西川和久の不定期コラム

謎の「Ryzen 7 8745HS」を搭載した7万円台のミニPCをチェックしてみた

AuBOX 8745HS

 CHUWIは、Ryzen 7 8745HSを搭載したミニPC「AuBox 8745HS」を発売中だ。価格は通常7万9,900円だが、現在公式通販で6,000円引きの7万3,900円!編集部から実機が送られて来たので試用レポートをお届けしたい。

謎のRyzen 7 8745HSプロセッサを搭載したミニPC!

 CHUWIの製品は過去何度もご紹介しているが、ミニPCだけでなく、ノートPCやタブレットなども販売しているメーカーだ。執筆時にサイトを再確認したところ、ノートPCに関してはN100などローエンドモデルが多く、タブレットは一部Android搭載モデルもある。ミニPCも傾向は同じだ。

 今回ご紹介する「AuBox 8745HS」は、Ryzen 7なのでミドルハイ相当という、同社としてはちょっと珍しいパターンだ。詳細は後述するが、調べてみたところ、“Ryzen 8000番台だがNPU/AIはなし”というちょっと変わった仕様だった。プロセッサ内蔵のNPUは実アプリであまり使われておらず、なしでOK的なユーザー向けというところか。主な仕様は以下の通り。

CHUWI「AuBox 8745HS」の仕様
プロセッサRyzen 7 8745HS(Zen4、8コア16スレッド、クロック最大 4.9GHz、キャッシュ 16MB、TDP 65W)
メモリ16GB(DDR5-5600、SO-DIMM/スロット1つ空き)
ストレージM.2 2280 SSD 1TB(NVMe対応/スロット1つ空き)
OSWindows 11 Pro(24H2)
グラフィックスRadeon 780M/HDMI2.1、DisplayPort、Type-C x2
ネットワーク2.5GbE 2基、Wi-Fi 6、Bluetooth 5.3
インターフェイスUSB4、USB 3.2 Gen 2 Type-C(映像出力対応)、USB 3.2 2基、USB 2.0 2基、3.5mmジャック
サイズ/重量154×152×45mm、740g
価格7万3,900円(税込)

 プロセッサはRyzen 7 8745HS。実はこのCPU、AMDの英語や日本語サイトにSKUの記載がなく(笑)、謎のプロセッサということでCPU-Zで実際の仕様を確認してみた。Code NameはHawk Point。従ってZen 4でRDNA 3となる。

【9時10分追記】AMDの中国語版サイトに記載がございました。ご教示に感謝するとともに追記させていただきます。

コードネームはHawk Point

 4nmの8コア16スレッド。TDPは最大54W(ここは同社のサイトにある仕様と異なる)、L3キャッシュ16MB。NPUはなく、雰囲気Ryzen 7 8845HSのNPUなし版、的なところか。いずれにしてもRyzen 7なのでミドルハイの位置付けだ。少し紛らわしいが、Ryzen 7 8745H“X”(コードネームはDragon Range)とは異なるので注意したい。

 メモリはSO-DIMM/DDR5-5600 16GB 1基。シングルチャンネル作動となる。ストレージはM.2 2280 SSDの1TB。2スロットあり1つ空き。OSはWindows 11 Pro。24H2だったのでこの範囲でWindows Updateを適用し評価した。

 グラフィックスはプロセッサ内蔵Radeon 780M。外部出力用にHDMI 2.1、DisplayPort、USB Type-C 2基を装備。

 ネットワークは2.5GbE x2、Wi-Fi 6、Bluetooth 5.3。そのほかのインターフェイスはUSB4、USB 3.2 Gen 2 Type-C(映像出力対応)、USB 3.2 2基、USB 2.0 2基、3.5mmジャック。

 サイズ154×152×45mm、重量740g。価格は7万3,900円。搭載メモリ/ストレージ容量などの違いで別のパッケージはない、16GB/1TBだけの構成だ。

 AIタイプではないものの、10万円を大幅に切っており、メモリやストレージの増設もやりやすいため、ちょっと遊んでみるか!?的な用途にはちょうどいいのではないだろうか。

前面。電源ボタン。結構薄型な筐体が印象的
背面は電源入力、USB4、3.5mmジャック、DisplayPort、HDMI、USB 2.0 2基、2.5GbE 2基
右側面。USB 3.2 Gen 2 Type-C、USB 3.2 Gen 2、ロックポート
左サイドは放熱用のスリットのみ
裏面とiPhone 16 Pro。VESAマウンタ用のネジ穴2つ。iPhone 16 Proとほぼ同じ。厚みがない分、フットプリントは広め
付属品。ACアダプタ(サイズ約150×55×30mm/重量450g/出力19V、6.32A、120W)、VESAマウンタとネジ
BIOS / Main。起動時[DEL]キーで表示。このタイプの画面は初めて見た
BIOS / Advanced
重量は実測で749g
いつものキーボード付きモバイルモニターへ接続。USB4およびUSB3.2 Gen 2 Type-C(映像出力対応)があるので、Type-Cケーブル1本で接続可能

 筐体は裏以外、金属製の艶消しシルバーだ。写真からも分かるように一般的なミニPCと比較して薄型だが、その分、フットプリントは広めだ。カバンなどには入れやすいものの、ACアダプタを合わすと1kgを超えるため少し重い。

 前面は電源ボタンのみ。背面は電源入力、USB4、3.5mmジャック、DisplayPort、HDMI、USB 2.0 2基、2.5GbE 2基。そしてミニPCとしは珍しく右側面にUSB 3.2 Gen 2 Type-C、USB 3.2 Gen 2、ロックポートを配置。薄いので背面に収まり切らなかったのだろう。3.5mmジャックが背面側にあるため少し使いにくいかもしれない。裏は4つのゴム足とVESAマウンタ用のネジ穴。

 付属品はACアダプタ(サイズ約150×55×30mm/重量450g/出力19V、6.32A、120W)、VESAマウンタとネジ。

 いつものキーボード付きモバイルモニターへの接続は、USB4とUSB 3.2 Gen 2 Type-C(映像出力対応)があるためType-Cケーブル1本で接続可能。BIOSの表示は起動時[DEL]キーとなる。

 内部へのアクセスは裏のゴム足部分にネジがあり4本外せば筐体が分離と非常に簡単だ。開けると左側にM.2 2280 2基(1つ装着済み)、右側にSO-DIMM 16GB 1基が見える。

裏のゴム足の部分にネジ穴があるので、そこからネジを外し、筐体を引っ張れば簡単に2つに別れる
左側にM.2 2280 2基(1つは1TB SSD装着済み)、右側にDDR5 SO-DIMMスロット2基(1基は16GB装着済み)

 ノイズはあるにはあるものの、筐体に耳を近付ければ……であって一般的な設置であれば気になることもないだろう。発熱はベンチマークテストなど負荷をかけると、左側のスリットから生暖かい(熱いまでは行かない)エアーが出る。

Ryzen AI 9 HX 370との比較は劣るものの十分高性能!

 初期起動時、特にプリインストールなどのアプリはなく、Windows 11 Pro標準のまま。最近触っているRyzen AI系のプロセッサなどとの比較では若干スペックは劣るものの、通常用途であれば特に問題ないレベルだ。

 M.2 1TB SSDは「AirDisk 1TB SSD」。検索してもネット上に仕様はなく、詳細は不明。とは言え、CrystalDiskMarkでシーケンシャルリード3,560.960MB/s、シーケンシャルライト2,607.798 MB/s出ているので遅くはない。C:ドライブのみの1パーテションで約951GBが割り当てられ空き923GB。

 2.5GbEはRealtek Gaming 2.5GbE 2基、Wi-FiはRealtek 8852BE Wireless LAN WiFi 6、BluetoothもRealtek製だ。

初期起動時のデスクトップ。Windows 11 Pro標準
デバイスマネージャー/主要なデバイス。M.2 1TB SSDは「AirDisk 1TB SSD」。2.5GbEはRealtek Gaming 2.5GbE 2基、Wi-FiはRealtek 8852BE Wireless LAN WiFi 6、BluetoothもRealtek製
ストレージのパーティション。C:ドライブのみの1パーテションで約951GBが割り当てられている
AMD Software Adrenalin Edition

 ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、Cinebench R23。Ryzen AI 9 HX 370を搭載したAiberzy「XG1-370」と比較すると、PCMark 10やCinebench R23は本機が1ランク下。3DMarkに関してはザックリ2分の1~3分の2のパフォーマンスとなる。なお、*印の項目は、本機が優っていた部分となる。

 なお上に記した通り、本機は16GBメモリモジュール1枚のシングルチャンネル作動となっている。従ってもう1つ16GBを追加し、32GBとしてデュアルチャンネル作動にすればiGPUも含めパフォーマンスの向上が見込まれる。

 この点、8GBが2枚であればデュアルチャンネル作動なのだが、増設する時、2枚のSO-DIMMは捨てることになる。16GBが1枚だと+16GBで32GBとなり無駄がなく、そう考えると良心的なのだが、16GBが1枚のままではベンチマークテスト的には不利になるのはトレードオフだろうか。

 いずれにしても、Aiberzy XG1-370との価格差はほぼ倍(あちらは14万5,199円)なので、結構頑張ってる方ではないだろうか!?

PCMark 10 v2.2.2737
PCMark 10 Score6,734
Essentials10,388
App Start-up Score14,075
Video Conferencing Score8,253
Web Browsing Score9,652
Productivity9,098
Spreadsheets Score11,287
Writing Score7,335*
Digital Content Creation8,771
Photo Editing Score13,374
Rendering and Visualization Score8,549
Video Editting Score5,903
3DMark v2.32.8426
Time Spy1,963
Fire Strike Ultra1,493
Fire Strike Extreme2,561
Fire Strike4,708
Sky Diver17,381
Cloud Gate27,292
Ice Storm Extreme125,410
Ice Storm156,808
Cinebench R23
CPU16,557(3位)
CPU(Single Core)1,721(1位)
CrystalDiskMark 8.0.5
[Read]
  SEQ    1MiB (Q=  8, T= 1):  3560.960 MB/s [   3396.0 IOPS] <  2351.84 us>
  SEQ    1MiB (Q=  1, T= 1):  2519.187 MB/s [   2402.5 IOPS] <   415.98 us>
  RND    4KiB (Q= 32, T= 1):   585.809 MB/s [ 143019.8 IOPS] <   216.59 us>
  RND    4KiB (Q=  1, T= 1):    64.392 MB/s [  15720.7 IOPS] <    63.52 us>

[Write]
  SEQ    1MiB (Q=  8, T= 1):  2607.798 MB/s [   2487.0 IOPS] <  3209.17 us>
  SEQ    1MiB (Q=  1, T= 1):  2434.863 MB/s [   2322.1 IOPS] <   430.22 us>
  RND    4KiB (Q= 32, T= 1):   446.330 MB/s [ 108967.3 IOPS] <   292.86 us>
  RND    4KiB (Q=  1, T= 1):   169.426 MB/s [  41363.8 IOPS] <    24.07 us>

 以上のようにCHUWI「AuBox 8745HS」は、Ryzen 7 8745HS/16GB/1TBを搭載したミニPCだ。Ryzen AI 9 HX 370搭載機と比較して遅いが、最大の魅力は7万円台で購入可能なこと。加えて、メモリやストレージの増設が容易なのもよい。

 最新鋭とは言わないものの、一般的な用途で安価なミニPCを探しているユーザーに使って欲しい1台だ。そしてできれば16GBモジュールを1枚足した32GB構成とし、デュアルチャンネル作動で使ってほしい。