西川和久の不定期コラム
デル「P2815Q」
~7万円を切る28型4Kディスプレイ
(2014/3/14 06:00)
デルは4日、直販価格69,980円で4K(3,840×2,160ドット)表示に対応する28型液晶ディスプレイを発表、3月18日から販売を開始する。一足早く編集部から実機が送られて来たので試用レポートをお届けしたい。筆者としても自分の環境で4Kディスプレイを使うのは初めてなだけに、楽しみながらのレポートとなった。
7万円を切る安価な28型4Kディスプレイ
P2815Qは2013年12月に同社が1,000ドルを切る価格で発売することを予告し、今年(2014年)の1月より米国の直販サイトでは、699.99ドルで販売していたものだ。
4Kのラインナップとしてはこのほかに、31.5型の「UP3214Q」と23.8型の「UP2414Q」の2つがあり、どちらもIPS式で価格は299,980円と99,979円。それなりに高価となる。別の場所で「UP2414Q」を少し触ったことがあるのだが、IPS式で4Kは非常に綺麗だったものの、サイズは少し小さいと個人的には思っていた。
そのような中、28型で4Kに対応した「P2815Q」が発表された。安価なだけに若干スペックダウンしており、TNパネルでリフレッシュレート30Hzというスペックは気になるところ。主な仕様は以下の通り。
デル「P2815Q」の仕様 | |
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最大解像度 | 3,840×2,160ドット(30Hz)/157ppi |
画面サイズ | 28型(非光沢/TN/LEDバックライト) |
視野角 | 水平170度/垂直160度 |
中間色応答速度 | 5ms(標準) |
輝度 | 最大300cd/平方m |
コントラスト比 | 最大200万:1 |
インターフェイス | DisplayPort 1.2、Mini DisplayPort、HDMI 1.4(MHL 2.0対応)、USB 3.0×4、DisplayPort出力 |
高さ調整 | 115mm |
チルト | 前5度/後22度 |
スイベル | 左右各45度 |
ピボット機能 | あり |
サイズ/重量 | 661.3×204.1×435.3~550.3mm/7.8kg(スタンド込み) |
直販価格 | 69,980円 |
サイズは28型。23.8型の「UP2414Q」より一回り大きいサイズとなる。最大解像度は、4K/3,840×2,160ドットで画素密度は157ppi。ただし最大解像度でのリフレッシュレートは一般的な60Hzではなく、半分の30Hzだ。
中間色応答速度は5ms、輝度は最大300cd/平方m、コントラスト比は最大200万:1と、これら点については平均的。非光沢のパネルなので映り込みが少なく眼に優しい。
インターフェイスはDisplayPort 1.2、Mini DisplayPort、HDMI 1.4(MHL 2.0対応)、USB 3.0×4。DisplayPort出力。
MHL 2.0に対応したHDMIポートがあると、最近のスマートフォンのMicro USBから画面出力できるため便利。加えてDisplayPort出力は、デイジーチェーンでいろいろなデバイスを接続可能だ。USB 3.0の4ポートHubも魅力的と言えよう。
高さ調整は115mm、チルト前5度/後22度、スイベル左右各45度、ピボット機能ありと、一通り揃っているのもポイントが高い。
サイズは、661.3×204.1×435.3~550.3mm、重量7.8kg(スタンド込み)。持ち上げた時に意外と軽く、設置は結構気軽にできる。
保証は3年。良品先出しの翌営業日交換サービスや、輝点ピクセルが1つでもあれば交換に応じるプレミアムパネル保証が69,980円の価格に含まれている。
なお、今回は検証環境の事情によりWindows 8.1では試用していない。
全体のデザインは同社らしくシンプルで、事務所でも自宅でもマッチする。高さ調整115mm、チルト前5度/後22度、スイベル左右各45度の調整ができるので設置場所も困らない。ケーブルマネージメントは、スタンドにある穴とカバーで綺麗にまとめることが可能だ。
3系統の入力とDisplayPort出力、USB 3.0の4ポートHubと、インターフェイス関連は豊富で困る事はないだろう。
肝心の映りは、仕様上、TNパネルで30Hzということで覚悟していたが、良い意味で裏切られた。明るさ・コントラストも十分、発色も自然で彩度が高め、確かにIPS式より視野角は狭いものの(特に垂直方向)、正面から見る限り問題はない。
彩度が高めなのは、後述するsRGBとのカラープロファイルを比較したチャートを見れば分かるが、sRGBよりかなり色域が広く、その影響だ。なお、sRGBエミュレーションモードは搭載していない。
動画に関しては、YouTubeや自分で撮影したデータを観る限り、30Hzだからと言って特に気になる部分はなかった。
全体的によく出来たディスプレイであり、これで7万円を切るとは驚くばかりだ。
4K表示はOS側に難あり!?
OSDは、昔ながらの同社らしいもので、基本的に右下のボタン4つを使って操作する。機能でボタンの意味も変わるが、多くは上2つがカーソル、3つ目が確定、4つ目がキャンセル(または終了)となる。
メニューは、「プリセットモード」と「輝度/コントラスト」、「メニュー」、「終了」。単独操作でプリセットモードと輝度/コントラストは設定可能だ。
プリセットモードは、「標準」、「マルチメディア」、「ムービー」、「ゲーム」、「テキスト」、「暖色」、「寒色」、「ユーザーカラー」と分かれているが、色温度を数値で設定することはできない。
メニューは、「輝度/コントラスト」、「入力ソース」、「色設定(入力カラー形式/プリセットモード)」、「画面設定(アスペクト比/シャープネス/動画コントラスト/DisplayPort 1.2)」、「エネルギー設定」、「メニュー設定」、「その他の設定」、「カスタマイズ」。通常の用途においてこれだけあれば問題ないだろう。
今回試したのはSandy Bridge版Mac mini+Mac OS X 10.9.2。まず下記の画面キャプチャをご覧頂きたいが、この広さが4Kの威力だ。見慣れたシステム環境設定やPC Watchの画面がとても小さく見える。Office.comでExcelのシートを開くとBA/103までが一気に表示できる。
ただこの内容が28型に映るので、実際は文字がかなり小さく、とても普通(?)には読めない状態となる。MacBook ProのようにRetina表示モードが欲しいところだ(噂によれば次アップデートで対応する予定とか)。
おそらくWindows 8.1でも、Windowsストアアプリは別としてデスクトップ環境を使うときは同じで、ある程度はスケーリングできるものの、8型のThinkPad 8でも使いやすいレベルまではスケーリングできなかった経験上、この状態と大差ないと思われる。
もう少し先かと思っていたPCでの4K環境がこんなに早いタイミングでやってきたこともあり、OS側の対応が追い付いていない状態と言える。現状としては、HDやフルHD解像度のディスプレイをメインとし、この4Kディスプレイを(Photoshopなど)超高解像度が必要なワークスペースとする、デュアルディスプレイのセカンダリとして使用するのが実用的だろう。
また、Sandy Bridgeではパワー不足なのか、等倍での動画や写真の再生は問題ないものの、全画面表示すると、動画の激しいコマ落ちはもちろん、写真でさえもタイルが順に埋まるようにパラパラと表示される。機会があれば最新環境で再トライしたいところ。
ColorSyncユーティリティのチャートは手前側(色あり)がsRGB、後ろ側(モノクロ)がDELL「P2815Q」となっている。sRGBを綺麗にカバーした上に色域が広いことが分かる。これだけ違うとsRGBとは異なった発色になるため、sRGBエミュレーションモードも欲しいところだが、先に書いたようにその機能は搭載していない。
セットアップに関しては、今回はMac OS Xで試したので、特にインストールするソフトウェアはなく、Windowsに関しては「Dellディスプレイマネージャ」を利用することができる。
機能はユーザーガイドの画面キャプチャを参考にして欲しいが、「クイック設定」、「ベーシック機能」、「オートモード」、「省エネルギー機能」などが、PCのパネルから設定できる。オートモードは、起動するアプリに応じてプリセットの種類を変更すること可能だ。
以上のようにデル「P2815Q」は、7万円を切った、購入しやすい価格帯の4Kディスプレイだ。スペック上気になっていた30HzやTNパネルは、用途にもよるだろうが、ほぼ気にならない範囲に収まっている。3系統の入力に加え、DisplayPort出力や4ポートのUSB 3.0 Hubも魅力的だ。
グラフィックスのパワーはそれなりに必要だが、安価に4K環境を構築したいユーザーにお勧めの逸品と言えよう。