西川和久の不定期コラム

Core iシリーズ搭載ネットノート!
東芝「dynabook MX」



 6月14日に東芝の夏モデルが一斉に発表された。その中からデザインを一新し、Intelの超低電圧版CPUを搭載、11.6型の液晶パネルを採用したオーソドックスなノートPC、daynabook MXの量産試作機が届いたので、レポートをお届けする。

●Core iシリーズ搭載ネットノート

 dynabook MXの量販店モデルは、CPUにIntel Core i3-330UM(2コア、4スレッド/1.2GHz/キャッシュ3MB)もしくはCeleron U3400(2コア、2スレッド/1.06GHz/キャッシュ2MB)、チップセットにIntel HM55 Express、HDD 320GB、そしてメモリを2GB搭載したMX/36M、MX/33Mがある。

 今回届いたのは、CPUにIntel Core i5-520UM(2コア、4スレッド/1.066GHz,TB1.86GHz/キャッシュ3MB)が搭載され、メモリ2GB×2の計4GBになっている試作機。先にあげたモデルも含め全て超低電圧版CPUでロングバッテリライフが期待できる。基本的にCPUとメモリ容量以外は同じ仕様なので、参考になるだろう。

dynabook MX仕様(試作機)
CPUIntel Core i5-520UM(2Core、1.066GHz、TB1.86GHz、キャッシュ3MB、超低電圧版)
チップセットIntel HM55 Express
メモリ4GB/DDR3-SDRAM/2スロット空き0、最大8GB
HDD320GB(5,400rpm)
OSWindows 7 Home Premium(32bit)
ディスプレイ11.6型 HD Clear Super View 省電力LED液晶、1,366×768ドット
GPUIntel HD Graphics、アナログRGB出力、HDMI
ネットワークEthernet(10BASE-T/100BASE-TX)、IEEE 802.11a/b/g/n、WiMAX
その他USB 2.0×3(内1つはeSATAと共用)、4in1メモリカードスロット、Webカメラ、音声入出力、全モデルにMicrosoft Office Personal 2010を搭載
サイズ/重量284×202.8×17.6~26.2mm(幅×奥行き×高さ)/約1.48kg
バッテリ駆動時間約6.4時間

 Core i5-520UMは、2コア4スレッド、そしてTurboBoost(TB)に対応。クロックは1.06GHz、TB時には1.86GHzまで上昇する。Core i3-330UMは2コア4スレッドなどは同じであるがTBには対応していない。Celeron U3400は2コア2スレッドだ。

 チップセットは全て同じでIntel HM55 Express。GPUはCPU内蔵のIntel HD Graphicsだ。メモリは2スロットあり最大8GB。HDDは5,400rpmの320GBを搭載している。OSは32bit版のWindows 7 Home Premium。32bit版の場合、4GB搭載時に1GBが無駄になってしまう上に、GPUがメインメモリ共有型なので、実際使えるフリーエリアがかなり減ってしまう。筆者的には64bitも選べる「セレクタブル」にして欲しいところ。

 液晶パネルは、省電力LEDを使った11.6型HD Clear Super View。解像度は1,366×768ドットとなる。出力として、アナログRGBとHDMIを備えているので、さまざまなシーンに対応可能だ。

 ネットワークは、有線LANは10BASE-T/100BASE-TX、無線LANはIEEE 802.11a/b/g/n、そしてWiMAXを内蔵している。WiMAXが標準なのは嬉しいものの、NASなどのアクセスに効果がある、Gigabit Ethernetに対応していないのが残念だ。

 その他のインターフェースとしてUSB 2.0と共用のeSATAが1つあるのが特徴的。外部に大容量HDDを必要とした場合に、USB 2.0と比較して転送速度も速く役に立つ。

 カラーバリエーションは、ホワイト、ブラック、レッドの3種類が用意されている。

一見無地のブラックに見えるが、細かい模様が描かれている右側にHDDアクセスLEDなどが並ぶ裏面。ネジ1本でHDDとメモリにアクセスできる。スピーカーは下向きに付いている
左側面。電源入力、HDMI出力、USB 2.0(eSATA共用)、4in1メモリカードスロットキーボード。[FN]キーが右側にあったり、[半/全]キーが[ESC]キーの横にあるなど、若干異なるレイアウトになっている右側面。ロックポート、Ethernet、アナログRGB出力、USB 2.0×2、音声入出力
アイソレーションタイプでキーピッチは実測19mmバッテリは18v/5,300mAh。ACアダプタのプラグはストレート重量は実測で1,505g

 ボディは新しいデザインが採用され、天板はアーガイルチェックのメタリック。液晶パネルの周囲は光沢ありのブラック、そしてキーボード周辺は斬新なテクスチャーが映えるシルバー、そしてパームレストは天板と合わせてアーガイルチェックとなっている。その他の部分はマッドブラックだ。キーボードもシルバーなので、液晶パネルを開いた時の雰囲気はかなりメタリック感がある。これまで同社には無かったデザインだが、ここままでピカピカだと好みは別れるのではないだろうか。

 裏はネジ1本外せば、HDDそしてメモリスロットにアクセスできる。SSD化するにしても、メモリを増設するにしてもメンテナンスは容易だ。

 サイズ284×202.8×17.6~26.2mm(幅×奥行き×高さ)、重量は実測で約1.5kgなので、カバンに入れて十分持ち運べる。またパネルサイズが11.6型で解像度が1,366×768ドットと言うこともあり、文字サイズも調度良い。

 光沢タイプの11.6型 HD Clear Super View 省電力LED液晶は、コントラストも高く原色が綺麗だ。視野角は上下左右とも同じ雰囲気で広い方では無いが、実用上は差し支えない。また明るさは最大で凄く明るいほどでは無いものの、バックライトOFFでもそれなりに画面が見えるので室内ならOFFでも作業できそうだ。

 キーボードはアイソレーションタイプ(同社では「タイルキーボード」と呼んでいる)。ただキーピッチ19mmを確保するため、[FN]キーが右側にあったり、[半/全]キーが[ESC]キーの右横にあるなど、一部のキーレイアウトが一般的ではない。またファンクションキーはかなり小さい。とは言え、どこを強く押してもたわむことも無く、キータッチのフィーリングはなかなか良い。

 タッチパッドは、天板と同じアーガイルチェックが施され、他の部分に馴染ませている。ただパームレスト部分も含めボディが比較的小さいだけに面積は広くない。ツルツル滑るタイプではないが、操作性はスムーズだ。ボタンは2ボタン。気持ち重めになっている。タッチパッドもパームレストも物理的にザラザラしているので指紋跡が目立たない。

 振動は特に無いものの、左サイドのスリットに耳を近づけるとかすかに冷却ファンの音、そしてキーボード左側がほんのり熱を持つ。

 底に付いているスピーカーは、意外と中・高域は抜けが良くクリアな音質だ。ただその分、低域に迫力が無いのは仕方ないところか。最大音量はボディサイズを考えると大きい方だろう。

●Office Personal 2010をプリインストール

 起動時のデスクトップは、左側にアイコン、右側にウィジェット、鮮やかな壁紙と、かなり華やかだ。同社オリジナルのアプリケーションも結構多い。タスクバーには後述する「dynabook Board」と「TOSHIBA ReelTime」がセットされている。

 HDDはMK3265GSX(320GB、5,400rpm、キャッシュ8MB)を搭載。実質使えるパーティションは、C:ドライブが約238GB、D:ドライブが50GB割当てられている。無線LANはIntel Centrino Advanced-N 6250AGN。そしてWiMAXはIntel Centrino WiMAX 6250だ。

起動時のデスクトップ。壁紙、プリインストールのアイコンやウィジェットで華やかだデバイスドライバ/主要なデバイス。HDDはMK3265GSX(320GB、5,400rpm、キャッシュ8MB)、WiMAXはIntel Centrino WiMAX 6250HDDのパーテーションは全部で4パーテーション。実際使えるのはC:ドライブ約238GB、D:ドライブが50GB

 プリインストールのアプリケーションは、「Microsoft Office Personal 2010」、「ウイルスバスター2010(使用期間限定版)」、「i-フィルター5.0」、「ATOK無償試用版」などの他社製と、「パソコンで見るマニュアル」、「PC引越しナビ」、「TOSHIBA ReelTime」、「テレビNaviガジェット」、「東芝スリープユーティリティ」、「東芝PC診断ツール」など同社製がところ狭しと入っている。

 中でも注目なのは「Microsoft Office Personal 2010」が全モデル標準搭載と言うことだろう。PersonalエディションはPowerPointが含まれないものの、Word、Excel、Outlookが入っている。その分本体価格は上がってしまうが、特にWordとExcelは学生も含め幅広い層に使われているので、初めから入っている方が便利かも知れない。

 加えて同社オリジナルのツールとして、編集したドキュメントを時系列で表示する「TOSHIBA ReelTime」、各種ツールやメッセージセンターが一体化した「dynabook Board」、テレビの視聴(チューナ搭載モデル)、テレビ関連サイト(テレビドガッチ)へのアクセスができる「テレビNaviガジェット」などが、なかなか面白い。

Microsoft Office 2010 Personal標準装備パソコンで見るマニュアルPC引越しナビ
TOSHIBA ReelTimedynabook BoardテレビNaviガジェット

 ベンチマークテストは、Windows エクスペリエンス インデックス、CrystalMark、そしてBBenchの結果を見たい。ただし、今回試用したマシンはラインナップに無いCore i5-520UMを搭載しているので、数値は参考程度にみてもらいたい。

 まずWindows エクスペリエンス インデックスの総合は3.4。内訳は、プロセッサ4.9、メモリ5.3、グラフィックス3.4、ゲーム用グラフィックス3.5、プライマリハードディスク5.9。TurboBoost時でもCPUクロックが1.86GHzなのでCore i5とは言え意外とスコアは伸びない。また今回2GB×2のデュアルメモリアクセスになっているわりに、グラフィックス系が4未満だ。

 CrystalMarkは、ALU 18,189(26,313)、FPU 17,215(26,216)、MEM 13,076(21,792)、HDD 9,555(7,857)、GDI 5,463(9,353)、D2D 1,118(1,288)、OGL 1,309(1,788)。カッコ内は筆者が所有するThinkPad X201i(Core i3-M330/2GB)の値(ただし64bit版)。やはりクロック数が直接影響している項目が多い。また、HDDの項目が9,555はこのクラスとしては少し速い。

 BBenchは、ECOモード、バックライト/OFF、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、Wi-Fi/ONでの結果だ。バッテリの残5%で10,750秒(2.98時間)だった。スペック上は約6.4時間なのでほぼ半分。もう少し動いて欲しいところであるが、このテストとしては標準的な結果だ。バッテリ駆動が多いケースでは、予備バッテリが1本欲しいところだ。

Windows エクスペリエンス インデックス。総合3.4。プロセッサ4.9、メモリ5.3、グラフィックス3.4、ゲーム用グラフィックス3.5、プライマリハードディスク5.9CrystalMark。ALU 18,189、FPU 17,215、MEM 13,076、HDD 9,555、GDI 5,463、D2D 1,183、OGL 1,309。HDDの項目がこのクラスとしては速いBBench。ECOモード、バックライト/OFF、キーストローク出力/ON、Web巡回/ON、WiFi/ONでのBBenchの結果だ。バッテリの残5%で10,750秒(2.98時間)

 以上のようにdynabook MXは、超低電圧版CPUを搭載し、パワーを維持しつつ、バッテリ駆動時間をキープ。そしてWiMAXによるモバイル対応と、出先で使うノートPCとして、サイズ・重量なども含め、非常にバランスが取れた構成となっている。個人的にはOSが32bit、有線LANがGbEに非対応なのが気になるものの、同社の手厚いサポートも期待でき、初心者も含め安心してお勧めできる1台だ。