■西川和久の不定期コラム■
オンキヨー「E713A9」 |
オンキヨーと言えば、筆者はオーディオ機器のイメージがあるが、今回23型ワイド光沢液晶を搭載したオールインワンPCが発表された。同社らしく、音関係にはいろいろこだわった他社には無い特徴を持つ。店頭モデルが届いたので早速使用レポートをお届けしたい。
●正にプレミアム仕様
この「E713」最大の特徴は、マルチチャンネルのロスレスオーディオ「DTS-HD Master Audio」、バーチャルサラウンド機能「DTS Surround Sensation UltraPC」、ホームシアターシステムと連携できる「DTS Connect」などに対応した「DTS Premium Suiteを“世界初”で搭載」していること。そして新開発のステレオスピーカーを内蔵していることだ。つまり、音に関してかなりこだわっているパソコンと言えよう。同社らしいアプローチだ。DTS Premium Suiteに関してはデモプログラムが入っていたので、後半でご紹介したい。店頭モデル「E713A9」の仕様は以下の通り。
□店頭モデル「E713A9」の仕様
- OS:Windows 7 Home Premium(32bitまたは64bitのセレクタブル)
- CPU:Intel Core i5-650(3.20GHz/TB時最大 3.46GHz、4MB L3 キャッシュ)
- チップセット:Intel H55 Express
- メモリ:4GB(2GB×2使用/2スロット、空き0)
- HDD:1TB(5,400rpm)
- 液晶パネル:23型 ワイドTFTカラー液晶、1,920×1,080ドット、HDMI入力
- グラフィックス:Intel HD Graphics
- 光学ドライブ:Blu-ray Discドライブ
- ネットワーク:Gigabit Ethernet、IEEE 802.11b/g/n
- インターフェイス:USB 2.0×6(左側×3、リア×3)、eSATA×1、IEEE 1394×1、Webカメラ、地上デジタル・BSデジタル・110度CSデジタルTVチューナ(2番組同時録画/ダビング10対応)、地上デジタルアンテナ端子(F型)×1、BS・110度CSデジタルアンテナ端子(F型)、ライン入力/リアスピーカ出力兼用端子、ライン出力端子、センタースピーカ/サブウーファー出力端子、光デジタル(S/PDIF)出力端子、B-CASカードスロット、マルチカードリーダ
- その他:ワイヤレス日本語キーボード、マウス、リモコン、iPodドック、モノラルマイク、ステレオスピーカー(5W+5W出力)
- サイズ/重量:587×480×183~345mm(幅×高さ×奥行き)/重量10.1kg
- 価格:オープンプライス(169,800円前後の見込み)
CPUはIntel Core i5-650。2コア/4スレッド、クロックは3.20GHzでTurboBoost時3.46GHz、4MBのL3キャッシュを搭載する。チップセットはIntel H55 Express。そしてGPUはIntel HD Graphicsと、今年の代表的な組合せ。HDDは1TBと大容量。動画データなどをかなりの量を保存しても楽々管理できる。そしてオプティカルドライブはBlu-ray Discドライブだ。
メモリは2スロットで2GB×2の計4GBを搭載済み。最大8GBであるが、このマシンの用途を考えると4GBあれば十分だろう。OSは32bitか64bitかを選択できる「セレクタブル」となっている。アプリケーションや周辺機の互換性などで問題が無い限り、フルに4GB使える64bit版をインストールしたい。
液晶パネルは、フルHDの1,920×1,080ドットの23型ワイドだ。特筆すべきは、HDMI入力があり、他のAV機器からこのディスプレイに映像を表示することもできる。PS3を接続したり、いろいろな用途が考えられる。
ネットワークは、有線LANはGigabit Ethernet、無線LANはIEEE 802.11b/g/nとなっている。Bluetoothを搭載していないが、もし必要な時は、最近小型のUSBタイプがあるので、それを接続すればいい。
インターフェイスは、USB 2.0×6、eSATA×1、IEEE 1394×1、マルチカードリーダ、Webカメラに加え、ライン入力/リアスピーカー出力兼用端子、ライン出力端子、センタースピーカー/サブウーファー出力端子、光デジタル(S/PDIF)出力端子と言ったAV機器固有の出力も揃っているのが特徴的だ。
量販店モデルでは、2番組同時録画/ダビング10対応の「地上デジタル・BSデジタル・110度CSデジタルTVチューナ」も搭載。Windows Media Centerに対応するリモコンも付属する。
ステレオスピーカーは5W×5W出力。旧モデルに相当する「E705」に搭載していたユニットから大幅な変更となった。同社によると「横に広い形状にして口径10cm相当のウーファー振動板面積を確保、厚みのあるサウンド再生を実現。エッジには Vラインエッジを採用。振動板の前後運動をダンピングすることなく不要な放射音を低減し、背圧の影響を受けず低音や大音量の再生に高い能力を発揮する」と説明されている。
そして右サイドには、スライド式で収納できる「iPodドック」もある。PCの電源がOFFでも充電、そして内蔵ステレオスピーカーで再生可能だ。
このように「E713A9」は、Bluetooth以外はまさにもう何も必要無いほどの全部入り。フルHDの液晶パネルとDTS Premium Suiteで、さまざまなコンテンツを大迫力で楽しめるスペックに仕上がっている。
また、Office Personal 2010を搭載モデル(E713A9B)や、ダイレクトショップではBTOにも対応し、最小構成(Intel Core i3-530/メモリ2GB、HDD 320GB/DVDスーパーマルチドライブなど)では99,800円となっている。もちろんこの構成でも23型ワイド液晶やiPodドックは標準装備だ。
iPodドック。PCの電源がOFFの時でも、充電、内蔵スピーカーで再生できる | 約200×100×40mm(幅×奥行き×高さ)の巨大なACアダプタ |
箱から取り出した第一印象は「23型の割には大きく、PCと言うより、液晶TVの雰囲気」だった。これまでオールインワンPCを何台かレビューしてきたが、この「E713」は全くパソコンっぽくなく、良い意味で家電そのもの。何も説明しなければ液晶TVにしか見えないだろう。シンプルで飽きの来ないデザイン。安っぽさも無い。
電源ONにしWindowsが起動した後、自動的にDTS Premium Suiteのデモプログラムが表示され、まず驚いたのが画質の良さだ。光沢ありなので、周囲は映り込むものの、それが些細なことに思えてしまうほど。原色系にパンチのあるのはもちろん、黒が綺麗なのだ。黒が締まると映像の見栄えは抜群に良くなる。少なくとも筆者がこれまでPC用として見てきた液晶パネルのどれと比較してもその差は明らか。いろいろな1080pのコンテンツを再生してみたが、吸い込まれるように内容に没頭できる。また視野角も結構広い。
そして音もPCレベルでは無い。完全にAV機器領域の音質だ。画質にしても音質にしても文字ではその凄さが分かり辛いと思うので、是非店頭でご覧頂きたい。
反面、ワイヤレスのキーボードとマウス、そしてiPodドックは、プラスチッキーだ。本体の質感が良いだけに、もう少し高級感が欲しいところ。加えて弁当箱のような230WのACアダプタはもう少し何とかならないものかと思ってしまった。
振動やノイズ、熱に関しては、外部にACアダプタ、そしてサイズ587×480×183~345mm(幅×高さ×奥行き)の大きさもあり、うまく処理しているようで、全く気にならないレベルになっている。
●大迫力の映像と音画面解像度がフルHDなので、デスクトップは広く、23型ワイドだと文字サイズや全体のバランスも調度良い。先にあげた綺麗な画面と新開発のスピーカーで、写真を見るにして、動画を観るにしても大迫力。満足感はかなり高い。ただこのマシンでは、Officeなど文字中心の業務用アプリケーションを使いたくない感じだ。それほどエンターテインメント性が高いと言える。
iPodドックは、PCをOFFにしても充電と内蔵スピーカーで再生できる。PC同様、迫力のある音で再生されるが、アナログ接続なのでPCほどクオリティは上がらない。できればデジタル接続、DAC内蔵で更に高音質を狙って欲しかった。また付属のリモコンで音量調整が出来ないため、左サイド上にあるボリュームボタンで音量を調整しなければならないのがちょっと面倒だ。
HDDは1TBの「WD10EARS-00Y5B1」が使われ、C:ドライブとD:ドライブが半分づつ割当てられている。個人的にはC:ドライブの容量はもっと減らし、データを保存するであろうD:ドライブは容量をアップして欲しかった。Blu-rayドライブは「UJ240AS」を搭載している。
プリインストールされたアプリケーションのアイコンがいろいろ並ぶ。1,920×1,080ドットなのでデスクトップも広い | デバイスマネージャ/主要デバイス。HDDはWD10EARS-00Y5B1。オプティカルドライブはUJ240ASが使われている | ドライブ構成。C:ドライブとD:ドライブで455.84GBずつ割当てられている |
プリインストールされるアプリケーションは、「WinDVD BD for オンキヨー」、「DVD MovieWriter 7」、「StationTV」、「iTunes 9」、「Roxio Creator LJB」、「YouCam 3」、「筆まめVer.20 ベーシック」、「乗換案内 VER.5」、「ATOK 2010 for Windows (60日無償試用版)」、「i-フィルター 5.0 (90日間お試し版)」、「マカフィー・PCセキュリティセンター 90日期間限定版」など豊富だ。後半、本機の趣旨とちょっと異なるジャンルのものが入っているが筆者的には気になるところ。Station TVとWinDVDは、Windows Media Centerからも操作できる。
2番組同時録画/ダビング10に対応したStation TVは、起動に少し時間がかかる。予約録画するには常駐する必要があるので、常にロードしているのが無難だ。メモリを4GB搭載しているので他のアプリケーションにも影響は少ない。
Windows Media Center/Station TV | Windows Media Center/Corel WinDVD | 筆まめVer.20 ベーシック |
冒頭で書いた「世界初のDTS Premium Suite」搭載機。スイートの内容は、マルチチャンネルのロスレス・オーディオをスタジオマスターと全く同じクオリティの音質で再現する「DTS-HD Master Audio」、ホームシアターに光ケーブルで接続可能にするオーディオデコーダ「DTS Connect」、2つのスピーカーでマルチチャンネルサラウンド再生感が得られる「DTS Surround Sensation UltraPC」、異なった音量レベルの各種ソースのバランスを自動的にとる「DTS Symmetry」、ダイナミックレンジを調整し全体的な音量や迫力をアップする「DTS Boost」で構成されている。
実際、デモの映像などで効果を確認すると驚くほど変わる。特に「DTS Surround Sensation UltraPC」の効果は絶大だ。ONだと左右のスピーカーの幅や高さを超えて音場が広がる。映画などは圧巻だ。OFFだとスピーカーを配置している範囲内で音が鳴るだけとなる。この「DTS Premium Suite」は、「E713」のセールスポイントと言えよう。逆に言えば、家庭用のオールインワンPCはこの水準の画質や音質を維持しないと、家電の専用機と比較してプラスαの魅力が見出せない。
DTS Premium Suiteの説明画面 | DTS-HD Master Audioの説明画面 | DTS Connectの説明画面 |
DTS Surround Sensation UltraPCの説明画面 | DTS Symmetryの説明画面 | DTS Boostの説明画面 |
Windows エクスペリエンス インデックスは総合4.9。内訳はプロセッサ7.0、メモリ5.9、グラフィックス4.9、ゲーム用グラフィックス5.2、プライマリハードディスク5.9。CrystalMark 2004R3の結果も含め、チップセットIntel H55 Express、GPU Intel HD Graphicsの組合せとしては一般的な値だ。CPUが速いだけに、GPUの弱さが目立つ。
YouTubeで1080pの動画はスムーズに再生された。またこの時、CPU使用率は20%前後。このマシンの用途を考えた場合、十分なパフォーマンスだろう。Core i5-650なので、動画を編集し、再生とすると言った使い方にも対応できる。重い3Dゲームでもしない限り不満になることは無いと思われる。
Windows エクスペリエンス インデックス。総合4.9。プロセッサ7.0、メモリ5.9、グラフィックス4.9、ゲーム用グラフィックス5.2、プライマリハードディスク5.9 | CrystalMark。チップセットIntel H55 Express、GPU Intel HD Graphicsの組合せとしては一般的な値 | 1080p再生時のCPU使用率。スムーズに再生され、CPU使用率は約20% |
以上のように、E713A9は音にこだわり、映像も綺麗、HDMI入力を備えているので他のAV機器も接続できる。そしてiPodドックも搭載。まさに家庭で使う「プレミアムPC」と言うスペックに仕上がっている。iPadの記事で「家庭ではもうPCは不要」と書いたが、このクラスならコンテンツを大画面で綺麗に、そしてクオリティの高い音で更に魅力的に再生できる。据え置き用PCとして1台欲しいところか。大迫力でいろいろ楽しめる逸品だ。