西川和久の不定期コラム

MINISFORUMのサブブランドからRyzen AI 9 HX 370搭載ミニPCが登場!Aiberzy「XG1-370」

Aiberzy「XG1-370」

 この連載でもお馴染みMINISFORUM、そのサブブランドであるAiberzyからRyzen AI 9 HX 370搭載のミニPCが販売中だ。32GB/1TBモデルが編集部から送られてきたので試用レポートをお届けしたい。

Ryzen AI 9 HX 370/32GBメモリ/1TB SSD搭載。USB4だけでなくOCuLinkもあり!

 MINISFORUMのサブブランドということで、ちょっと気になったのでその意味をGoogleで調べてみると、

  1. メインブランドの傘下
    サブブランドは、メインとなるブランドの信頼性や認知度を背景に、そのブランドイメージを損なうことなく、特定の製品やサービスをアピールするために使用。
  2. 異なるコンセプトやターゲット層
    メインブランドとは異なるコンセプトやターゲット層、価格帯を設定することで、より幅広い顧客層のニーズに応える。

とある。

 1.に関してはあのMINISFORUM傘下なので安心感があり、特に問題はないだろう。一方、2.の異なるコンセプトやターゲット層については、冒頭の写真からも分かるように、今回の製品もMINISFORUMの得意中の得意であるミニPC、しかもRyzen AI 9 HX 370搭載とハイエンドな機種だ。コンセプトやターゲット層は丸被りなように思える……。

 さて、話を戻して「XG1-370」は、32GBメモリ/1TB SSDと64GBメモリ/1TB SSDの2モデルあり、手元に届いたのは前者だ。主な仕様は以下の通り。

【表1】Aiberzy「XG1-370」の仕様
Aiberzy「XG1-370」
プロセッサRyzen AI 9 HX 370
(Zen 5 4基+Zen 5c 8基、12コア/24スレッド、クロック最大5.1GHz、L2キャッシュ12MB/L3キャッシュ24MB、TDP 28W/cTDP 15-54W、NPU最大50TOPS)
メモリ32GB(DDR5-5600、SO-DIMM 2枚、最大128GB)
ストレージM.2 2280 SSD 1TB(NVMe対応、空きスロット1基)
OSWindows 11 Pro
グラフィックスRadeon 890M(16コア)
ディスプレイ出力HDMI 2.1、DisplayPort 2.0、USB4 2基
ネットワーク2.5Gigabit Ethernet、Wi-Fi 7、Bluetooth 5.4
インターフェイスUSB4 2基、USB 3.2 Gen 2 2基、USB 2.0、3.5mmオーディオジャック、OCuLink
サイズ/重量128×126×52mm/0.6kg
価格14万5,199円

 プロセッサはAI対応のRyzen AI 9 HX 370。Zen 5 4基、Zen 5c 8基の合計12コアで24スレッドだ。クロックは最大5.1GHz、キャッシュはL2が12MB、L3が24MB、TDP 28WでcTDP 15-54Wとなっており、最大50TOPSのNPUを内蔵する。SKUとしてはこの上にRyzen Al Max+ 395もあるが、少し特殊なので、一般向けとしては最上位と言えるだろう。

 メモリはSO-DIMMのDDR5-5600で16GB 2枚の合計32GB。最大128GBまで搭載可能だ。ストレージはM.2 2280スロットが2基で、1つは1TBが装着済みとなっている。もう1つは空きスロットだ。SSDを増設するか付属のOCuLinkアダプタを付けるかの二択となる。SSDを増設できないのはつらいので、OCuLinkはM.2と排他にならない実装にして欲しかったところだ。

 OSはWindows 11 Proを搭載。初期状態はバージョン24H2だったので、この範囲でWindows Updateを適用し評価した。

 グラフィックスはプロセッサ内蔵のRadeon 890M(16コア)。外部映像出力用にHDMI 2.1、DisplayPort 2.0、USB4 2基を装備する。

 ネットワークは2.5Gigabit Ethernet、Wi-Fi 7、Bluetooth 5.4。そのほかのインターフェイスはUSB4 2基、USB 3.2 Gen 2 2基、USB 2.0、3.5mmオーディオジャック、OCuLink。上述したようにOCuLinkに関してはM.2スロット1基との排他となる。

 サイズ128×126×52mm、重量0.6kg。執筆時点の価格は32GBメモリ/1TB SSDモデルで14万5,199円、64GBメモリ/1TB SSDモデルで15万8,879円。価格的にはミニPCとしては高めで、完全にハイエンドと言える。冒頭に書いたが、本家との棲み分けはどうしていくのだろうか。

前面。電源ボタン、USB 3.2 Gen 2 2基、USB4、3.5mmオーディオジャック。右側面にケンジントンロックポート
背面。電源コネクタ、2.5Gigabit Ethernet、DisplayPort 2.0、OCuLink、USB4、HDMI 2.0、USB 2.0
裏面。VESAマウンタ用ネジ穴2つ。サイズ比較用にiPhone 16 Proを置いてみた。ミニPCとしては標準的なサイズ
付属品。ACアダプタ(サイズは約96×63×23mm、重量228g、出力19V/6.32A)、OCuLinkアダプタ、HDMIケーブル、VESAマウンタとネジ

 筐体はシルバーの金属製で、なかなか重厚感がありカッコいい。重量は実測で656g。ACアダプタが実測で228gなので、あわせても1kgを切り、持ち運びも容易だ。iPhone 16 Proの比較写真からも分かるように、結構コンパクトにまとまっている。

 前面には電源ボタン、USB 3.2 Gen 2 2基、USB4、3.5mmオーディオジャックを装備。写真はないが、右側面にケンジントンロックポートもある。背面は電源コネクタ、2.5Gigabit Ethernet、DisplayPort 2.0、OCuLink、USB4、HDMI 2.1、USB 2.0を配置。

 付属品は、ACアダプタ、OCuLinkアダプタ、HDMIケーブル、VESAマウンタとネジ。

BIOS(メイン画面)。起動時「Del」キーで表示。いったんメニューが現れる
BIOS(設定画面)。「Setup」でBIOSの設定画面へ
重量は実測で656g
キーボード付きモバイルモニターへ接続。USB4があるのでType-C to Type-Cケーブル1本でOK

 BIOSへのアクセスは起動時に「Del」キーだ。まずメニューが表示され、「Setup」でBIOS画面に入る。キーボード付きモバイルモニターへの接続は、USB4があるのでType-C to Type-Cケーブル1本でOKだった。

 本体内部へのアクセスは裏にある四隅のネジを外すだけでできるため簡単だ。ただし、底面パネルにケーブルが2本接続されているので要注意。

 メモリはCrucial製で、SSDはKingston製が使われている。中央辺りにM.2 2280のスロットが見える。ここへSSDをもう1つ増設するか、OCuLinkアダプタを取り付けることになる。

四隅にネジがあるので外せば簡単に内部へアクセスできる。ケーブル2本が裏蓋につながっているので要注意だ
メモリはCrucial製。中央にM.2 2280の空きスロットが1つ

 ノイズは、筐体に耳を近づければ聞こえるといったレベルで、少し離すと気にならない。発熱は、ベンチマークテストなどでCPUに負荷をかけると背面から暖かい空気が出るものの、熱い!と言うほどの温度ではない。

 総じてミニPCとしては上手くまとめられており、加えてメンテナンスも容易。唯一、OCuLinkがM.2スロットと排他と言うのが惜しい感じだろう。

Ryzen AI 9 HX 370ならではのパフォーマンス!

 初期起動時、壁紙などの変更はなく、Windows 11 Proの標準のまま。Ryzen AI 9 HX 370は以前使ったときも印象が良く、本機もそのままのイメージで使用できた。ミニPCとは言え、メインPCとして十分使えるパフォーマンスだ。

 1TBのSSDはKingston「OM8TAP41024K1-A00」。メーカーの仕様ページによると、シーケンシャルリード最大6,100MB/秒、シーケンシャルライト最大5,300MB/秒となっており、後述するがCrystalDiskMarkのスコアもそのまま出ている。C:ドライブのみの1パーティションで、約951GBが割り当てられ、空きは905GBだった。BitLockerで暗号化されている。

 2.5Gigabit Ethernetは「Realtek Gaming 2.5GbE Family」、Wi-Fiは「MediaTek Wi-Fi-7 MT7925」、BluetoothもMediaTek製だ。デバイスマネージャにはNPUの項目も見える。

初期起動時のデスクトップ。Windows 11 Pro標準のものだ
デバイスマネージャと主要なデバイス。1TBのSSDはKingston「OM8TAP41024K1-A00」、2.5Gigabit Ethernetは「Realtek Gaming 2.5GbE Family」、Wi-Fiは「MediaTek Wi-Fi-7 MT7925」、BluetoothもMediaTek製
ストレージのパーティション。C:ドライブのみの1パーティションで約951GBが割り当てられている。BitLockerで暗号化されていた
AMD Software Adrenalin Edition

 ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、Cinebench R23、CrystalDiskMarkを実施。以前掲載した同じプロセッサ搭載「MINISFORUM AI X1 Pro」とスコアを見比べると、多少上下はあるものの同じような結果だ。SSDに関しては本機の方が少し速い。

 いずれにしても、ミニPCでこれだけ性能が出れば一般的な用途であれば十分以上だろう。もしゲームやAIなどを楽しみたいときは、OCuLinkに外付けGPUを装着するという必殺技もある。

【表2】PCMark 10のベンチマーク結果
Aiberzy XG1-370
(PCMark 10 v2.2.2737)
MINISFORUM AI X1 Pro
(PCMark 10 v2.2.2704)
PCMark 10 Score7,4897,827
Essentials11,04711,135
App Start-up Score14,32714,800
Video Conferencing Score8,7018,644
Web Browsing Score10,81610,794
Productivity9,63710,404
Spreadsheets Score12,77713,101
Writing Score7,2708,263
Digital Content Creation10,70711,234
Photo Editing Score16,30416,950
Rendering and Visualization Score11,52711,481
Video Editing Score6,5327,286
【表3】3DMarkのベンチマーク結果
Aiberzy XG1-370
(3DMark v2.31.8385)
MINISFORUM AI X1 Pro
(3DMark v2.31.8372)
Time Spy3,7073,631
Fire Strike Ultra2,5462,478
Fire Strike Extreme4,4924,363
Fire Strike8,2828,109
Sky Diver29,13228,326
Cloud Gate39,69938,419
Ice Storm Extreme154,416160,220
Ice Storm184,512186,351
【表4】Cinebench R23のベンチマーク結果
Aiberzy XG1-370MINISFORUM AI X1 Pro
CPU22,84222,672
CPU(Single Core)2,0062,023
【表5】CrystalDiskMark 8.0.5のベンチマーク結果
Aiberzy XG1-370MINISFORUM AI X1 Pro
Q8T1 シーケンシャルリード6,123.339MB/s4,799.262MB/s
Q8T1 シーケンシャルライト5,325.854MB/s3,913.381MB/s
Q1T1 シーケンシャルリード4,083.156MB/s2,970.659MB/s
Q1T1 シーケンシャルライト3,917.765MB/s3,828.604MB/s
4K Q32T1 ランダムリード442.580MB/s502.641MB/s
4K Q32T1 ランダムライト414.355MB/s444.181MB/s
4K Q1T1 ランダムリード53.758MB/s60.726MB/s
4K Q1T1 ランダムライト148.349MB/s162.000MB/s

 以上のように、Aiberzy「XG1-370」は、Ryzen AI 9 HX 370、32GBメモリ、1TB SSDを搭載したミニPCだ。パフォーマンスは文句なし、発熱やノイズも十分抑えられており、さすが!と言ったところだろう。

 空きのM.2スロットとOCuLinkが排他の点は残念であるが、Ryzen AI 9 HX 370を搭載するハイエンドミニPCを探しているユーザーに使って欲しい1台と言えよう。