西川和久の不定期コラム
ソニー「VAIO Tap 21」
~テーブルトップへ変形可能でバッテリ駆動に対応した液晶一体型PC
(2013/10/18 06:00)
ソニーは10月8日、2013年秋冬モデルを一斉に発表した。3つのモードに変形する「VAIO Fit 13A/14A/15A」、本体とキーボードが分離している「VAIO Tap 11」など、新シリーズも登場。今回はその中から21.5型でテーブルトップとしても使える「VAIO Tap 21」が10月19日の発売日に先がけ、編集部から送られて来たので、試用レポートをお届けしたい。
液晶一体型PCの進化形
VAIO Tapシリーズとしては、11.6型の液晶パネルを搭載したVAIO Tap 11と、21.5型の液晶パネルを搭載したVAIO Tap 21の2モデルがある。どちらも本体はバッテリ駆動でき、無線式のキーボードを使って本体と分離しているなどコンセプトは同じだ。
ただサイズが大きく違うだけに、前者はモバイル系のタブレットプラスアルファ、後者は室内で液晶一体型PCとして使え、机に対して水平まで倒せるのでテーブルトップにもなると、用途は異なる。なおこれまで室内向けの液晶一体型としては「VAIO L」シリーズがあったが、このTap 21へ一本化し、生産を終了する。
VAIO Tap 21は、店頭モデルは上位(Core i7-4500U/8GB/1TBハイブリッドHDD/外付けBDXLドライブ/20万円前後)、中位(Core i5-4200U/4GB/1TBハイブリッドHDD)、下位(Core i3-4005U/4GB/1TB HDD)と3種類、そしてCTOにも対応など、さまざまな構成がある。今回届いたのは店頭モデルの「SVT21219DJB」。上位モデルだが試作機と言うこともあり外付けBDXLは付属していなかった。主な仕様は以下の通り。
ソニー「VAIO Tap 21」(SVT21219DJB)の仕様 | |
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プロセッサ | Core i7-4500U(2コア/4スレッド、1.8GHz/Turbo Boost:3.0GHz、キャッシュ4MB、TDP 15W) |
メモリ | 8GB(DDR3L) |
ストレージ | ハイブリッドHDD 1TB(NAND 8GB) |
OS | Windows 8(64bit) |
ディスプレイ | 21.5型IPS液晶ディスプレイ(光沢)、1,920×1,080ドット(フルHD)、静電式タッチパネル、HDMI出力 |
グラフィックス | プロセッサ内蔵Intel HD Graphics 4400 |
ネットワーク | Gigabit Ethernet、IEEE 802.11a/b/g/n、Bluetooth 4.0+HS |
その他 | USB 3.0×2、92万画素Webカメラ、SDカード/メモリースティックスロット、NFC、音声入出力 |
サイズ/重量 | 約523.7×174.2×310.5mm(幅×奥行き×高さ、起こした状態)/約3.9kg |
バッテリ駆動時間 | 最大約4時間 |
その他 | Microsoft Office Home and Business 2013インストール |
店頭予想価格 | 20万円前後 |
プロセッサは、Core i7-4500U。2コア4スレッドでクロックは1.8GHz。Turbo Boost時に3.0GHzまで上昇する。キャッシュは4MBでTDPは15W。チップセットはプロセッサと同じパッケージに収められ、デバイスマネージャを見たところIntelのHM8系だ。前モデルのVAIO Tap 20がIvy Bridgeだったので、Haswellへ移行した形となる。メモリは8GB、ストレージはNAND 8GBのハイブリッド1TB HDDを搭載している。また筐体に光学ドライブは内蔵していないものの、外部ドライブとしてBDXLが付属する。
OSは、64bit版Windows 8。発売日がWindows 8.1出荷以降にも関わらず、8を搭載しているのは不思議だが、同社としては、8.1は8のアップデートとしての扱いらしく、そのまま使うか、8.1へアップデートするかはユーザーに任せるとのこと。もちろん8.1の作動は確認している。個人的な意見だが、8.1はデスクトップアプリを使うにしてもWindowsストアアプリを使うにしても、8よりずいぶん使いやすくなっている。ビギナーが8.1へアップデートするのはハードルが高いため、8.1を標準搭載して欲しいところだ。
グラフィックスはプロセッサ内蔵Intel HD Graphics 4400。ディスプレイは10点タッチ対応のIPS式21.5型液晶パネル(光沢)を採用している。解像度は1,920×1,080ドット(フルHD)。また前モデルに相当するTap 20には無かったHDMI出力にも対応した。
ネットワークは、Gigabit Ethernet、IEEE 802.11a/b/g/n、Bluetooth 4.0+HS。その他のインターフェイスは、USB 3.0×2、92万画素Webカメラ、SDカード/メモリースティックスロット、NFC、音声入出力。片方のUSBポートは電源オフ充電対応だ。
サイズは起こした状態で、約523.7×174.2×310.5mm(幅×奥行き×高さ)、重量約3.9kg。倒した状態で約523.7×321×35.5mm(同)となる。
無線式のキーボードとマウスも付属し、バッテリ駆動時間は最大4時間。店頭予想価格は20万円前後。なお先に書いた中位モデルは18万円前後、下位モデルは16万円前後。CTOモデルは最小構成で104,800円だ。
21.5型のAll-in-Oneと聞いていたので、それなりのサイズの梱包かと思ったが、編集部から実機が届いて意外とコンパクトなので驚いた。それもそのはずで、液晶パネルのフチは最小限(約25mm)、スタンドをたたみテーブルトップの状態だと厚み35.5mmと嵩張らない。重量は約3.9kgとそれなりだが、これなら室内での移動は楽々できる。
21.5型の液晶ディスプレイは輝度・コントラスト・発色全て良好だ。IPS式なので視野角も広い。さすがにソニー独自の「トリルミナスディスプレイ for mobile」、「X-Reality for mobile」対応と、気合が入っているだけのことはある。
10点タッチは、1人ではなかなか全部使い切れないが、テーブルトップにして複数で操作する時に有効だろう。
フロントは、中央上に92万画素Webカメラ、中央下にWindowsボタン、右側面上にHDDや電源のステータスLED。リアにはスリット部分にステレオスピーカー、上部に電源スイッチ、音量±、アシストボタン。アシストボタンを押すとVAIO Careが起動する。
左側面は、SDカード/メモリースティックスロット、HDMI出力、USB 3.0×2、音声入出力、Gigabit Ethernet、電源入力。USB 3.0の下側が電源オフ充電対応となる。右側面には何も無い。
ACアダプタは、サイズが約105×45×24mm、重量222gとコンパクト。この手の液晶一体型PCは、巨大なACアダプタになっているケースもあり、このノートPC並みのサイズは邪魔にならない。
無線式のキーボードとマウスは、それぞれ単3乾電池1本で作動。キーピッチは実測で約19mm。質感も良く、キータッチもしっかりしている。
パネルの角度を維持するスタンドは、机に水平になるまで任意の位置に固定できる。しかもスタンドには触れず、本体側を倒したり起こしたりするだけで追尾し、非常に扱いやすい構造だ。
興味深いのは、スピーカーがリア側にあるので、壁や机などで音を反射させ、フロントへ回すことになるが、角度センサーを搭載し、スタンドの角度が違っても一定の音場が維持できる仕掛けが入っていることだ。ClearAudio+にも対応し、パワーや音質も十分で同社の拘りが伺える。
振動やノイズ、発熱も試用した範囲では特に気にならず、全体的に非常によくまとまっている上に、液晶一体型の割にはコンパクト。バッテリ駆動も可能でテーブルトップにも変形するなど液晶一体型PCの進化系とも言えるPCに仕上がっている。
マルチメディア中心でVAIOならではの豊富なアプリケーション
OSは先に書いたように64bit版Windows 8。8.1へはユーザーの判断でアップデートすることになる。メモリは8GB、Core i7のパワーに加え、NAND 8GBをキャッシュ用に搭載した1TBハイブリッドHDDの効果もあり、思っていた以上に快適に操作できる。
フルHDの解像度と言うこともあり、初期起動時のホーム画面は1面、アプリ画面もほぼ1面(画面キャプチャでは“筆ぐるめ20”のみ2画面目で掲載していない)に収まっている。デスクトップは、同社お馴染みの壁紙に変更、左側にショートカットが8つほど並び、タスクバーにもいくつかピン止めしているアプリがあるものの、シンプルにまとめられている。
ストレージはC:ドライブのみの1パーティション。約897GBが割り当てられ、空きは854GB。Gigabit Ethernet、Wi-Fi、Bluetoothモジュールは全てIntel製が使われていた。なお、試作機のため、画面構成やプリインストールアプリケーションが出荷版とは異なる可能性があることを予めご了承いただきたい。
プリインストールソフトウェアは、Windowsストアアプリは、「Fingertapps Organizer」、「mora~"WALKMAN"公式ミュージックストア~」、「Socialife」、「VAIO Care」、「VAIO Message Center」、「VAIO Movie Creator」、「VAIO Tabletop」、「Yahoo!オークション」、「アルバム by Sony」、「シュフーチラシアプリ」「、セキュリティ脅威マップ」、「ミュージック by Sony」、「楽天gateway」。
同社の実用的なアプリも目立つ。ただし、「ムービー by Sony」的なものは、Windowsストアアプリとしては無く、デスクトップアプリの「VAIOホームネットワークビデオプレーヤー」(DLNAクライアントでDTCP-IPにも対応)になっている。
デスクトップアプリは、「Adobe Photoshop Elements 11」、「Microsoft Office Home and Business 2013」、「Music Unlimited」、「VAIO Care(Desktop)」、「VAIO Update」、「VAIOお引越サポート」、「VAIOジェスチャーコントロール」、「VAIOデータリストアツール」、「VAIOの製品登録」、「VAIOの設定」、「VAIOホームネットワークビデオプレーヤー」、「VAIOマニュアル」、「楽しもうフォトウィザード」、「Family Paint」、「ATOK 2013」、「CyberLink Power2Go 8」、「CyberLink PowerDVD 10」、「Norton Online Backup」、「PlayMemories Home」、「ACID Music Studio 9.0」、「DVD Architect Studio 5.0」、「Movie Studio Platinum 12.0」、「Sound Forge Audio Stuido」、「ウィルスバスタークラウド」、「筆ぐるめ20」。
「Family Paint」は2人(親子)で同時に使えるペイント系。また「VAIO Care」はデスクトップアプリ版も用意されている。同社のツール系とマルチメディア系が多い構成だ。ただ「VAIOの製品登録」、「PlayMemories Home」など、Windowsストアアプリ化して欲しいものもまだ何点か含まれ、改善の余地はありそうだ。
ベンチマークテストはWindows エクスペリエンス インデックス、PCMark 7とBBenchの結果を見たい。CrystalMarkの結果も掲載した(2コア4スレッドで条件的には問題ない)。
Windows エクスペリエンス インデックスは、総合 5.0。プロセッサ 7.1、メモリ 7.3、グラフィックス 5.0、ゲーム用グラフィックス 6.5、プライマリハードディスク 5.9。PCMark 7は3826 PCMarks。CrystalMarkは、ALU 43605、FPU 42033、MEM 31781、HDD 21657、GDI 14625、D2D 5550、OGL 10727。
おおむねスペック通りのスコアでCore i7-4500Uと内蔵Intel HD Graphics 4400の性能がそのまま出ている。ハイブリッドHDDに関しては、Windows エクスペリエンス インデックスでは5.9と普通のHDDと同じだが、CrystalMarkでは2万を越えているので、NAND 8GBの効果と見ていいだろう。家庭用、仕事用どちらでも十分以上の性能と言える。
BBenchは省電力モード、バックライト最小、キーストローク出力/オン、Web巡回/オン、WiFi/オン、Bluetooth/オンでの結果だ。バッテリの残5%で14,829秒/4.1時間。仕様通りの結果となった。これだけのサイズの液晶パネルを搭載しながら4時間駆動できるのはHaswellならではだ。
以上のようにソニー「VAIO Tap 21」は、21.5型のIPS式フルHD液晶パネルを搭載したバッテリ駆動も可能なテーブルトップPCだ。性能はもちろん、ディスプレイもサウンドもハイクオリティ。机に対して水平までスタンドを倒すことができるので、複数人で楽しむこともできる。
普通のPCとして個人で使うのもよし、リビングなどに設置して、みんなで使うのもよし、これまでとはちょっと違った用途にも活用できる1台と言えよう。