西川和久の不定期コラム
NEC PC「LaVie Hybrid Frista」
~15.6型フルHDを搭載した折り畳み式液晶一体型の新フォームファクタPC
(2015/1/27 06:00)
NECパーソナルコンピュータ(NEC PC)は1月20日、2015 International CESで参考出展していた新フォームファクタPCを「LaVie Hybrid Frista」として発表。2月上旬から順次販売する。編集部から試作機が送られてきたので、試用レポートをお届けしたい。
短時間ながらバッテリ駆動可能な15.6型の折り畳み式液晶一体型PC
今回発表された「LaVie Hybrid Frista」は、15.6型でバッテリ駆動も可能な、ノートPCに近い液晶一体型デスクトップPCと言える新フォームファクタPCだ。
仕事柄いろいろな15.6型ノートPCを試してきたが、特に2スピンドルタイプは持ち歩き用としては重く、加えてフットプリントもそれなりにあり、実際机の上に置くとある程度のスペースが必要となる。これに対してLaVie Hybrid Fristaは、キーボードとマウスをBluetooth接続とし、本体からキーボードを分離。フットプリントを小さくしてコンパクトにまとまった印象を受ける。
ラインナップとしては、HDD容量やインターフェイスなどは共通で(ただし液晶パネルは最上位モデルのみ“15.6型スーパーシャインビューLED-EX2”、ほかは“15.6型スーパーシャインビューLED”とグレードが違うようだ)、Celeron 3205U(1.5GHz)/メモリ4GB/DVDスーパーマルチドライブの「HF150/AA*」、Core i3-5005U(2GHz)/メモリ4GB/BDXLドライブの「HF350/AA*」、そしてCore i7-5500U(2.4GHz)/メモリ8GB/BDXLドライブの「HF750/AAB」と、3モデルで構成されている。
今回届いたのは最上位の「HF750/AAB」だ。主な仕様は以下の通り。
NEC PC「LaVie Hybrid Frista」(HF750/AAB)の仕様 | |
---|---|
プロセッサ | Core i7-5500U(2コア/4スレッド、クロック 2.4GHz/3GHz、キャッシュ4MB、TDP 15W) |
メモリ | 8GB×1(DDR3L SDRAM/SO-DIMM)、2スロット/空1 |
ストレージ | 1TB |
光学ドライブ | BDXLドライブ |
OS | Windows 8.1 Update(64bit) |
ディスプレイ | 15.6型スーパーシャインビューLED-EX2 IPS液晶(光沢)、10点タッチ対応、1,920×1,080ドット |
グラフィックス | プロセッサ内蔵Intel HD Graphics 5500、HDMI出力×1 |
ネットワーク | Gigabit Ethernet、IEEE 802.11ac(867Mbps対応)/a/b/g/n、Bluetooth 4.0 |
その他 | USB 3.0×2、SDXCカードスロット、92万画素Webカメラ、1.5W+1.5Wスピーカー(ヤマハ AudioEngine搭載)、音声入出力 |
バッテリ駆動時間 | 最大1.5時間(JETIA測定法2.0) |
サイズ/重量 | 380×160~270×39.9~286mm(幅×奥行き×高さ)/約2.8kg(キーボード含む) |
本体色 | ピュアブラック |
その他 | Office Home & Business PremiumプラスOffice 365サービス |
店頭予想価格 | 204,800円前後(税別) |
プロセッサはBroadwell-UアーキテクチャのCore i7-5500U。2コア4スレッドでクロックは2.4GHzから最大3GHz。キャッシュは4MBでTDPは15Wタイプとなる。メモリはこの最上位モデルのみ8GBだ。2スロットあり8GB×1で1スロット空き。OSは64bit版のWindows 8.1 Update。ストレージは1TBのHDDと光学ドライブとしてBDXLドライブを搭載している。
グラフィックスはプロセッサ内蔵Intel HD Graphics 5500。外部出力用としてHDMIを装備している。ディスプレイはIPS式の15.6型スーパーシャインビューLED-EX2。解像度はフルHD/1,920×1,080ドットで、もちろんタッチ対応だ。冒頭にも書いたが、ほかの2モデルには“-EX2”が付かないパネルが使われている。
ネットワークは、Gigabit Ethernet、IEEE 802.11ac/a/b/g/n。11acは867Mbps対応だ。Bluetooth 4.0を搭載し、付属のキーボードとマウスでも使用している。一般的にこの手のPCに付属するデバイスは独自の無線(RF)式が多く、Bluetoothでの接続は珍しいかも知れない。
そのほかのインターフェイスは、USB 3.0×2(内1つは電源オフ時給電対応)、SDXCカードスロット、92万画素Webカメラ、音声入出力、そしてヤマハのAudioEngineを採用した1.5W+1.5Wスピーカーを内蔵している。USBポートが2つと少な目なのがやや気になる部分だ。
サイズは380×160~270×39.9~286mm(幅×奥行き×高さ)、重量約2.8kg(キーボード含む)。バッテリを搭載し、JETIA測定法2.0で最大1.5時間の駆動が可能とされている。一般的なノートPCと比較すればかなり短いものの、基本的に据え置き型なので、室内移動程度なら全く問題にならないレベルと思われる。
カラーバリエーションは、試用した最上位モデルはピュアブラックのみ。ほかの2モデルは加えてピュアホワイトとピュアブラックの2色が用意されている。
店頭予想価格は、Office Home & Business PremiumプラスOffice 365サービス込みで204,800円前後(税別)。15.6型2スピンドルノートPCの代わりとして使う据え置き型としては少し高めだが、高品位な液晶パネル、Bluetooth式のキーボードとマウス、ヤマハのAudioEngineを採用した1.5W+1.5Wスピーカー、Office搭載などプラスアルファの部分を考慮すると妥当な価格と思われる。
この新フォームファクタPCは、ノートPCでもなく、一般的な液晶一体型デスクトップPCでもなく、実に興味深い構造になっている。ベース部分は液晶パネルの約半分(より少し長い)でフットプリントは小さく、その中にキーボードを内蔵可能。パネルは水平位置から約90度まで傾き、好きな角度に固定可能だ。
収納時、マウスだけは本体外に置き場所を確保する必要があるものの、コンパクトにまとまり邪魔にならず、使用時もさほど奥行きを必要としない。さらに短いながらもバッテリ駆動可能なので、屋内程度なら自由に移動も可能だ。もちろんNECらしい品質の高さも感じられる。
前面は、液晶パネル中央上にWebカメラ、右側に各種ステータスLED。中央下にWindowsボタンとメッシュ部分にスピーカー。その下にヒンジとキーボード収納部がある。パネルのフチ右上側面に電源ボタンと音量±ボタン。
左側面にBDXLドライブ、右側面にUSB 3.0×2(手前が電源オフ時給電対応)、SDXCカードスロット、音声入出力。背面に、Gigabit Ethernet、HDMI出力、電源入力。中央近くのネジのあるパネルを外すとメモリスロットが2つ。逆側にロックポートとキーボード着脱レバー。メモリスロットは2つあり、8GB×1で1スロットが空きだ。下位2モデルは4GBだがメモリ増設は容易に行なえる。またキーボード着脱レバーがあり、通常はロックされているので、移動中にキーボードが出てくることもない。
ACアダプタは、105×43×28mm(同、突起物含まず)、重量238g。できれば内蔵タイプが良かったものの、邪魔になるサイズではなく許容範囲だろう。
15.6型の液晶ディスプレイは明るさ、コントラスト、発色、視野角など全てにおいて文句なし。かなり品質の高いパネルが使われているようだ。逆に今回試用していない“-EX2”表記のない下位モデルはどうなのかが気になるところだ。
付属のマウスとキーボードは珍しくどちらもBluetooth接続だ。キーボードのバッテリはコイン型リチウム電池。マウスは単3形×2本。歪な並びやたわみなどはないが、水平だと入力しにくいので、できれば軽く傾けるスタンドが欲しかった。
発熱、振動やノイズなどは試用した範囲では感じず良好だ。サウンドはヤマハのAudioEngineを搭載した1.5W+1.5Wスピーカーなので期待していたものの、パワー不足で、加えてエネルギーバランスがかなり高域寄りで、ハテナマークが付く状態だった。手元に届いたのが試作機だったためか、個体差の可能性もあるので、気になる人はぜひ店頭などで確認してほしい。
【お詫びと訂正】初出時、キーボードに充電式バッテリを内蔵している旨の記載がありましたが、正しくは電池を使用しています。お詫びして訂正いたします。
プロセッサの性能が高いだけにストレージはSSDが欲しい
OSは64bit版のWindows 8.1 Update。メモリ8GBと言うこともあり余裕で動作する。初期起動時のスタート画面は2画面。NECアプリ以降がプリインストールとなる。
メーカーによってはプリインストールアプリがそれなりに多くても、スタート画面には載せないパターンもあるが、同社はわりと多めだ。デスクトップは10個のショートカットが並び、テーマは壁紙も含め、白を基調にしたものになっている。またタスクバーは自動的に隠すに設定されていた(ただ届いた時、ショートカットの並びが変だったので工場出荷状態ではないのかも知れない)。
HDDは1TB/5,400rpm/8MBの「TOSHIBA MQ01ABD100」。C:ドライブとD:ドライブの2パーティションで、C:ドライブは約846GB割り当てられ空きは803GB。BDXLドライブは「HL-DT-ST BD-RE BU20N」が使われていた。Wi-Fi、Bluetooth、Gigabit EthernetEはRealtek製だ。キーボードとマウスはNEC製なのが分かる。
プリインストールソフトウェアは、Windowsストアアプリは、「LaVieアシスト」、「LaVieかんたん設定」、「LaVie動画なび」、「LaVieフォト」、「My Time Line」、「NAVITIME」、「PhotoDirector Mobile」、「SmartVision/PLAYER」、「コンテンツナビ」、「シュフーチラシアプリ for NEC」、「楽しもうフォトウィザード」、「マカフィーセントラル」、「楽天gateway」など、NECオリジナルのものが多めだ。
LaVieかんたん設定は、電源・省電力/YAMAHAサウンド/ボタンといった、通常はデスクトップアプリで行なうことを、ストアアプリでタッチ操作による設定が可能になっている(同じ機能を持つデスクトップアプリもある)。
SmartVision/PLAYERは、DLNA/DTCP-IPに対応したプレーヤーだ。nasneで試したところ、地デジ(ライブ/録画共)やコンテンツが再生できた。個人的にこの手のプレーヤーは、ストアアプリの方が扱いやすく、便利だと思う。
デスクトップアプリは、「Microsoft Office」、「AOSBOX Cool_n」、「Corel PaintShop Pro X6 for NEC」、「CyberLink MediaShow BD」、「CyberLink PowerDVD BD」、「ebi.BookReader4」、「LaVieアップデート」、「LaVieアプリナビ」、「LaVieボイス」、「Play.net」、「Roxio Creator U」、「おすすめ設定」、「おてがるバックアップ」、「キーボード・マウス接続設定」など。
定番のアプリに加え、同社のツール系といった構成だ。“LaVie~”で始まるオリジナルアプリが多過ぎず少な過ぎずバランス良く入っているのは好感が持てる。
ベンチマークテストは「winsat formal」コマンドと、PCMark 8 バージョン2の結果を見たい。バッテリ駆動時間テストはBBench。またCrystalMarkの結果も掲載した(今回は2コア4スレッドと条件的には問題ない)。なお、試作機によるテストのため、販売されるモデルとはスコア差が発生する可能性がある。ご了承いただきたい。
winsat formalの結果は、総合 5.1。プロセッサ 7.4、メモリ 7.4、グラフィックス 5.1、ゲーム用グラフィックス 5.5、プライマリハードディスク 5.9。PCMark 8 バージョン2は2307。CrystalMarkは、ALU 47852、FPU 43499、MEM 31295、HDD 10856、GDI 16036、D2D n/a、OGL 10325。
Core i7ということもあり、総じて高スコアだ。ただストレージがHDDなのでバランスが悪く、実際操作しても今1つ切れが足りない。SSDか、せめてハイブリッドHDDが欲しかったところか。
BBenchは、LaVie電源プラン、バックライト最小、キーストローク出力/オン、Web巡回/オン、Wi-Fi/オン、Bluetooth/オンでの結果だ。バッテリの残5%で7,839秒/2.2時間。仕様上の最大は1.5時間なので若干長く動作した。用途を考えれば十分だろう。
以上のようにNEC PC「LaVie Hybrid Frista」(HF750/AAB)」は、Core i7-5500UとIPS式15.6型フルHD液晶を搭載した折り畳み式の液晶一体型PCだ。キーボードとマウスが分離しているため、同スペックのノートPCよりフットプリントは小さく、据え置き型としてはコンパクトにまとまって扱いやすい。
また短時間だがバッテリ駆動可能なのは、室内での移動を考えるとうれしいポイントと言えよう。構成によって144,800円前後から204,800円前後と幅があり、用途や予算に応じて選べるのも魅力的だ。
(個体差もしくは試作機だからかも知れないが)スピーカーのクオリティが気になるものの、それ以外は欠点らしい欠点もなく、据え置き型としてノートPCではイメージが合わないユーザーにお勧め。筆者もわりと気に入った1台だ。