西川和久の不定期コラム

ベアボーンだと約3万円の激安Ryzen 5 5600H搭載ミニPC!「MINISFORUM UM560XT」

UM560XT

 MINISFORUMは現在、6月中旬出荷を目処にRyzen 5 5600H搭載ミニPC、「UM560XT」の予約受付中だ。一足早く試用する機会に恵まれたのでレポートをお届けしたい。

安価ながら必要十分な構成

 これまでも同社の同じ筐体を使用したミニPC、例えば、「UM773 Lite」@Ryzen 7 7735HS、「UM690」@Ryzen 9 6900HXをレポートしたが、今回ご紹介する「UM560XT」は、構成的に最下位モデル的な存在となる。とはいえ、プロセッサがRyzen 5 5600Hなので通常用途なら十分なパフォーマンスだ。

 ラインナップ的にはベアボーン(OSなし)、16GB/512GB、32GB/512GB、32GB/1TB。価格は順に3万1,980円、4万6,380円、5万1,980円、5万7,580円。約3~6万円という非常に購入しやすい価格帯に収まっている。手元に届いたのは2番目の16GB/512GBモデル。主な仕様は以下の通り。

MINISFORUM「UM560XT」の仕様
プロセッサRyzen 5 5600H(6コア/12スレッド/クロック3.3GHz~最大4.2GHz/キャッシュL2 3MB/L3 16MB/TDP 45W)
メモリ16GB(DDR4-3200 8GB×2)/SO-DIMM×2/最大32GB
ストレージM.2 2280 PCIe4.0 SSD 512GB/2.5インチSATA HDD/SSD(空き)
OSWindows 11 Pro(21H2)
グラフィックスRadeon Graphics(7コア)/HDMI×2(4K@60Hz)、Type-C(4K@60Hz)×1
ネットワーク2.5GbE×1、Wi-Fi 6E、Bluetooth
インターフェイスUSB 3.1×2、USB 2.0×2、USB 3.0 Type-C(DP Alt対応)、USB 3.0 Type-C(データのみ、前面)、音声入出力
サイズ127×128×47mm(幅×奥行き×高さ/ACアダプタ含まず)
価格4万6,380円(ベアボーン3万1,980円)

 プロセッサはZen 3アーキテクチャのRyzen 5 5600H。6コア/12スレッド、クロックはクロック3.3GHzから最大4.2GHz、キャッシュL2 3MB/L3 16MB、TDP 45W。約1年前にBeelink「SER5 5600H」をレポートしているが、それと同じプロセッサとなる。記事を見直したところ、ベンチマークテストの結果もよく似ている(本機の方が若干速い)。

 メモリはDDR4-3200 8GB×2の計16GB。最大32GBまで対応する。ストレージはM.2 2280 PCIe4.0 SSD 512GB。またカバーの裏に2.5インチSATA HDD/SSDを1基マウント可能。OSはWindows 11 Pro。21H2だったので、その範囲内でWindows Updateを適応し評価している。

 グラフィックスはプロセッサ内蔵Radeon Graphics(7コア)。外部出力用にHDMI×2(4K@60Hz)とType-C(4K@60Hz)×1を備えている。もちろん4K3画面同時出力可能だ。

 ネットワークは、2.5GbE×1、Wi-Fi 6E、Bluetooth。そのほかのインターフェイスはUSB 3.0 Type-C(DP Alt対応)、USB 3.0 Type-C(データのみ、前面)、USB 3.1×2、USB 2.0×2、音声入出力このクラスでも2.5GbE対応はありがたい。

 サイズは127×128×47mm(幅×奥行き×高さ)、重量(ACアダプタ含まず)は実測で651g。価格は先に書いた通り16GB/512GBで4万6,380円。Windows 11 Pro込みでこの値段。激安以外の何ものでもない。

 最近Intel N100(Eコアのみで第7世代Core i相当と言われている)搭載の安いミニPCも出てきているが、パフォーマンスを重視するなら本機となるだろう。

前面。USB 3.0 Type-C(データ+DP Altモード)、USB 3.0 Type-C(データのみ)、3.5mmジャック、電源ボタン
背面は電源入力、USB 3.1×2、USB 2.0×2、2.5GbE、HDMI×2
筐体は基本プラスチックの黒
裏面とiPhone 13 Pro。かなりコンパクトなのが分かる
内部とパネル。裏パネルの丸いゴム足2つ、三角形ゴム足2つ外すとネジが現れ、それを外すと内部にアクセス可能となる。カバーの裏に2.5インチSATA HDD/SSDベイ(7mm以内)
付属品はスタンド、ACアダプタ(サイズ約115×50×33mm、重量235g、出力19V/3.42A)、専用SATAケーブル、VESAマウンタ、ネジ類、 HDMIケーブル、電源ケーブル
BIOS / Main。起動時[Del]キーで表示
BIOS / Advanced
重量は実測で651g
いつものキーボード付きモバイルモニターへ接続。USB Type-Cケーブル1本ではHIDが作動せず、HDMIとHID用のケーブル2本が必要だった

 筐体は冒頭でも触れたが、これまで何度かご紹介した縦置き用のスタンドが付属するタイプだ(もちろん横置きもできる)。iPhone 13 Proとの比較からも分かるようにコンパクト。VESAマウンタも付属するのでモニターの裏にも設置可能だ。重量は実測で651g。ACアダプタを加えても1kgを切る。

 前面にUSB 3.0 Type-C(データ+DP Altモード)、USB 3.0 Type-C(データのみ)、3.5mmジャック、電源ボタン。背面に電源入力、2.5GbE、USB 3.1×2、USB 2.0×2、HDMI×2を配置。

 付属品はスタンド、ACアダプタ(サイズ約115×50×33mm、重量235g、出力19V/3.42A)、専用SATAケーブル、VESAマウンタ、ネジ類、 HDMIケーブル、電源ケーブル。

 前面にあるUSB 3.0 Type-C(データ+DP Altモード対応)を使っていつものキーボード付きモバイルモニターに接続したところ、ディスプレイに表示は出るものの、HIDが作動せず、結局、HDMIケーブルとUSBケーブルの2本が必要となった。USB Type-Cハブなどを接続すると動くので原因は不明だ。

 内部へのアクセスは、裏の丸いゴム足2つと、三角のゴム足2つを剥がせば、ネジが現れるので、それを外すと、簡単にパネルを開けることができる。ただこのゴム足を外すのが割と厄介で、失敗すると吸着テープが本体側に残ってしまう。これではネジを外せないので、手で剥がすと丸まってしまい、ゴム足側へ戻すのが困難になる。おそらくこの関係もあり、付属品にゴム足の予備があるのだろう。

 パネルの裏に厚さ7mm以内の2.5インチSATA HDD/SSDを装着可能。本体との接続は付属の専用SATAケーブルを使用する。内部の構造は写真を掲載したので参考にしてほしい。BIOSは起動時[DEL]キーを押せば表示する一般的なものだ。

内部(アップ)。上にSO-DIMM×2、下にヒートシンク付きのM.2 2280 SSD、その右にある白いコネクタがSATA用

 ノイズは試用した範囲では特に気にならず。発熱はベンチマークテストなど負荷をかけると、縦置き時に上になるスリットから若干暖かいエアーは出るものの、十分許容範囲内に収まっている。なお、同社のサイトによると、扉の写真の置き方で、下と正面から吸気、上とリアから排気となる。

 このように、同社としてはもう何モデルも作っている筐体なので手慣れた感じで、非常によくできており、安心して使用できる。

PCMark 10ではCore i7-12650Hといい勝負!

 初期起動時、壁紙の含めWindows 11 Pro標準のまま。この方が扱いやすいと言う人も多いだろう。Zen 3、16GB、そしてSSDなので、一般的な用途であれば、ストレスもなくサクサク動く。

 ストレージはM.2 2280 PCIe4.0 SSD 512GBの「ESO512GYLCT-EP3-2L」。このサイトによると、シーケンシャルリード2,271MB/s、シーケンシャルライト1,726MB/s。CrystalDiskMarkのスコアもほぼそのまま出ている。ただシーケンシャルリードは4,000MB/sを超えるものも結構あるので、速い方ではない。C:ドライブのみの1パーティションで約474GBが割り当てられ空き445GB。

 2.5GbEはIntel Ethernet Controller I225-V、Wi-FiはRZ608 Wi-Fi 6E、そしてBluetoothもRZ608が使われている。

初期起動時のデスクトップ。壁紙も含めWindows 11 Pro標準
デバイスマネージャ/主要なデバイス。ストレージはM.2 2280 PCIe4.0 SSD 512GBの「ESO512GYLCT-EP3-2L」。2.5GbEはIntel Ethernet Controller I225-V、Wi-FiはRZ608 Wi-Fi 6E、BluetoothもRZ608
ストレージのパーティション。C:ドライブのみの1パーティションで約474GBが割り当てられている

 ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、Cinebench R23、CrystalDiskMarkを使用した。数字の横に*印があるのが、前回のCore i7-12650Hを搭載したMINISFORUM「NAB6」と比較して勝っている項目だ。NAB6がキャンペーン価格で5万5,580円(16GB/512GB)なので、本機は価格の割に健闘しているのが分かる。

 ただし、純粋なプロセッサパフォーマンスを測るCinebench R23ではCPU 12,472/CPU(Single Core) 1,808と比較してそれなりに劣っている。またコストダウンのためだろうが、SSDの性能は半分ほどになる(対「KINGSTON OM8PGP4512Q-A0」比)。この辺りが約1万円の差額ということになるだろうか。

ベンチマーク結果
PCMark 10 v2.1.2600
PCMark 10 Score6,242*
Essentials10,516
App Start-up Score15,063
Video Conferencing Score8,582*
Web Browsing Score8,998
Productivity9,671*
Spreadsheets Score12,405*
Writing Score7,541
Digital Content Creation6,489*
Photo Editing Score9,477*
Rendering and Visualization Score5,962*
Video Editing Score4,836
PCMark 8 v2.8.704
Home Accelarated 3.04,883
Creative Accelarated 3.04,625
Work Accelarated 2.05,526*
Storage5,075
3DMark v2.26.8098
Time Spy1,456*
Fire Strike Ultra843
Fire Strike Extreme1,659
Fire Strike3,699
Sky Diver13,681*
Cloud Gate24,262*
Ice Storm Extreme124,737*
Ice Storm166,864*
Cinebench R23
CPU9,351(4位)
CPU(Single Core)1,358(3位)
CrystalDiskMark 6.0.0
Q32T1 シーケンシャルリード2471.737 MB/s
Q32T1 シーケンシャルライト1970.718 MB/s
4K Q8T8 ランダムリード853.215 MB/s
4K Q8T8 ランダムライト1696.671 MB/s
4K Q32T1 ランダムリード533.782 MB/s
4K Q32T1 ランダムライト398.702 MB/s
4K Q1T1 ランダムリード52.598 MB/s
4K Q1T1 ランダムライト169.473 MB/s

 以上のようにMINISFORUM「UM560XT」は、Ryzen 5 5600Hを搭載したミニPCだ。用途や予算に応じて、ベアボーン、16GB/512GB、32GB/512GB、32GB/1TBを選べるのもポイントが高い上、ベアボーンなら約3万円だ。気になる速度もCore i7-12650Hと比較してもいい勝負でコストパフォーマンスは抜群!

 特に欠点らしい欠点もなく、とにかく安くて、速くて、コンパクトなPCを探しているユーザーに使ってほしい1台だ。