクターをつとめる楠本一博氏である。楠本氏は、HDD市場とSSD市場、ストレージの応用市場などを分析した結果をわかりやすく解説していた。本レポートでは、講演のなかからSSD市場に関する部分をご紹介する。

 なお、本セミナーの講演内容は報道関係者を含めて撮影と録音が禁止されている。本レポートに掲載した画像は、講演者と日本HDD協会のご厚意によって掲載の許可を得たものであることをお断りしておく。

昨年(2018年)のSSD出荷台数は37.2%成長の1億6,715万台

 昨年(2018年)のSSD出荷台数(世界市場)は前年比37.2%増の1億6,715万台と推定した。出荷台数の成長率が30%を超えるのは2015年以来、3年ぶりのことである。ちなみに2015年の成長率は30.4%だった。

 SSDの出荷台数が急速に伸びはじめたのは、2009年からだ。2010年以降、出荷台数は9年連続で2桁成長を遂げた。2010年のSSD出荷台数はわずか880万台だった。この8年間で出荷台数は19倍と急激に成長したことになる。

 また、SSDの出荷台数が約5,000万台に達したのは、2013年のことだ。3年後の2016年には、出荷台数は約1億台に達した。3年間で5,000万台の上積みがあったことになる。その2年後の2018年には、出荷台数は1億5,000万台を超えた。5,000万台の市場拡大に必要とした期間は、3年から2年に縮まっている。1億台の大台を超えたにも関わらず、SSDの台数拡大ペースは鈍るどころか、加速しているようにすら見える。

SSDの四半期別出荷台数の推移(世界市場、2015年~2018年)。、2018年第3四半期までは実績、2018年第4四半期は予測。右下の円グラフは2018年第3四半期におけるベンダー別のシェア(台数ベース)。出典:テクノ・システム・リサーチ

 出荷台数を用途別に見てみよう。「エンタープライズ」、「PC」、「アドオン(増設)」、「産業その他」に用途を分類している。最も多いのは「PC」用で、全体の58%を占める。出荷台数は前年比40.1%増の9,700万台である。次いで「アドオン」用が多く、24%を占める。出荷台数は前年比27.4%増の4,070万台である。そのほかは「エンタープライズ」用が同50.9%増の2,410万台、「産業その他」用が同15.1%増の535万台となっている。「PC」用と「エンタープライズ」用の高い成長が目立つ。

 講演スライドでは、2018年第3四半期におけるSSDベンダー別のシェア(出荷台数ベース)も見せていた。トップがSamsung Electronicsで33.4%を占める。2位は12.3%のWestern Digitalである。そして3位にIntelが10.7%、4位に東芝が8.5%で続く。ここまではすべて、NANDフラッシュメモリのメーカーでもある。

 5位はメモリ応用製品ベンダーのKingston Technologyで、5.9%のシェアを有する。6位はMicron Technologyで、シェアは5.5%である。上位6社を合計したシェアは76.3%で、全体の約4分の3を占める。

今年のSSD出荷台数は22%成長の2億410万台と予測

 今年のSSD出荷台数(世界市場)は、前年比22.1%増の2億410万台と予測した。昨年ほどではないものの、かなり高い成長率を見込んでいる。

 出荷台数の予測値を用途別に見ていこう。「PC」用が前年比26.8%増の1億2,300万台で、昨年と同様に用途別ではもっとも多い。SSD全体に占める比率は60%となり、昨年に比べて2ポイント増加する。「アドオン」用は前年比13.8%増の4,630万台と予測する。「エンタープライズ」用は同20.3%増の2,900万台で、「PC」用に次ぐ高い伸びを期待できる。「産業その他」用は前年比8.4%増の580万台と、SSDのなかではあまり伸びない。

SSDの市場規模の推移(世界市場、2015年~2023年)。2017年までは実績。2018年は推定。2019年以降は予測。出典:テクノ・システム・リサーチ

昨年のSSD出荷金額は28%成長の190億ドル

 SSDの出荷台数が急速に拡大しているのに伴い、SSDの出荷金額(世界市場)も急激に増加しつつある。出荷金額は一昨年(2017年)に、前年比28%増の149億1,100万ドルに達した。昨年は、同27%増の190億390万ドルに伸びたと推定している。今年は同11%増の210億2,230万ドルと予測する。

 今年の成長率が過去2年に比べると低くなるのは、SSDの値下がりを予測しているためである。SSDの平均販売価格(ASP)は一昨年が122.4ドルで、その前年(2016年)の116.21ドルから5.3%上昇した。過去、SSDの平均販売価格は一貫して低下してきており、上昇は異例のことだ。2017年はNANDフラッシュメモリが極端な品不足になったことで値上がりし、その影響でSSDの価格が上昇した。

 昨年はNANDフラッシュメモリの需給が緩和したことでNANDフラッシュメモリとSSDは値下がりし、SSDの平均販売価格は113.69ドルへと低下した。今年は、SSDの価格はさらに下がる見込みである。平均販売価格は前年比9.3%減の103ドルになると予測する。

高価で小容量のSSDと安価で大容量のHDDという構図

 ここからはSSD市場とHDD市場を比較していこう。昨年の時点では、出荷台数と出荷金額ともに、HDDがSSDを大きく上回っている。「HDD/SSD」で計算すると、HDDの出荷台数はSSDの2.27倍、出荷金額は1.32倍である。

 出荷金額の差が出荷台数の差に比べると小さいのは、平均販売価格(ASP)の違いによる。平均販売価格を「HDD/SSD」で計算すると0.57倍となり、HDDのASPはSSDの6割弱と低い。

HDD市場(左)とSSD市場(右)の比較(昨年(2018年)の推定値)。出典:テクノ・システム・リサーチ

 HDDとSSDの総出荷記憶容量には、非常に大きな差がある。「HDD/SSD」は10.9倍に達する。人類社会が生み出す膨大なデータの多くを保管しているのは、HDDであることがわかる。総出荷記憶容量の非常に大きな違いは、出荷台数の違いのほかに、平均記憶容量(1台当たりの記憶容量)の違いが影響している。平均記憶容量の「HDD/SSD」は4.8倍で、1台当たりの記憶容量はHDDがSSDよりもはるかに大きい。

 NANDフラッシュメモリは大容量化が著しいので、原理的にはHDDを超える記憶容量のSSDを作れるし、実際にそのような製品も発売されている。しかし記憶容量当たりの価格はSSDが高いので、超大容量のSSDは極端な高額商品となり、ほとんど普及していない。平均記憶容量でみるとHDDは2,304.1GBと「2TBクラス」であるのに対し、SSDは478.8GBと「480GBクラス」にとどまっている。

 記憶容量当たりの価格(GB当たりのコスト)は、「HDD/SSD」でみると0.122倍である。わかりにくいので「SSD/HDD」に変換すると、8.2倍である。SSDの記憶容量当たりの価格は、HDDの8.2倍と高い。

2020年には金額ベースでSSD市場がHDD市場を超える

 楠本氏は講演で、HDD市場とSSD市場を2023年まで予測したスライドを示していた。このスライドからは、HDD市場とSSD市場に関するいくつものトレンドが読み取れる。

HDD市場とSSD市場の比較(2015年~2023年)。2015年~2017年は実績、2018年は推定、2019年以降は予測。出典:テクノ・システム・リサーチ

 出荷台数のトレンドは、HDDが多いものの減少傾向にあり、SSDは少ないものの増加傾向にある。2023年には、両者の出荷台数がほぼ等しくなる可能性が高い。いずれも出荷台数は約2.7億台である。

 出荷金額のトレンドは、HDDが多いものの減少傾向にあり、SSDは少ないものの増加傾向にある。前述のように両者の差は台数ほどには多くない。来年(2020年)にはSSDの出荷金額がHDDの出荷金額を超える。再来年(2021年)以降はSSDがHDDに対して差を広げていく。

 平均販売価格のトレンドは、SSDが高いものの減少傾向にあり、HDDは低いものの上昇傾向にある。それでも平均販売価格の逆転は、2023年までには起こらない。2023年における平均販売価格の「HDD/SSD」は0.86倍と予測する。

 総出荷記憶容量はHDDが多く、SSDが少ない。いずれも増加傾向にある。2018年の時点で「HDD/SSD」は10.9倍に達している。今後も、HDDの総出荷記憶容量の拡大ペースはかなり力強い。2023年の時点でも、両者の間には非常に大きな開きがある。2023年の「HDD/SSD」は6.66倍と予測する。

 平均記憶容量(1台当たりの記憶容量)はHDDが大きく、SSDが小さい。いずれも増加傾向にあり、増加のペースはHDDが速い。前述のように、2018年の時点で「HDD/SSD」は4.8倍だった。それが2023年には「HDD/SSD」は6.7倍へと拡大する。

記憶容量当たりのコストは4年後でもSSDがHDDの7.7倍と高い

 そして記憶容量当たりの価格(1GB当たりのコスト)は、HDDが低く、SSDが高い。いずれも価格は低下傾向にある。2016年の時点でSSDの記憶容量当たりの価格はHDDの8.8倍だった。これが2018年になると、8.2倍へと縮まる。2023年の時点では、7.7倍になると予測する。

 もう少し詳しく見ていこう。HDDの記憶容量当たりの価格は2023年には2016年の3.15分の1、言い換えると31%に低下する。これに対してSSDの記憶容量当たりの価格は2023年には2016年の3.61分の1、言い換えると28%に低下する。いずれも記憶容量当たりの価格を相当に速い勢いで下げていく。SSDが記憶容量当たりの価格で近い将来にHDDに追いつくことは、容易ではないことがうかがえる。