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QwenはGemmaの倍近く――Hugging Face統計にみる、中国製AIの台頭

Qwenの派生モデル

 Qwen、Kimi、MiniMax……このところ中国製AIモデルの勢いは留まるところを知らない。Hugging Faceが8月14日(米国時間)に発表したオープンモデルの統計情報で、中国製AIモデルがますますシェアを拡大している情勢が明らかになった。

 この報告は、AIモデルが多数アップロードされているHugging Faceによるもので、2026年1月から7月31日までのデータを統計している。この間で顕著に見られた動きとしては以下のようなものを挙げている。

フロンティアモデルの増加

 これまで、ラボは小型モデルをまず発表して徐々に大型モデルへと開発を進めていったが、2026年は中国のいくつかのラボはこの過程を超越し、ほぼ毎月、最大かつ最高性能のオープンモデルをリリース、米国のラボのどのモデルよりも大きくなった。

 特に、1兆パラメータを超えるモデルとして「Kimi-K2.5」、「DeepSeek-V4-Pro」、「LongCat-2.0」、「Kimi-K3」は徐々にその上限を引き上げ、Kimi-K3では2兆7,800億パラメータ(2.78T)に達した。一方米国製は「Nemotron 3 Ultra」(5,610億: 561B)と「Nemotron 3 Super」(1,240億: 124B)、「Inkling」(9,520億: 952B)、「Trinity-Large」(3,990億: 399B)のみで、1兆超えはない。

大規模モデルの変遷

 また、中国勢の中でAlibaba(Qwen)およびTencentは、10億(1B)未満から大規模なモデルまでを展開しているのが特徴。さらにXiaomiやMeituanといった、1年前にはAIラボとしてあまり知られなかった企業が大規模モデルの公開に踏み切っている。

XiaomiやMeituanなども大規模モデルを投入している

 一方、もっとも多く新しいオープンモデルを公開した2つの企業はAMDとNVIDIAで、それぞれ200以上のモデルリポジトリを公開している。これは自社のハードウェアに最適化したモデルを提供し、チップ販売につなげる思惑があるためなのだが、それらも重要な作業であるとしている。

AMDとNVIDIAが最も多くのモデルを投入している

 また、米国製のモデルは小規模モデルや埋込型モデルが人気で、Google、Microsoft、IBM Granite、OpenAIの画像処理/音声認識モデルは年間数億回ダウンロードされており、依然として成長を続けているとした。

1B未満のモデルがダウンロード数の多くを占めている

注目されているモデルが採用されているとは限らない

 Hugging Faceではダウンロード数以外にも「いいね」数をカウントしているが、いいねが多いからといって採用例が多いわけではない。たとえばKimi-K3は1いいねあたり約60回ダウンロードされているが、意味の近さを高速に計算できるモデルの「all-MiniLM-L6-v2」は同指標で30万回以上。つまり、より多くのユーザーがall-MiniLM-L6-v2へ依存していることが分かる。

Kimi K3はいいね数が多いものの、ダウンロード数でいえばall-MiniLM-L6-v2が圧倒的だ

 このため、パラメータ数が公表されているモデルのうち、10億未満のモデルの累計ダウンロード数は総ダウンロード数のうちの83%をも占めている。ほとんどの開発者が実際に所有しているハードウェアで動作するのは小規模モデルに留まるためだ。

 また、超大型モデルだけに絞っているMoonshotは年間3,700万ダウンロードを記録しているが、軽量モデルから大型モデルまでを網羅しているQwenは約20億4,500万回に達し、その差は55倍だ。ほとんどのモデルはリリース直後の数カ月で決定し、それ以降は急減して安定期に入るため、ユースケースを幅広くカバーできるモデルのほうがデファクトスタンダードになりやすいとしている。

Qwenは幅広くモデルをリリースしている

中国製のフロンティアモデルがオープンウェイトを牽制

 中国製モデルの中で注目したいのはフロンティアモデルのオープン化戦略。200億(20B)パラメータを超えるモデルのうち、中国製の59%がApache 2.0、22%がMITライセンス。Kimi K3とQwen 3.8では制限付きの動きが始まっているが、DeepSeekやZ.aiなどは非常に寛容なMITライセンスだ。一方米国でApacheまたはMITライセンスなのは29%に留まり、慎重な姿勢を示している。

モデルのライセンスでは中国勢が緩いApache 2.0またはMIT

 これらのモデルに対して寛容なライセンスを提供しているのは、ライセンス収入を得ることではなく、自社APIやクラウドサービスの利用拡大、ハードウェアやプラットフォーム、エコシステム自体におけるポジショニングの確保を目的としていると考えられる。

Qwen一強が明るみに

 一方、コミュニティでの活用は、エコシステムにおける位置付けにおいて最も重要であるが、この中でQwenが圧倒的だ。ハブ上では151,448個の派生モデルを擁しており、これはGoogleの1.83倍、Metaの2.6倍だ。

Qwenの派生モデル数は15万超
ローカルで実行されているモデルでもQwenが圧倒的に強い

 この強さの背後には、定期的なリリースサイクルの維持がある。目玉リリースに頼るのではなく、継続的な更新を行なうことが強みとなっている。また、小規模から大規模まで用意している網羅性と、Apache 2.0ライセンスによるオープン性も指示されている。

1兆パラメータ採用も拡大中。Claude CodeやCodexからのダウンロードも増加

 1,000億パラメータを超えるモデルの使用も増えている。これは、2026年2月にllama.cppを開発しているGGMLのチームがHugging Faceに参画したことが貢献しているという。llama.cppでは、複数のPCのメモリやGPUを連結して1つのモデルを動作させられるが、2,840億のパラメータを持つ「DeepSeek-V4-Flash」と約2.8兆のパラメータを持つKimi-K3も動作可能だとしている。

llama.cppにより、複数のPCを束ねて大きなAIモデルを動作させることも可能

 AIエージェントからの利用は「Claude Code」と「Codex」が人気で、特にCodexは7月にシェアを約2倍に伸ばしたとしている。

AIエージェント別ではClaude CodeとCodexが人気

 なお、今回の報告はモデルの絶対的な品質や商用利用の実績、市場シェア全体を直接測るものではないとしているほか、API経由での利用や非公開環境での運用、ほかのチャネルで配布されたモデルの利用状況までは捉えていない。Hugging Faceでは今回のデータを「AI市場全体の完全な計測結果ではなく、エコシステム発展における1つの側面を示す視点」として捉えてほしいとしている。

 しかし、巨大モデルのローカル実行環境の整備や開発プロセスの進化が日進月歩する中で、オープンモデルの主導権やエコシステムをめぐる最新動向は、今後のPCハードウェア市場や開発環境にも大きな影響を与えることになりそうだ。